大団円(だいだんえん)! UDトラックスの従来型自社製社(しゃ)バス[PART III]

第1弾の大阪シティバスに続き、現在は第2弾として、埼玉県上尾(あげお)市に本社を構える商用車メーカー・UDトラックスの「社バス」を取り上げています。
同社は2010年の社名変更前の日産ディーゼル工業時代を中心に、2011年までバスの製造・販売を行っていましたが、本社・上尾工場と最寄り駅との間で社員を送迎するバス、通称「社バス」にも、日産ディーゼル時代に製造した車両を使用していました。
しかし、2025年末に新型のBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)フルフラット大型路線バス・いすゞエルガEVをべースとした社バスを6台導入。
これにより、自社製造の大型路線バス・自家用バスをベースにした従来型社バス6台が約20年の活躍に幕を下ろし、今春引退しました。
それらはそれぞれ型式と仕様が異なり、非常に個性的であったことから、その特徴を1台ずつじっくりと紹介するため、記事は三部構成で展開しています。
引退した従来型の自社製社バス6台のうち、2台は同型・同仕様であったため、記事では紹介車両を5台とし、PART I からPART III までの構成でお伝えしています。
これまでに3台を紹介しており、最終回となるPART III では残る2台を紹介します。
また、今回も『バスグラフィック』イメージキャラクターの布施貴美子(ふせ・きみこ)さんがナビゲートします。
日産ディーゼルKL-UA452MAN
2005年式「大宮200は・245」

実務者やバス愛好家にとっては言わずもがなのことですが、大型バスはエンジン・シャーシとボディをそれぞれ別メーカーが製造し、組み合わせて完成させています。
今春引退した6台のUDトラックスの従来型自社製社バスは、全て日産ディーゼル製のエンジン・シャーシに、「西工」と通称される西日本車体工業製のボディを架装していました。
西工は、福岡県を中心に鉄道・バスを運行する西日本鉄道、通称「西鉄(にしてつ)」の子会社で、バスボディを中心に製造・架装事業を行っていましたが、2010年に事業を終了し、会社組織を解散しています。
日産ディーゼル製という観点でも、西工製ボディを架装しているという観点でも、2026年現在では、引退した従来型自社製社バスは貴重な存在であったと言えます。
PART III の記事冒頭で紹介するのは、これまた個性的な1台である2005年式の日産ディーゼルKL-UA452MAN、「大宮200は・245」です。
この型式は同年式・同仕様の「大宮200は・246」もありますが、本記事では「大宮200は・245」を例にして紹介していきます。

「大宮200は・245」「大宮200は・246」は、6台の従来型自社製社バスの中で最も古い2005年式の車両です。
車体は、西工の「96MC(きゅうろくエムシー)」と呼ばれる1996年に登場した路線バス・自家用バス用ボディを架装した大型ツーステップ車です。
カラーリングデザインは、これまで紹介してきた3台と同様、日産ディーゼルのイメージカラーである赤を用(もち)い、白と明快な塗り分けを行っています。
また、UDトラックスのロゴ・マークと、同社の企業価値を示すブランドプロミスである「その一歩先へ」の意味を持つ“Going the Extra Mile”を標記している点も同様です。

車検証にもとづくメーカー提供の諸元データによると、全長10.82m、全幅2.49m、全高3.03mで、ホイールベース(前後の軸距)は5.3m、乗車定員は72人となります。
前扉が折戸、中扉が引戸となる前中扉構造のツーステップ車です。
冷房装置はデンソー製で、エンジン動力を利用して稼働させる直結冷房ですが、天井に装備しているため、屋根上には特に目立った装置の出っ張りがありません。
日産ディーゼルの車台番号は「01221」、西工の製造番号は「61-1676」です。
また、西工での製造年月は2005年3月で、初度登録年月も同年3月です。

大型フロントバンパーに灯具類をビルトインした構造であることは、PART I やPART II で紹介した車両と同様ですが、この車両はそれらの車両よりも前の世代のもので、フォグランプとコーナーリングランプが近接した位置関係となっていることが特徴です。

側窓は、バス愛好家を中心に「メトロ窓」と通称される引き違い窓を採用していることが特徴です。
中扉と戸袋窓廻りは、側窓と一体感を持たせるため、ダークグレーで処理しています。
最後部の側窓は固定窓ではなく、空気取り入れ口を持つパネルを装備しています。

エンジンは車両最後部に搭載しています。
最高出力235馬力、総排気量12,503ccのインタークーラーターボ付き直列6気筒ディーゼルエンジンPF6型です。
さまざまなバリエーションがありますが、日産ディーゼルの大型トラック「ビッグサム」にも搭載されたディーゼルエンジンです。

「大宮200は・245」と同じ型式のKL-UA452MANとなる「大宮200は・246」です。
年式も同様に2005年式となります。
「大宮200は・246」の扉側ミラーのカバーが黒色となっていることを除き、外観上、両者はほぼ同じで、登録ナンバー以外は区別がつきません。
車内も同じ仕様です。
「大宮200は・245」の車内は?

