三重交通で初開催の「バス整備士おしごと体験会」とは?

バス運転士同様、バスの安全運行になくてはならないのがバス整備士です。
バス整備士についても近年は人材の確保が大きな課題となっています。
そこで、三重県全域に路線網を展開する三重交通では、「バス整備士おしごと体験会」を初めて開催しました。
バス整備士体験イベントはバス運転士体験イベントに比べて珍しいと言えます。
今回は特別編として、三重交通の「バス整備士おしごと体験会」をレポートします!
「バス整備士おしごと体験会」とは?

2026年2月28日、三重交通は三重県津市あつの台にある津整備工場にて「バス整備士おしごと体験会」を開催しました。
三重交通としては初めての開催となった本イベントは、午前と午後の2部構成で実施され、高校生や転職希望者など、10~40代の男女7人が参加しました。

「バス整備士おしごと体験会」は、バス整備士を志している人、興味のある人を対象としており、整備士免許は不要、参加費も無料です。
内容は、整備業務について実際に「見て・触れて・聞く」ことで、整備作業の体験のほか、施設見学や現役整備士との交流会が実施されました。
また、今回は女性整備士も参加し、幅広く整備業務に関心のある人たちに訴求(そきゅう)。
整備業務をより身近に感じてもらおうと試みていることもポイントです。
なお、本イベントは中部運輸局三重運輸支局、公益社団法人三重県バス協会が共催しており、少子高齢化や人口減少の影響による人手不足のなか、持続可能な地域公共交通の維持・確保に向けた人材確保につなげる取り組みとして期待されています。
三重交通の整備工場と整備士業務は?

「バス整備士おしごと体験会」が開催された三重交通の津整備工場は、中勢(ちゅうせい)営業所と同じ敷地内にあります。
同社では津整備工場のほかに名古屋、桑名、いなべ、四日市、名張、松阪、伊勢、志摩の各市にも整備工場を有しています。

三重交通の整備事業は三重県内最大級で、最新の大型車整備施設を備えています。
整備事業は大きく分けて以下の3つの部門があります。
1. 整備点検部門
2. 車検部門
3. 車体部門
整備点検部門は、三重交通グループのバスの修理点検を行います。
車検部門は、車検整備を行います。
車体部門は、鈑金(ばんきん)・塗装をはじめ、車体の再生(リニューアル)やカスタマイズを行います。
なお、車検部門と車体部門は、三重交通グループのバスはもちろんのこと、県内外の事業者から請け負ったバス・トラックについても対応しています。

三重交通の整備工場では、年間約1,500台の車検、オーバーホール、リニューアルを行っています。
また、事業用のバスは3カ月ごとの法定点検が義務付けられていますが、三重交通ではそれを独自に2カ月ごとに点検をするなど、整備工場の高いノウハウと技術力により、日々の安全運行を支えています。
「バス整備士おしごと体験会」に密着

それでは、「バス整備士おしごと体験会」がどのようなイベントであったのか、午前の部を密着取材したので、ここで見ていくことにしましょう。
津整備工場に集合した参加者たちは、事務棟の会議室で平田伸人(ひらた・のぶひと)整備工場長からイベントの概要と予定の説明を受けます。
その後、髙田和昭(たかだ・かずあき)取締役から「整備士の業務に少しでも興味を持って、今後のチャレンジにつなげていただきたい」というあいさつがありました。

会議室のテーブルにはオレンジ色と黄色のヘルメットが並べられました。
ヘルメットの色の違いに意味はありませんが、安全確保のため、整備の現場へ向かう全員がこれをかぶっていきます。

説明を聞いた後、早速実際の整備の現場へ向かいます。
整備中の三重交通の大型路線バスと中型路線バスが見えてきました。
今回は大型路線バスを教材にして、整備の様子を見学したり、整備体験を行ったりしますが、まずは施設をひととおり見て回ります。

整備工場の奥へと進みます。
ここには「ブレーキ再生室」と「電装室」があります。
いずれも補修部品が整然と並べられて保管しており、ブレーキ再生室にはブレーキライニングやブレーキバルブ、リレーバルブ、クラッチブースター、エアーマスター、ホイールシリンダーなど、電装室にはスターターやオルタネーターなどを保管してあります。

