“Japan Mobility Show 2025”で未来のバスを見てきた! [ PART II ]

“Japan Mobility Show”は、自動車だけにとどまらず、ロボットや空飛ぶクルマなども含めたモビリティについての最新技術やデザインについての一大見本市で、今回参画した企業・団体は522と過去最多、会期中の来場者はのべ101万人でした。
前回からの連載で、“Japan Mobility Show 2025”を取り上げていますが、今回のPART II では日野自動車の出展を『バスグラフィック』イメージガールとともに見ていきます。
20年ぶりにボディデザインを刷新した「日野セレガ」!

日野自動車のブースでもバス関連の出展が目をひきました。
まず、開催前のリリースで非常に注目されたのが、20年ぶりにボディデザインを刷新した日野自動車の大型観光バス「日野セレガ」の会場発表です。
日野セレガの現行モデルは2005年にフルモデルチェンジによって誕生し、以来さまざまな改良を行ってきましたが、外観デザインは大きく変わらず基本的に約20年間キープされてきました。
2026年春頃から販売予定とのことですが、今回の刷新でどう変わるのか、早速詳しく見ていくことにしましょう!

全体的なフォルムは現行型と大きく変わってはおらず、「日野セレガ」のアイデンティティとも言える前面から側面に廻り込み屋根にいたるアクセントピラー、通称「Jピラー」も健在ですが、何となく現行型とは雰囲気が異なります。
なぜでしょうか。

それはフロントマスクが改良されたからです。
ヘッドライトが現行のディスチャージヘッドランプから可変変光型LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)ランプに変わったことが特徴で、大型トラック「日野プロフィア」や中型トラック「日野レンジャー」と共通部品となっています。
現行型とは前面の「Jピラー」端部のデザイン処理が変わり、フロントパネルのメッキ装飾を減らすなどして、全体的にシンプルな印象のフロントマスクとなっています。

左後輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)直前の装備は、BSIS(Blind Spot Information System:左折巻き込み警報)と車線変更警報のセンサーです。
左折時に歩行者や自転車が近付き過ぎ、衝突の危険が高まった場合に運転手に警告するための装置で、内輪差による巻き込み事故を未然に防ぎます。
同様の装備は右後輪ホイールアーチ直前にもあります。

ボディデザインを刷新した日野セレガ外観で、フロントデザイン以上に大きく変わったのがリアデザインです。
現行型でリアウィンドウ直上にあったリアスポイラー(空力部品)を廃止し、後面を縁取(ふちど)るような額縁(がくぶち)デザインとなったことが最大の特徴です。
リアウィンドウ下のリッド(点検ぶた)内には、最高出力360馬力、総排気量8,866ccのインタークーラーターボ付き直列6気筒ディーゼルエンジンA09C型を搭載。
美しく印象的な後ろ姿です。

現行型のリアウィンドウ廻りの処理は側面に廻り込むパノラミックスタイルのイメージですが、ボディデザインを刷新する日野セレガのリアウィンドウ廻りの処理はシンプルなものとなっています。

リアコンビネーションランプも現行型とは大きく変わります。
現行型は丸型の灯具類を後面両端に縦に並べたデザインで、2005年の登場時はレトロフューチャー感を感じさせましたが、ボディデザインを刷新した「日野セレガ」のリアコンビネーションランプは現代的なデザインとなり、現行型とは大きく印象を変えました。
ボディデザインを刷新した「日野セレガ」の車内は?

それではボディデザインを刷新した「日野セレガ」の車内を見てみることにしましょう。
座席レイアウトは2人掛け前向きリクライニングシートが通路をはさんでズラリと並ぶオーソドックスはもので、大きな変更はありません。
最後部座席手前まで運転席側、扉側ともに11席並んでいます。

座席で現行型に対して変わるのが、座席表皮のモケットの色使いと素材で、ショー出展車は暖色系でまとめていました。
モケットもリサイクル素材などを使用し、環境により配慮したものとなっているとのことです。

ショー出展車の最後部座席は2人掛けと1人掛けの前向きリクライニングシートを組み合わせた構成で5人掛けです。
中央の1席が1人掛け前向きリクライニングシートとなっていることが分かります。

ショーでは来場者の動線を配慮し、右側面後方にある非常扉を開放して出口としていました。
非常扉の開放は普段なかなか見ることができないうえ、通常の運行では使うこともないため、物珍しがる来場者も多くいました。

