大団円(だいだんえん)! UDトラックスの従来型自社製社(しゃ)バス[PART II]

同社では2010年に現社名に変更するまで、長らく日産ディーゼル工業として数多くのトラック・バスを製造・販売してきましたが、バスについては2011年に製造・販売を終えています。
ただ、同社では今春まで自社製造の大型路線バス・自家用バスをベースとした社員送迎バス、通称「社バス」を6台所有し、運行していました。
それらは2025年末に新型のBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)フルフラット大型路線バス・いすゞエルガEVをべースとした社バス6台の登場により、代替されました。
引退した6台の従来型社バスは、それぞれ型式と仕様が全て異なり、非常に個性的であったため、大阪シティバスの車両紹介記事に次ぐ「日産ディーゼル/西工(にしこう)特集」の第2弾として取り上げています。
その特徴を1台ずつじっくりと紹介するため、三部構成の記事で展開していますが、これら6台のうち2台は同型・同仕様であることから、記事では型式・仕様により分けて5種類とみなして5台紹介します。
前回のPART I に続き、今回のPART II でも従来型社バスを『バスグラフィック』イメージキャラクター布施 貴美子(ふせ・きみこ)さんのナビゲートで紹介しますが、PART I で紹介済の1台を除く、残り4台の中から2台を紹介します。
日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273TAN改
2006年式「大宮200は・279」

UDトラックスで今春まで活躍していた、大型路線バス・自家用バスベースの従来型の社バス6台は全て日産ディーゼル時代に製造された車両です。
大型バスはエンジン・シャーシとボディをそれぞれ別メーカーが作り、組み合わせて完成させますが、これら6台の従来型の社バスの車体はいずれも、「西工」と通称される西日本車体工業製ボディを架装していました。
西工は福岡県を中心に鉄道・バスを運行する西日本鉄道、通称「西鉄(にしてつ)」の子会社で、バスボディを中心に製造・架装事業を行っていましたが、2010年に事業を終え、会社組織を解散しています。
こうしたことから、2026年現在では、日産ディーゼル製という観点でも、西工製ボディ架装という観点でも、従来型社バスはいずれも貴重な存在と言えます。
PART II の記事冒頭で紹介するのは、そんな中で最も目立つ存在だったと言える2006年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273TAN改、「大宮200は・279」です。

この車両は全長11.99mと、他の従来型社バス5台と比較して一回り長く、堂々としたスタイリングが特徴で、車体は西工の「96MC(きゅうろくエムシー)」と呼ばれる1996年に登場した路線バス・自家用バス用ボディを架装しています。
ただ、96MCボディの中でも、さらに細分化したボディタイプ分けがあり、この車両は「E-II型」と呼ばれるタイプであることも大きな特徴です。
西工ボディには、古くから路線バスや高速バス、観光バスなどの用途に応じたボディタイプ分けが存在し、B型、E型、S型、C型、SD型といったタイプに分かれます。
E型は観光バスや高速バス、長距離路線バス、自家用バスなどの用途に使用されるタイプで、“Express”の頭文字を取ってE型としたようです。
E型は1978年に登場し、その後、ボディのモデルチェンジに合わせてE-I型、E-II型と進化していきました。

車検証にもとづくメーカー提供の諸元データによると、全長11.99m、全幅2.49m、全高3.21mで、ホイールベース(前後の軸距)は6.5m、乗車定員は67人となります。
大型フロントバンパーに灯具類をビルトインしたデザインの西工96MCボディで、E-II型であることから前面が若干傾斜しており、前扉の前方もそれに合わせて斜めに切り欠いています。
前扉、中扉ともに折戸となる前中扉構造のツーステップ車で、側窓は上段固定・下段引き違いのT窓を採用しています。
固定窓と引き違い窓の間にある窓枠の横桟(よこさん)と、引き違い窓中央の境の縦の線の関係がアルファベットの“T”に見えることからそう呼ばれているようです。
冷房装置はエンジン動力を利用して稼働させる直結冷房で、サーモキング製です。
日産ディーゼルの製造番号は「00002」で、西工の製造番号は「61-1527」ですが、西工での製造年月は2004年12月となっており、初度登録年月が2006年12月のため、ブランクがあります。

フロントウィンドウは1枚モノのガラスとなっており、ワイパーはオーバーラップ式です。
ハイデッカー車ではありませんが、1枚モノのガラスであるため、観光バスのような良好な眺望が約束されます。
フロントウィンドウ下にはUDトラックスのエンブレムを付けています。

この車両は全長約12m級で、観光・高速バスのように堂々としていますが、メーカー広報担当によると、そのようなスタイリングで中扉を設けていることが一つの特徴であるとのことです。
なお、編集部が調べたところこの型式の側窓には天地寸法が2種あり、この車両は大きい方のタイプとなっています。
車体後方にはUDトラックスの企業価値を示すブランドプロミスで「その一歩先へ」を意味する“Going the Extra Mile”の標記があります。