それでは、2005年式の日産ディーゼルKL-UA452MAN「大宮200は・245」の車内に入ってみます。
前扉から乗車して車内後方を眺めると、全て前向き座席の構成であることが分かります。
最後部座席を除き、運転席側は11列、扉側は9列となっています。
座席は全て枕カバー付きのハイバックシートで、シートベルトを装備しています。
座席表皮のモケットは、紺(こん)色系の色調で統一しています。

中扉の車内側の様子です。
中扉は引戸で、ツーステップ車であることからステップが見えます。
路線バスではないため、中扉周辺に整理券発行器やIC(Integrated Circuit:集積回路)カード乗車券のカードリーダーは備えておらず、スッキリとした印象です。

側窓はメトロ窓で、窓が窓枠によって上下2段に分割されることもなく、オーソドックスな引き違い構造の窓になるため、開放感があります。
1970年代から80年代前半の観光バスの側窓では、メトロ窓をよく見かけました。

中扉以降の車内の様子です。
ツーステップ車であることから、中扉以降にノンステップ車やワンステップ車で見られるような通路の段差が最後部座席手前までなく、通路は前方から最後部座席手前までフラットに続いています。

最後部座席は5人掛けとなっています。
シートバックは1人ずつ個別の形状となっており、枕カバーを付けています。
最後部座席にもシートベルトを装備しています。

運転席側の最後部側窓はメトロ窓の小窓となっていますが、前側のみが開閉でき、後側を固定しています。
この窓の下は、張り出し部分上部に肘(ひじ)掛けのようにモケットを張っていることも特徴です。

車内後方から前方への眺めです。
シートバック裏面にはグリップを備えています。
荷棚を設けていますが、扉側は中扉以降のみにあり、運転席側は前方から後方にわたってあります。
天井には丸型カバーを付けた車内灯を備えていることも特徴です。
運転席直後の天井部分には、夜間に車内灯を遮光(しゃこう)するローラーカーテンを装備しています。

運転席の様子です。
ステアリングホイール(ハンドル)、メータークラスター(計器盤)、メーターパネルの構造・デザインは、PART I 、PART II の記事で紹介した車両と同様で、車外を確認するためのカメラ映像を映し出す小さなモニターを増設しています。
変速機は5速MT(Manual Transmission:手動変速機)です。

路線バスでないため運転席横に運賃箱がなく、さっぱりとしており、運転席への出入りができるようになっています。
通路と運転席を仕切るパイプを備えています。
ワンマン機器を備えていないことから、運転席廻りはシンプルな印象ですが、ダッシュボードには無線機を装備しており、マイクを取り付けています。

前扉の様子です。
ツーステップ車であるため、前扉にも開閉時の扉の可動域部分を切り欠いたステップがあります。
前扉車内側にも手動で開閉するためのレバーとロッドを備え付けています。
日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273KAN改
2006年式「大宮230す2301」

これまで三部の記事に分け、紹介してきたUDトラックスの従来型自社製社バスも、この車両の紹介でいよいよ最後です。
ラストとなる紹介5台目は、2006年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273KAN改「大宮230す2301」です。
PART II の記事で紹介した2007年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA PKG-RA274MAN「大宮230さ5523」と同様、大型ノンステップ路線バスをベースとした社バスですが、型式の違いにより、全長はこの車両の方が50cm短くなっています。
ボディはこれまで紹介してきた4台と同様に、西工96MCを架装していますが、カラーリングデザインが唯一、異なっていることが大きな特徴です。

リアビューも路線バスのような印象です。
この車両は全体をミントグリーンのような色合いの青緑色をベースとしていますが、UDトラックスに尋ねたところ、2000年代半ばに世界初とも言える排出ガス浄化技術「尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択的触媒還元)システム」を採用したことから、先進性と環境性を表すために選んだカラーリングとしているとのことです。

車検証にもとづくメーカー提供の諸元データによると、全長10.49m、全幅2.49m、全高2.98mで、ホイールベース(前後の軸距)は4.8m、乗車定員は73人となります。
前扉が包み込むように開閉するグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉構造のノンステップ車で、側窓は上段引き違い・下段固定の逆T窓を採用しています。
引き違い窓中央の境の縦の線と、引き違い窓と固定窓の間にある窓枠の横桟の関係が、アルファベットの“T”を逆(さか)さまにしたように見えるため、そう呼ばれているようです。
前面行先表示器はLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)による電光式です。
登録ナンバーは希望登録ナンバーで「2301」となっていますが、これは当時の日産ディーゼルの代表電話番号の下4桁(けた)と同じで、「23」は「ニッサン」を意味するとのことです。
冷房装置はサーモキング製の直結冷房を採用しています。
日産ディーゼルの車台番号は「00001」で、西工の製造番号は「61-1511」です。
また、西工での製造年月は2006年2月で、初度登録年月は同年3月となります。