ブレーキ再生室と電装室の前にはエンジンが並べられていました。
これは小型ノンステップ路線バス日野ポンチョ用のJ05E型エンジンですが、小型バスと言えども乗用車のものと比較すると一回りも二回りも大きく、参加者もバスのエンジンの大きさに驚いていました。

続いて隣の整備スペースにピットインしている車両も見学。
これは、狭隘(きょうあい)路線やコミュニティバスで運行することの多い小型ノンステップ路線バス日野ポンチョで、エンジンは車両最後部に搭載しています。
車両後方のリッド(点検ぶた)を全て開けているほか、リアバンパーや灯具類のあるパネルなどが取り外され、徹底的なエンジンの整備を受けています。
参加者たちは普段見ることのない整備中のバスの姿を興味深そうに見学していました。

これまで見学してきた整備棟の向かいにある別棟には塗装ブースがあります。
鈑金や補修を終えた車両を全塗装できる本格的な塗装ブースで、ここで美しい姿によみがえります。
塗装ブースの説明を受けた後、参加者は再び整備棟に戻りました。

そして、参加者たちはいよいよ整備の実演や体験を行う大型ノンステップ路線バスの下にやって来ました。
この車両はモーターとディーゼルエンジンで走行するハイブリッドバスの、いすゞエルガ ハイブリッドの初代モデルです。
ハイブリッドバスはエンジンに加えモーターなどの電装品も備えているため、整備項目も多岐にわたりますが、車体をリフトで持ち上げ、床下からアクセスして入念に整備していきます。
大きなバスを軽々と持ち上げているリフトに参加者たちは驚きながらも、整備時以外では絶対に見ることのできないバスの床下に大きな関心を寄せていました。
バス整備体験の後、現役整備士との座談会も…

大型ハイブリッドノンステップ路線バスを使い、整備士が整備の実演を行ったり、参加者が整備体験を行ったりしました。
まずは、整備士が整備の一例として、右後輪を外し、車軸とタイヤホイールを接続する中心の部品であるハブと、ブレーキの主要部品であるブレーキドラムを取り外す実演を行いました。

続いて参加者が整備体験の一環で、右前輪のホイールナットを取り付けました。
この車種はISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)の10穴(けつ)となっていることが特徴です。
ホイールナットを取り付けたら、対角線上の位置関係にあるナットを締め付けていきます。

ホイールナット締め付けの最後にはトルクレンチを使用します。
トルクレンチは、正確に規定の力(トルク)でホイールナットを締め付けるために必須の工具で、てこのような構造をしています。
設定した締め付けの値に達すると「カチッ」という音がしますが、それまでトルクレンチのハンドル部分を何度も上げ下げしてホイールナットを締め付けていきます。
参加者は大型車用トルクレンチを扱うのは初めてのため、悪戦苦闘していました。

整備体験と合わせ、参加者は実際にバスの運転席への着席体験も行いました。
大型路線バスの運転席に座るのは初めてという参加者が多く、ステアリングホイール(ハンドル)の大きさや角度、ドライビングポジションなどに新鮮味を感じているようでした。

整備工場の見学と体験を終えた参加者は、事務棟内にある会議室に戻り、最後に男女の現役整備士との座談会を行いました。
四日市整備工場の女性整備士と津整備工場の男性整備士が、整備士になったきっかけ、職場の雰囲気、今後の目標、これから整備士を目指す人たちへのアドバイスなどをテーマに話を進めました。

2人の現役整備士はともに整備士の仕事の奥深さと面白さを語り、少しでも「やってみたい!」と思ったら、ぜひ、整備士の門戸をたたいてほしいと参加者へ伝えました。
今回三重県内から参加した30代の女性は、クルマが好きで、もともと整備士をやってみたいと思っていたことが参加の理由とのことでした。
また、三重交通の整備士採用は、入社時に特に整備士免許を持っていなくても、手厚いサポート体制により整備士免許取得を目指すことができ、ステップアップしていけそうなところが魅力的だったと語り、今回のイベントについては「非常に楽しくて、物足りないぐらい」と手応(ごた)えを感じているようでした。
本イベントから整備士業務に熱意を持つ整備士が一人でも多く誕生することを期待してやみません。
※ 取材協力 : 三重交通株式会社
※ 写真 ・ 文 : バスギア ターミナル
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