運転席の様子です。
安全装備の充実を図り、現行型で装備されている、プリクラッシュセーフティシステム(衝突回避支援装置)や車両ふらつき警報、EDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)、レーンキーピングアシスト、LDWS(Lane Departure Warning System:車線逸脱警報)、車両安定制御システム、スキャンニングクルーズのほかに、FCTA(Front Cross Traffic Alert:出会い頭警報)や標識認識システム、BSIS(Blind Spot Information System:左折巻き込み警報)、車線変更警報を新たに装備しました。
変速機は新たに12段AMT(Automated Manual Transmission:自動変速マニュアルトランスミッション)を採用し、さらに流体式リターダーも採用しました。

フロントウィンドウと前扉の間にあるピラーに装備されているのは、左後輪ホイールアーチ直前に装備されたセンサーを見た際に紹介したBSISの警報装置です。
左折時に歩行者や自転車と衝突する危険性がある場合に警報が作動します。
地域の移動課題解決はこれで解決!

つづいて見る日野自動車ブースのバス関連の出展車はコンセプトカー「ポンチョドット」です。
全体的に丸みを帯びたフォルムで、丸2灯ヘッドライトを持つフロントデザインも愛嬌(あいきょう)があり、親しみを覚えるコンセプトカーですが、バスというより小型トラックのようにも見えます。
全長4.85m、全幅1.8m、全高2.35mのコンパクトサイズで、バスグライメージガールと比較してもその大きさが分かりますが、いったいどのようなコンセプトカーなのでしょうか。

少子高齢化社会の到来と公共交通や運輸業界の担(にな)い手不足などで、バス減便や物流の遅延といった社会問題が起こり始めています。
そうした問題をふまえ「地域の移動をもっと自由に、もっと柔軟に。」をテーマに登場したのが貨客混載のコンセプトカー「ポンチョドット」です。
小型BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)トラック「日野デュトロ Z(ズィー) EV」をベースにしており、リチウムイオンバッテリーと最高出力50kWの交流同期モーターを搭載しているコンセプトです。
充電は普通充電と、現在主流のCHAdeMO(チャデモ)方式による急速充電に対応。
走行距離は国際的な試験モードのWTLC(Worldwide Harmonized Light Vehicles Test Cycle:世界統一軽自動車試験サイクル)で、一充電あたり150kmとなっています。

全体的なフォルムそのものからして未来的な「ポンチョドット」ですが、細部に目をこらすと、後方・死角確認用のバックミラーや補助ミラーがなく、何とカメラに置き換わっていることが分かります。

「ポンチョドット」は左側面と後面に扉を設けており、後面の扉は車イスの乗降や荷物の積み下ろしなどを考慮したものとなっています。
スロープはブース側に設営した構造物ですが、「ポンチョドット」の床面地上高は空車(くうしゃ)時で45cm、積車(せきしゃ)時で40cmとなっており、低く抑えています。

それでは「ポンチョドット」の車内に入ってみましょう。
車両前方から後方への眺めで、車内からも後面扉の開口が非常に大きいことが分かります。
車内はコーナー部に丸みを帯びたやわらかい印象です。
座席レイアウトはいたってシンプルで、運転席側と助手側に両側に横向き座席を設けていて、手スリを備え付けています。
フラットな床面も特徴で、車イスやベビーカー、荷物を難なく載せることができます。
乗車定員は11人です。

車両後方から前方への眺めです。
座席はジャンプアップ方式で、座る際に座面を下げて使用しますが、使用しない時は常に座面がはね上がっています。
後輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)の張り出しもほとんどありません。

コンセプトカーということもあり、天窓を設け、未来感を演出しています。
天窓中央のピラーには運行中に乗客の安全や荷物の状況を確認するための車内カメラを取り付けています。

床上張りは石目模様となっていますが、よく見ると2台分の車イス標記がなされており、長円形の車イス固定装置が埋め込まれていることが分かります。

運転席と荷台部分の客室はウォークスルー構造でつながっています。
助手席はなく、荷物台を設けており、買い物代行などでも使用できることをイメージした食品や花束などがディスプレイされています。

後面扉は1枚モノで大きく開きます。
屋根近くまで開口しているので、比較的楽な姿勢で乗降が可能です。
開口部の脇には扉が開いていることを表示する縦長の標識灯を設けているのが印象的です。
PART III では海外メーカーのブースやバス関連の出展を紹介します。
※ 写真 ・文 : 宇佐美健太郎
※ 本記事内中に公開している写真は報道公開日に撮影したもので、情報も当日の取材時点のものです。
記事中の車両についてのお問い合わせなどをメーカーや関係各所へ行わないようお願い申し上げます。
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