大団円(だいだんえん)! UDトラックスの従来型自社製社(しゃ)バス[PART I]

新生活を始めた方はもう慣れたでしょうか。
春は新たな出会いもありますが、慣れ親しんできたものとの別れもある季節です。
「バスギア ターミナル」では2025年暮れ、UDトラックスが本社・上尾(あげお)工場と最寄り駅との間で従業員を送迎するバスに、新型のBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)フルフラット大型路線バス・いすゞエルガEVを導入したことを速報しました。
しかし、その影でそれまで約20年もの間、従業員送迎で活躍してきた従来型の自社製バス6台がこの春に終幕を迎えました。
そこで前回の大阪シティバスに続き、今回は「日産ディーゼル/西工(にしこう)特集」の第2弾として、UDトラックスから引退したそれらのバスを、『バスグラフィック』イメージキャラクター布施 貴美子(ふせ・きみこ)さんのナビゲートで、PART I からPART III に分けて徹底的に紹介します。
そもそも“UD”とは?

UDトラックスは、埼玉県上尾市に本社を置く商用車メーカーで、1935年に創業しました。
戦中・戦後に3度の社名変更を経て、1960年に日産ディーゼル工業となり、2010年に現社名に変更するまでの長い間この社名で存続しました。
1955年には現社名のルーツとなる「UDエンジン」を発表。
「UDエンジン」は、軽量かつコンパクトでハイパワーが期待できる構造の2(ツー)サイクルディーゼルエンジンの中でも、吸排気をエンジンシリンダー下方から上方へ一方向に流す「単流掃気方式」を採用したものです。
エンジンシリンダー内に排気の残留をなくし、低騒音とさらなる小型軽量化の両立を図ることができたため、戦後長らくの間、日産ディーゼルが製造・販売するバスやトラックに搭載されました。
この単流掃気方式のディーゼルエンジンを英訳すると、“Uniflow scavenging Diesel engine”となり、それを略したのが“UD”です。
上掲写真は1970年代後半に東京都交通局(都営バス)の練馬自動車営業所で撮影されたもので、2サイクルのUD4型エンジンを搭載した日産ディーゼル4R94大型路線バスです。
富士重工業(現・SUBARU)製ボディを架装した1965年度導入車で、局番(東京都交通局の固有番号)はF-K507、登録ナンバーは「練馬22か・399」です。

UDエンジン登場当時は、日産ディーゼルの社内設計図面に、その他のエンジンと区別するための“UD”の判を押していたとのことで、その後、UDエンジンを搭載したトラックは高いエンジン性能のアピールするため、車体に“UD”を記したマークを付けるようになりました。
バスについてもUDマークを付けた車両がありました。
そのようなことから、UDマークは国際商標となり、現在の社名へとつながっていきました。
なお、2サイクルディーゼルエンジンであるUDエンジンは1974年まで製造が続いたものの、公害対策などを理由に、それ以降は4サイクルディーゼルエンジンへと移行しました。
現在、社名であるUDトラックスの“UD”は、「究極の信頼性」を英訳した”Ultimate Dependability”という新しい意味を当てはめています。
上掲写真は1980年代前半に撮影された函館バスの日産ディーゼルU20N、1977年式で、社番(函館バスの固有番号)は4083、登録ナンバーは「函22あ・307」です。
こちらも富士重工製ボディ架装車ですが、赤地に白抜き文字で“UD”を記したエンブレムをフロントウィンドウ下に装着し、前扉横にも丸い缶バッジのような赤地に白抜き文字の“UD”マークを付けていることが分かります。
名門メーカーでのバス製造・販売の終焉(しゅうえん)