日産ディーゼルで2004~08年に製造・販売した大型と中型の路線バス・自家用バスは、当時、日産自動車で製造・販売していたマイクロバス「シビリアン」と同じ構造・デザインを持つ、縦型のリアコンビネーションランプを使用していたことが特徴です。
バス愛好家などからは、通称「シビリアンテール」と呼ばれています。
2008年以降は球の交換性などの理由から、バスをはじめとした車両電装品を製造しているゴールドキング製の汎用(はんよう)品を縦に並べたものに変更しています。

エンジンは車両最後部に搭載しています。
最高出力300馬力、総排気量9,203 ccのインタークーラーターボ付き直列6気筒ディーゼルエンジンMD92型です。
さまざまなバリエーションがありますが、2000年代に日産ディーゼルが製造・販売したトラックやバスのほか、当時バス事業で業務提携していた三菱ふそうトラック・バス製の大型路線バス「エアロスター」にも搭載されました。
「大宮200は・279」の車内は?

それでは、UDトラックスの社バスである2006年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273TAN改、「大宮200は・279」の車内に入ってみます。
前扉から乗車して車内後方を眺めると、全て前向き座席の構成であることが分かります。
最後部座席を除き、運転席側は12列、扉側は9列あります。

最後部座席を除き、2人掛けの前向き座席となっています。
座席は全て枕カバー付きのハイバックシートです。
座席表皮のモケットは、青緑系の色調で統一しています。
前方から後方までずらりと2人掛けの前向き座席が並ぶ様子は、路線バスというより観光・高速バス、自家用バスの印象です。

中扉の車内側の様子です。
折戸を備えたツーステップ車であることから、切り欠きのあるステップが見えます。
中扉前後の仕切りは、路線バスにあるような天井まで至る縦のポールがなく、低いタイプを設けています。
扉には車内側で手動により開閉するためのレバーとロッド(棒状の装置)を備え付けています。

中扉以降の車内の様子です。
ツーステップ車であることから、中扉以降にノンステップ車やワンステップ車で見られるような通路の段差がなく、通路は前方から最後部座席手前までフラットに続いています。
路線バスではないため、中扉周辺に整理券発行器やIC(Integrated Circuit:集積回路)カード乗車券のカードリーダーは備えていません。

中扉直後にある気になる装備は、かつて路線バスが設けていた車掌台のようなスペースですが、周囲を仕切りで囲んでいることから中に入ることはできません。
また、仕切りで囲まれた中に、特に何らかの装備を備えているわけではありません。

最後部座席は5人掛けとなっています。
ハイバックシートで枕カバーを付けています。
この座席に限ったことではありませんが、客席には全てシートベルトを装備しています。

車内後方から前方への眺めです。
シートバック裏面にはグリップを備えていることが分かります。
全長約12mの車内はなかなか壮観(そうかん)で、縦のポールやつり革がないことから、前方までの見通しが非常に良い印象です。

扉側、運転席側ともに側窓上には荷棚を設けていることが特徴です。
扉側は中扉以降に設けており、前方にはありません。
一方、運転席側は前方から後方にわたって設けています。

運転席直後にある運転席仕切りは、路線バスのような縦のポールや広告枠のボードなどを備えたタイプではなく、高さが低く、運転席横に廻り込むような形状となっています。
運転席直後の天井部分には、夜間に車内灯を遮光(しゃこう)するローラーカーテンを備えています。

運転席の様子です。
ステアリングホイール(ハンドル)、メータークラスター(計器盤)、メーターパネルの構造・デザインは、PART I で紹介した2007年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA ADG-RA273MAN、「大宮200は・283」と変わりませんが、車外を確認するためのカメラ映像を映し出す小さなモニターを増設しています。
変速機は6速MT(Manual Transmission:手動変速機)となっています。
路線バスでないため、ワンマン機器を備えていないことから、運転席廻りはシンプルな印象です。

また、路線バスでないことから、運転席横に運賃箱がなくスッキリとしており、運転席への出入りができるようになっています。
通路と運転席を仕切るパイプを備えています。
なお、ダッシュボードには無線機を装備しており、マイクを取り付けています。

前面が傾斜した構造により、前扉前方がその傾斜に合わせた斜めの形状となっています。
ツーステップ車であるため、前扉にも開閉時の扉の可動域部分を切り欠いたステップが見えます。
前扉車内側も手動で開閉するためのレバーとロッドを備え付けています。
日産ディーゼル・スペースランナーRA PKG-RA274MAN
2007年式「大宮230さ5523」

PART II の記事で2台目に紹介するUDトラックスの社バスは、2007年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA PKG-RA274MAN「大宮230さ5523」です。
大型ノンステップ路線バスがベースの社バスであり、外観も路線バス然としたスタイルであることが特徴です。
ボディは西工96MCを架装していますが、ボディタイプはB-I型という路線バスタイプとなっています。
B-I型の“B”は“Bus”の頭文字を取っていると言われており、フロントウィンドウの構造により標準タイプのB-I型と視野拡大タイプのB-II型に分かれます。

