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こんなバス知ってる? 十勝バスの「マルシェバス」[後編]

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北海道帯広市を拠点として路線バス網を展開し、都市間高速バスや帯広空港への空港連絡バス、貸切バスを運行している十勝バス。
同社では2021年11月に、遊休状態で程度が良い1992年式日野ブルーリボンU-HU2MMA大型路線バスを改造し、車内後方にマルシェ(市場)機能を追加した「マルシェバス」を完成させました。
「マルシェバス」は、2021年12月5日から2022年2月27日までの間、十勝バスの主要路線の一つが展開する大空エリアで実証実験を行い、高評価を得ました。後編の今回は「マルシェバス」の気になる車内をクローズアップします。 

車内前方は路線バス運行のための客席

「マルシェバス」は車内前方が客席、車内後方がマルシェとなっています。
車内前方の客席ですが、前向き座席と横向き座席の組み合わせで構成されています。
いずれも赤いモケットのハイバックシートとなっており印象的です。

横向き座席はマルシェバス化にともなって廃車になった他の車両のものをうまく活用して取り付けています。
客席は全部で10席となります。

車内中扉付近から前方への眺め。こうして客席部分だけを見てみると、一般的な路線バスとはほとんど変わりがなく、「マルシェバス」のキモはやはり車内後方のマルシェ部分にあることが分かります。
なお、中扉にはマルシェ展開時に使用するカーテンが備え付けられています。

車内後方は改造で設けたマルシェに

一方、改造が行われて路線バス時代と大きく変わっているのが車内後方のマルシェ部分です。
もとあった座席を全て撤去して、木製の商品棚(しょうひんだな)をすえ付けているほか、JCM製の冷凍ショーケースも置いてあり、多種多様な商品を並べることができます。

最後部座席があった場所も商品を陳列できる大きな平台を2つ設けています。
撮影時には商品を陳列していなかったため、営業時にどのような商品を置くのか、想像すると楽しくなってきますが、内装の設計ポイントとしては、販売商品にかかわらず汎用性(はんようせい)のある什器(じゅうき)にしているとのことです。

車内マルシェ部分の後方から前方への眺め。
こうして見ると店舗そのものですが、1960~80年代に全国各地で見られた移動スーパーや移動販売車の車内見付けと比較し、木部が多いことから温かみが感じられるものとなっています。

マルシェ部分のポイントは?

マルシェ部分をさらにクローズアップしましょう。
これは運転席側の商品棚の様子ですが、木製の台座で後輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)やステップ、暖房装置をうまくかわしたうえで、3段の商品棚を設けていることが分かります。
実証実験時には、食料品と生活雑貨などを分けて陳列し、冷房ダクト部分の額面広告枠部分にはメーカーのポップも貼り出していたとのことです。
非常扉は存置されたままですが、路線バスからマルシェバスへの改造によって乗車定員が29人となったことで、マイクロバスと同様、法令的に非常扉は不要となったため、このように商品棚を設けることができました。

扉側は商品棚の隣にある木製カバーの中に、冷凍ショーケース用のポータブル電源を設けています。
側窓にはポップの掲示や商品陳列などに活用できる帯材(おびざい)を取り付けています。
このようなセンスの良いマルシェ部分の設計・デザインを行ったのは良品計画の関連会社とのことです。

マルシェ部分と客席の間には木製の仕切りが設けられています。
通路部分を仕切る扉は特になく、撮影時は通路下部に仕切り用のボードがはめ込まれていました。
仕切り手前の客席側にも運転席側には商品棚を設けており、中扉からマルシェに入店してすぐに商品が利用者の目に飛び込んでくる仕掛けになっています。
整理券発行器は仕切りをうまく切り欠いて設置しており、その近くにはマルシェ利用者用の自動手指(しゅし)消毒機も備え付けています。

実証実験時はマルシェ部分だけでなく、車内前方の客席部分もうまく活用して商品が陳列され販売が行われました。
今後も店舗販売を行う際には客席部分もマルシェとすることで、限られたスペースでも多彩な商品ラインナップを展開できそうです。

実証実験で得た手ごたえを今後につなげる

最後に運転席の様子を見てみましょう。
「マルシェバス」だからと言って、運転席は特に路線バス時代とは変わったわけではなく、路線バスとして運行をするための装備を備えたままで変わりはありません。
変速機は5速MT(マニュアルトランスミッション)となります。

この車両は「マルシェバス」としての運行以外はできないため、現在、十勝バスの本社営業所の車庫内に格納した状態となっており、視察などがあった際に公開しています。
十勝バスとしては今後、実証地域以外の地域での運行も追加し、販売員の人件費などのオペレーションを構築することにより採算性を向上し、営業運行していきたいそうです。
これまで行ってきた医療と交通の共創モデル事業を通したうえで、今回の実証実験によって、利用者へサービスを近付けることもバス事業者の役割だと気付いたことや、運転者不足から物流と人流が一緒になる時代が近い将来、必ず到来すると確信したことで、さらなるイノベーションを目指しています。
イベント的に移動販売として販売地に出向くなどして、積極的に商品のニーズや効果を改めて検証しながらも、新たな協業相手と組んだうえで、2023年度にはいよいよ事業化に踏み切りたいと考えているとのことです。

※協力 : 十勝バス株式会社
※写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※本項で公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望を事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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