日本のバス、特に大型と中型バスは、エンジン・シャーシと車体をそれぞれ異なるメーカーが製造し、組み合わせて作っていることは、これまでの「バスギア ターミナル」各記事をご覧いただいてきた方々であれば周知の事実でしょう。
日産ディーゼルはエンジン・シャーシのメーカーで、2003年まで、ボディはおもに富士重工が製造したものを架装していましたが、そのほかにもいくつかのメーカーが製造したボディの架装事例がありました。
上掲写真は日産ディーゼル製エンジン・シャーシに富士重工製ボディを架装した大型路線バスの一例で、ジェイアールバス関東の日産ディーゼルKC-UA460LSN、1999年式です。
車両称号(ジェイアールバス関東の固有番号)はL538-99206、登録ナンバーは「松本200か・・25」となりますが、現在ではすでに引退しています。

特に、西日本のバス事業者向けには、福岡県を中心に鉄道・バスを運行する西日本鉄道、通称「西鉄(にしてつ)」の子会社である西日本車体工業が製造したボディを架装する事例が多く見られました。
西日本車体工業は、通称「西工」と呼ばれますが、2003年に富士重工がバスボディ製造・架装事業から撤退すると、日産ディーゼルのバスには西工製ボディを架装するようになりました。
上掲写真は日産ディーゼル製エンジン・シャーシに西工製ボディを架装した中型ノンステップ路線バスの一例で、二豊(にほう)交通の日産ディーゼル・スペースランナーP-RB80G、1988年式です。
登録ナンバーは「大分22か1490」となります。
背景に西鉄の古めかしいモノコックボディの大型路線バスの姿もちらりと写っている1980年代末の撮影ですが、フロントバンパーにビルトインされた灯具類や1枚モノのフロントウィンドウを持つデザインのこの車両は、当時としては相当斬新だったと想像できます。
二豊交通は大分県の中津地区に路線網を展開した西鉄の分社子会社でしたが、現在は消滅しています。
日産ディーゼルは、このほかにも1990年代半ばから2000年代にかけ、路線バスのバリアフリー対応が急務だった頃に、大型フルフラットノンステップ車や中型ノンステップ車を初めて市場に投入しています。
また、大型車よりも安価に導入できる路線バスとして、中型バスと同じ約2.4mの全幅にもかかわらず、大型バス並みの約10.5mの全長を持つ中型ロング車や、コミュニティバスなどでの運行を考慮し、「ミニバス」などと呼ばれる約2.3mの全幅で約7m全長を持つ小型バスも他社に先駆けて世に送り出すなど、先進性が際立ちました。

ただ、2010年2月1日に日産ディーゼルがUDトラックスに社名変更した後のバス製造・販売の歴史は長くありませんでした。
ボディの製造・架装を行っていた西工が同年8月末日にバスボディ製造・架装事業を終え、会社組織を解散しました。
それ以降、UDトラックスのバスは、三菱ふそうトラック・バスがOEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランド生産)で供給していたものの、ほどなくして両者のバス事業に関する合弁会社の設立協議・交渉の打ち切りが発表されました。
三菱ふそうトラック・バスからのバスのOEM供給も終了し、UDトラックスはバスの製造・販売を一時休止していましたが、翌年、バスの製造・販売事業からの撤退が報じられました。
これは人口減少や新車への買い替えスパンの長期化など、国内バス市場の縮小が大きな要因だと言われています。
長きにわたる日産ディーゼル時代を経て、UDトラックスへ社名変更した後も、同社は名門バスメーカーとして認識されてきましたが、2026年現在ではバスの製造・販売から撤退して久しく、同社がトラックだけではなく、かつてバスも製造・販売していたということを知る人は次第に減ってきているものと思われます。
上掲写真は三菱ふそうトラック・バスがUDトラックスへOEM供給した大型路線バスの一例で、西武バスの日産ディーゼル・スペースランナーA PKG-AP35UM、2010年式です。
社番はA0-440、登録ナンバーは「練馬200か2271」となりますが、現在では引退しています。
日産ディーゼル・スペースランナーAは三菱ふそうエアロスターとほぼ同型で、外観を一見しただけでは非常に区別が難しい車種です。
六車五様!? 個性豊かなUDトラックスの従来型自社製社バス