リアビューも路線バスのような印象です。
リアコンビネーションランプは、1台目に紹介した車両と同様、「シビリアンテール」です。
カラーリングデザインについても、1台目に紹介した車両と同様、日産ディーゼルのイメージカラーの赤を使い、白と明快に塗り分けたものとなっています。
車体両側面にはUDトラックスのロゴ・マークと、“Going the Extra Mile”のキャッチコピーを標記しており、後面にはキャッチコピーのみを標記している点も、1台目に紹介した車両と同様です。

車検証にもとづくメーカー提供の諸元データによると、全長10.99m、全幅2.49m、全高2.99mで、ホイールベース(前後の軸距)は5.3m、乗車定員は75人となります。
前扉が包み込むように開閉するグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉構造のノンステップ車で、側窓は上段引き違い・下段固定の逆T窓を採用しています。
引き違い窓中央の境の縦の線と、引き違い窓と固定窓の間にある窓枠の横桟の関係が、アルファベットの“T”を逆(さか)さまにしたように見えるため、そう呼ばれているようです。
登録ナンバーは希望登録ナンバーで、「5523」となっていますが、「GO! GO! 日産」の語呂合わせであると言われています。
冷房装置はサーモキング製の直結冷房を採用しています。
日産ディーゼルの製造番号は「00467」で、西工の製造番号は「61-2763」です。
また、西工での製造年月は2007年5月で、初度登録年月は2007年8月となります。

社バスですが、路線バスのように側面行先表示器窓を装備しています。
表示器は取り付けていませんが、窓内に「UDトラックス株式会社」の社名を固定表示しています。
これは前面行先表示器窓、後面行先表示器窓についても同様です。

リアウィンドウ直下のボディ部分にハイマウントストップランプが埋め込まれています。
LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)によるもので、制動時に点灯します。

エンジンは最後部に搭載しており、1台目に紹介した車両と同様、最高出力300馬力、総排気量9,203 ccのインタークーラーターボ付き直列6気筒ディーゼルエンジンMD92型です。
「大宮230さ5523」の車内は?

それでは、2007年式の日産ディーゼル・スペースランナーRA PKG-RA274MAN、「大宮230さ5523」の車内に入ってみます。
前扉から乗車して車内後方を眺めた様子ですが、前中扉間はノンステップエリアで、扉側の一部の座席を除き、基本的には前向き座席の構成となっています。
座席モケットは水色系の色調でまとめています。

ノンステップエリア運転席側の右前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)上にある第1席より後ろの座席4席は、折りたたみ式の1人掛け前向き座席となっています。
折りたたむと2台分の車イススペースになり、床面には車イス固定装置の金具を備え付けています。

ノンステップエリア扉側の左前輪タイヤハウス上にある第1席より後ろの座席は横向き座席となっています。
路線バスでは優先席として設定されることが多く、この車両も戸袋窓部分に優先席を示すステッカーを貼り付けています。
この横向き座席は4人掛けです。

中扉廻りの様子です。
この車両も路線バスではないため、中扉周辺に整理券発行器やICカード乗車券のカードリーダーは備えていませんが、前側の仕切り部分に車イス乗降用の格納式スロープ板を収めた収納ボックスがあります。

中扉以降は段上げエリアとなり、最後部座席を除いて、運転席側、扉側ともに2人掛け前向き座席を4列ずつ設けています。
路線バスではないものの、手スリやピラー(窓柱)に、メモリーブザー(降車ボタン)を備えていることがユニークです。

最後部座席は5人掛けです。
この座席に限ったことではありませんが、客席には横向き座席など一部の座席を除いて、シートベルトを装備しています。
路線バスとほぼ同じスタイルの座席にシートベルトを装備していることは、この車両の一つの特徴とも言えます。

車内後方から前方への眺めです。
シートバック裏面にはグリップを備えています。
床上張りは模様を付けた黒に近い色調のもので、これもこの車両の特徴の一つと言えそうです。

運転席の様子です。
ステアリングホイール、メータークラスター、メーターパネルの構造・デザインは1台目に紹介した車両と同様で、車外を確認するためのカメラ映像を映し出す小さなモニターを増設していることも同じです。
変速機は5速MTとなっています。

路線バスでないため、運転席廻りにワンマン機器がなくシンプルな印象で、運転席横にも運賃箱がなくスッキリとしています。
路線バスで運賃箱を設けている箇所は、運転席への出入りができるようになっており、通路と運転席を仕切るパイプを備えています。
引き続きPART IIIでは、今回紹介できなかった残る2台のUDトラックスの従来型自社製社バスを紹介します。
どうぞお楽しみに!
※ 取材協力 : UDトラックス株式会社
※ 出演 : 布施貴美子(バスグライメージキャラクター)
※ 写真(特記以外)・文 : 宇佐美健太郎
※ 本記事中に公開している写真は記事制作を条件に特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両についてのお問い合わせをメーカーに行わないようお願い申し上げます。
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