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奈良交通の大型電気バスを活用した新たな観光ルートの実証運行[前編]

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奈良交通は奈良県を中心に路線バス網を展開しており、一部の路線は京都府、大阪府、和歌山県にもおよんでいます。
また、路線バスのほか、観光バスや奈良県と各都市を結ぶ高速バスなども運行しています。
同社では2021年12月に奈良県内初となる大型電気バスを使った新たな観光ルートの実証運行を行いました。
今回はその実証運行をテーマに概要を前編で紹介し、後編で車両を紹介します。

観光庁の短期集中かつ強力な支援の一環

奈良交通は、観光庁の「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業(自治体・DMO型)」に採択された世界遺産をめぐる新たな観光ルートの実証運行を奈良県と連携して行いました。
「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業(自治体・DMO型)」とは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、危機的状況にある観光拠点が面的に再生できるような取り組みを短期集中で強力に支援することで、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を乗り越え、地域全体の魅力および収益力の向上を図ることを目的とする観光庁の事業です。
DMO(Destination Management/Marketing Organization)は、地域の多様な関係者を巻き込みつつ、科学的アプローチを取り入れた観光地域づくりを行う舵(かじ)取り役となる法人のことを指します。

また、2050 年カーボンニュートラルの実現に向け、地球環境に優しいバスの実現を目指し、奈良県初となる大型電気バスの試験運行を兼ねて行われました。
この実証運行については、奈良県が作成した「観光拠点再生計画」にもとづき、観光庁が奈良交通へ同事業の交付決定を行って実施したもので、2021年4月頃から検討してきたとのことです。

実証運行の目的は?

今回の実証実験のねらいは、大きく分けて2つあります。
1つは奈良公園・平城宮跡(へいじょうきゅうせき)周辺地区において、現在バスで移動できない区間を実験的に運行し、需要に関するデータを収集し、来訪者の奈良県滞在拡大に向け、今後の路線新設や再編に活かすこと。
もう1つは、奈良県は3つの世界遺産地域を有し、環境負荷が低い電気バスの導入効果は高いと考えられているため、今回の実証運行で快適性、経済性、操作性などを検証し、今後の導入計画策定の基礎とすることです。

無料で12月中に2回行われた実証運行

実証運行は、2021年12月4日(土)から12月10日(金)までの間、平城宮跡の朱雀門(すざくもん)ひろばを起終点として、唐招提寺(とうしょうだいじ)駐車場と薬師寺(やくしじ)駐車場を周遊でめぐる「平城宮跡~西ノ京ルート」と、12月19日(日)から12月25日(土)までの間、奈良公園の大仏殿前駐車場を起終点にして若草山(わかくさやま)山頂を周遊する「奈良公園~若草山頂ルート」の2ルートで行われました。
いずれのルートも運賃無料で乗車することができ、バスガイドが添乗して観光案内を行いました。
また、大型電気バスと従来のディーゼルエンジン搭載の路線バスが交互に運行するスタイルが取られました。

実証運行期間中、「平城宮跡~西ノ京ルート」では1日あたり16便が30分おきに運行され、大型電気バスはそのうち8便に充当されました。
一方、「奈良公園~若草山頂ルート」では1日あたり12便が40分おきに運行され、大型電気バスはそのうち6便に充当されました。
なお、「奈良公園~若草山頂ルート」の11・12便目は、若草山からの夜景観賞に対応し、若草山頂で約30分間の見学時間を含んだダイヤでした。
また、これら2便は、降車のみの扱いで近鉄奈良駅とJR奈良駅東口へも運行されました。

実証運行を経ての今後の展望は?

実は今回の実証運行で走った平城宮跡~西ノ京や奈良公園~若草山頂のルートは、過去に運行した実績もありましたが、当時と時期が異なり、現在ではそれらのルートのポイントの近くに奈良県の「ぐるっとバス」が運行されていたり、平城宮跡の整備が行われていたりするなど、条件が異なることから、奈良交通では今回の実証運行の結果を注視しています。
また、現段階では今回の実証運行に関連した具体的な路線再編の予定はないとのことでしたが、得られたデータをもとに、より利便性の高い二次交通網の構築について関係各所と相談を続けていきたいとのことでした。

電気バス導入については、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、環境に優しいバスの導入はバス事業者として取り組まなければならない大きな課題であると認識しているとのことです。
今回の実証運行で、目的にあった電気バスの快適性、経済性、操作性などを検証する一方、電気バス以外にも燃料電池バスや合成燃料の使用なども、広くバス業界では注目されていることから、動向を見極めながら検討していきたいようです。
電気バスについては、本格的導入となると車両や設備の導入費用が高額になるため、今後、行政をはじめ自治体の支援なども受けながら導入が進められるよう、関係各所との相談も必要であると考えているとのことでした。

次回の後編では、実証運行に使用された大型電気バスをクローズアップします。

YouTubeの小誌公式チャンネル「バスグラフィックTV」でも、12月下旬に奈良交通の実証運行の概要と大型電気バスについて、2本の動画番組で紹介予定です。ぜひ、ご覧下さい!
https://www.youtube.com/channel/UC-74wcE1sa1Subi_jbK0csg/featured

※協力:奈良交通株式会社
※写真・文:バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※本項に掲載の写真は報道公開および、記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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