2026年現在ではバスの製造・販売から撤退し、トラック専業メーカーとなっているUDトラックスにあって、同社がかつてバスの製造・販売事業を行っていたことを思い出させるものが今春までありました。
それは、自社製の「社バス」です。
通勤など従業員の送迎で使うバスは、社員送迎バスを略して「社バス」と呼ぶことが多くあります。
UDトラックスでも本社・上尾工場とJR高崎線上尾駅を結ぶ社バスを以前から運行していますが、今春まで同社がかつて製造・販売した大型路線バス・自家用バスベースの社バスを6台所有していました。
UDトラックスの社バスは、基本的に1日の運行を5台で回し、朝・夕の通勤時間帯を中心に運行しますが、車検や整備を考慮して1台を予備車としています。
本社・上尾工場とJR上尾駅の間は往復約5.7kmで、1台あたりそれぞれの時間帯に4~5回運行するパターンで運行しているとのことです。

しかし、それら6台の自社製社バスは導入から20年が経過し、経年化による不具合や、バス事業撤退による補修部品の調達難といった課題が顕在化してきたことから、2025年12月から2026年1月にかけ、順次BEVフルフラット大型路線バス・いすゞエルガEVを用いた社バス6台に置き換えました。
2026年3月末日までに大型路線バス・自家用バスベースの従来型の自社製社バスは6台全てが引退し、UDトラックス本社・上尾工場から姿を消しました。
ただ、これら6台は、全て西工製ボディを架装した日産ディーゼル車であっても、全長をはじめ扉や側窓の仕様など1台1台が異なっており、非常に個性的でした。

上掲の表は6台の概要です。
6台中2台が同型・同仕様であったものの、残り4台は全て型式と仕様が異なっており、その理由をUDトラックスに尋ねたところ、単に導入時期の違いがあっただけで特に意図して型式と仕様にバリエーションを持たせたわけではないとのことでした。
今回の記事ではこれら大団円を迎えたUDトラックスの従来型自社製社バスを1台ずつクローズアップしていきます。
おそらく誌面を含めバス関連のメディアでは他に取り上げていないと思われるうえ、すでに全車が引退していることから、最初で最後の詳細紹介となります。
なお、同型である2005年式の日産ディーゼルKL-UA452MANの「大宮200は・245」と「大宮200は・246」については、「大宮200は・245」の方を取材しています。
早速、個性的な1台「大宮200は・283」の外観をチェック!

それでは、ここからUDトラックスの従来型自社製社バスを1台1台じっくりと紹介していきましょう。
トップバッターは、2007年式の日産ディーゼル・スペースランナーRAで、型式はADG-RA273MAN。
登録ナンバーは「大宮200は・283」です。
今回紹介する5台の中ではこの車両のみ一足早く運行を終えており、取材時には稼働できなかったため外観カット数が限られていますが、大まかな特徴を紹介します。
日産ディーゼル・スペースランナーRAは、日産ディーゼルが2005年から2010年までに製造・販売した大型路線バス・自家用バスです。
路線バス用にノンステップ車やワンステップ車を設定していることはもちろんのこと、自家用バス用としてツーステップ車も設定しており、この車両はツーステップ車です。
ユーザーのニーズに応じた仕様の車体をバリエーション豊かに製造・架装できたことが、ボディメーカー西工の特徴でした。

西工の路線バス・自家用バスの車体の中でも、1996年から最後まで製造・架装されたのが“96MC”(きゅうろくエムシー)と呼ばれているボディで、大型フロントバンパー内に灯具をビルトインしたデザインが特徴です。
フロントウィンドウ直上には前面行先表示器窓がありますが、表示器は装備しておらず、「UDトラックス株式会社」の社名を固定表示しています。
UDトラックスの従来型自社製社バスは、基本的に赤と白の明快な塗り分けのカラーリングデザインとなっていますが、同社によると、これは日産ディーゼル時代の2007年にVI(Visual Identity:視覚の統一)を再展開した際に採用したとのことです。
シンプルな中にも日産ディーゼルのイメージカラーの赤を象徴的に配し、これまでの歴史のもとに次世代への想いを表しています。
後年になり、前面にはUDトラックスのエンブレムを取り付けています。