大型フロントバンパー内に灯具をビルトインしたデザインが西工96MCの特徴です。
その中でもフロントウィンドウの構造により、標準タイプのB-I型と視野拡大タイプのB-II型のボディタイプに分かれますが、この車両はB-I型となっています。
なお、“B”は“Bus”の頭文字を取っていると言われています。
バンパーはボディ同色で、フロントウィンドウ下に黒色が差されていることにより、他の同型の路線バスとは少し違った表情にも見えます。
前面にはUDトラックスのエンブレムを装着しています。

左前輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)にはノンステップ車であることをPRする“Non step bus”の大きなロゴを配しており、その近くには暖色系のグラフィックとともに“FLENS”(フレンズ)のロゴ・マークを貼っています。
“FLENS”は、“Final Low Emission New Diesel System”の略で、日産ディーゼルが2004年に実用化に成功した超高圧燃料噴射と尿素SCRシステムを組み合わせたものです。

前扉直後には側面行先表示器窓を設けていますが、表示器を備え付けておらず、実質的に固定窓となっているところがユニークです。

左後輪ホイールアーチ近くには、「世界先駆クリーンディーゼル このバスは世界に先駆け『尿素SCRシステム』を実用化しています」というキャッチコピーとともに、「超高圧燃料噴射+尿素SCR触媒=FLENDS」と、FLENDSの仕組みを分かりやすく示したステッカーを貼り付けています。
ステッカー後方にある小さなリッド(フタ)が、尿素水の投入口です。

リアコンビネーションランプは、PART II の記事で紹介した車両と同様、かつて日産自動車で製造・販売していたマイクロバス「シビリアン」と同じ構造・デザインを持つ縦型のもので、バス愛好家などから通称「シビリアンテール」と呼ばれているタイプです。
また、運転席側には丸い缶バッジのような赤地に白抜き文字の“UD”マークを付けています。

車両最後部には、最高出力300馬力、総排気量9,203ccのインタークーラーターボ付き直列6気筒ディーゼルエンジンMD92型を搭載しています。
さまざまなバリエーションがあり、2000年代に日産ディーゼルが製造・販売したトラックやバスのほか、当時バス事業で業務提携していた三菱ふそうトラック・バス製の大型路線バス「エアロスター」にも搭載されていました。
「大宮230す2301」の車内は?

それでは、2006年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273KAN改、「大宮230す2301」の車内に入ってみます。
前扉から乗車して車内後方を眺めた様子ですが、前中扉間はノンステップエリアで、扉側の一部の座席を除き、基本的には前向き座席の構成となっています。
座席モケットは青系統の色調でまとめています。
側窓廻りのみ黒色で処理されており、天井と側窓下は白系統であるため、メリハリを感じます。

ノンステップエリア運転席側の右前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)上にある第1席より後ろの座席4席は、折りたたみ式の1人掛け前向き座席となっています。
折りたたむと2台分の車イススペースになり、床面には車イス固定装置の金具を備え付けています。

ノンステップエリア扉側の左前輪タイヤハウス上にある第1席より後ろの座席は、横向き座席となっています。
路線バスでは優先席として設定されることが多く、この車両も戸袋窓部分に優先席を示すステッカーを貼り付けています。
この横向き座席は3人掛けとなっています。

中扉廻りの様子です。
この車両も路線バスではないため、中扉周辺に整理券発行器やICカード乗車券のカードリーダーは備えていませんが、前側の仕切り部分に車イス乗降用の格納式スロープ板を収めた収納ボックスがあります。

中扉以降は段上げエリアとなり、最後部座席を除き、運転席側、扉側ともに2人掛け前向き座席を4列ずつ設けています。
路線バスではないものの、手スリやピラー(窓柱)にメモリーブザー(降車ボタン)を備えていることも特徴です。

最後部座席は5人掛けです。
オーソドックスなスタイルで、シートバックと座面クッションが1対3対1分割となっています。
なお、この車両についてはこれまで紹介してきた車両とは異なり、客席にはシートベルトを装備していません。

車内後方から前方への眺めです。
シートバック裏面には標準的な黒色のグリップを備えていますが、シートバックの肩に備えているグリップはオレンジ色となっており、印象的です。
床上張りは模様を付けた黒に近い色調のもので、落ち着いた雰囲気を醸(かも)し出しています。

運転席の様子です。
この車両も、ステアリングホイール、メータークラスター、メーターパネルの構造・デザインと、車外を確認するためのカメラ映像を映し出す小さなモニターを増設していることは、これまで紹介してきた車両と同様であるものの、路線バスが装備している系統設定器をメーターパネルの横に備えている点が、これまでの他の車両にはなかった特徴です。

変速機はAT(Automatic Transmission:自動変速機)ですが、ドイツ連邦共和国の自動車部品メーカー・ZFフリードリヒスハーフェン製4速ATで、ボタン式セレクターを採用していることが大きな特徴です。
※ 取材協力 : UDトラックス株式会社
※ 出演 : 布施貴美子(バスグライメージキャラクター)
※ 写真・文 : 宇佐美健太郎
※ 本記事中に公開している写真は記事制作を条件に特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両についてのお問い合わせをメーカーに行わないようお願い申し上げます。
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