前扉が折戸となっており、側窓は黒い窓枠で、通称「メトロ窓」と呼ばれている引き違い構造の窓を採用しています。
また、今回紹介するUDトラックスの従来型自社製社バス5台の中で唯一、側窓に濃い着色ガラスを採用していることが特徴です。
前扉直後にはUDトラックスのロゴ・マークを配しています。

中扉は引戸となっており、扉の窓廻りは側窓と合わせてダークグレーで処理されており、側窓との連続感を出しています。
日産ディーゼル・スペースランナーRAは、基本的に最後部の側窓が固定窓となりますが、この車両も固定窓となっています。
車体に標記されているキャッチコピー“Going the Extra Mile”は、「その一歩先へ」というUDトラックスの企業価値を示すブランドプロミスです。
個性的な「大宮200は・283」の車内の様子は?

では、個性的な1台である「大宮200は・283」の車内に入ってみることにします。
車内前方から後方への眺めで、2人掛けの前向き座席がずらりと並んでいることが分かります。
座席はビニール素材の枕カバーを取り付けたハイバックシートで、最後部座席を除き、運転席側に10列、扉側に8列設けています。

中扉の様子です。
ステップが2段でツーステップ車であることが分かります。
ステップ前後に仕切りがありますが、路線バスではないため、整理券発行器やIC(Integrated Circuit:集積回路)カード乗車券のカードリーダーは装備していません。

中扉以降の車内の様子です。
ツーステップ車であることから、中扉以降にノンステップ車やワンステップ車で見られるような通路の段差がなく、通路は前方から最後部座席手前までフラットに続いています。
車外からは側窓の濃い着色ガラスにより車内が黒っぽくなり、様子があまりよく分かりませんが、逆に車内から車外への眺望は良いことが分かります。

最後部座席もハイバックシートで、1席ずつ個別のシートバックとなっており、枕カバーを取り付けています。
また、全ての座席にシートベルトを装備しています。

車内後方から前方への眺めです。
シートバック裏側にはグリップを取り付けています。
つり革はないものの、通路上の天井に備え付けた手スリと、整然と並ぶ座席からは、社バスとして通勤に特化した用途であることが見て取れます。

車内の注目ポイントとして挙げられるのが運転席側側窓上の荷棚です。
現在、路線バスで荷棚を設けている車両はあまりありませんが、観光バスや高速バス、自家用バスではよく見られる装備で、自家用バスをベースとした社バスでもこのように設けている車両が散見されます。

車内中ほどから前方への眺めです。
運転席直後の仕切りが低く、縦の手スリもないことから、フロントウィンドウからの眺望が意外と良い印象です。
フロントウィンドウ直上にはアナログ時計を取り付けています。
運転席直後の天井部分には、夜間に車内灯を遮光(しゃこう)するローラーカーテンを備えています。

運転席直後にある運転席仕切りは、路線バスのような縦のポールや広告枠のボードなどを備えたタイプではなく、高さが低く、運転席横に廻り込むような形状です。
路線バスではないことから運転席横には運賃箱も装備していません。

運転席の様子です。
現在の目から見ると、メーター類はアナログ感にあふれていますが、視認性に優れた配置と意匠(いしょう)になっています。
路線バスでないため、ワンマン機器を備えていないことから、運転席廻りはシンプルな印象です。
変速機は6速MT(Manual Transmission:手動変速機)です。

前扉も中扉も運転席の操作により自動開閉できますが、前扉の車内側に手動で開閉するためのレバーとロッド(棒状の装置)を備え付けています。
引き続きPART II とPART IIIでは、今回紹介し切れていないUDトラックスの従来型自社製社バスでさらに個性的な4台を、分けて紹介していきます。
どうぞお楽しみに!
※ 取材協力 : UDトラックス株式会社
※ 出演 : 布施貴美子(バスグライメージキャラクター)
※ 写真(特記以外)・文 : 宇佐美健太郎
※ 本記事中に公開している写真は記事制作を条件に特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両についてのお問い合わせをメーカーに行わないようお願い申し上げます。
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