密着!横浜市営バス ~第2回~
新横浜から鶴見へ、いよいよ出発!
永沼さんがハンドルを握るバスは、7時55分に回送として営業所を出発。新横浜駅8時02分発の鶴見駅西口行きがこの日最初の営業運転です。
この日、おもに運転するのはJR・横浜市営地下鉄の新横浜駅とJR鶴見駅、そしてJR・市営地下鉄グリーンラインの中山駅がおもなターミナルの「41系統」。永沼さんはこの系統の特徴について「お客様が非常に多いということと、鶴見駅近くでは坂道が多く、バス同士のすれ違いも厳しいような狭い道やS字カーブが連続すること」といいます。
8時02分、定刻通りバスは鶴見駅西口に向けて発車。休日の朝らしく、車内に目立つのは早起きのお年寄りです。永沼さんは「お年寄りがバス停から一歩で確実に乗車できるように、バスを停留所にぴったりつけるようにしています」といいます。「ありがとうございました」と声をかけて降りるおばあさんに「お気をつけて」の声かけも欠かしません。
朝日が差し込む車内にはのんびりしたムードが漂い、いかにも休日の朝といった風情ですが、東急東横線の菊名駅を過ぎて丘を一つ越えるとその様子は一変します。丘陵地に広がる住宅地を縫って坂道をものともせず走るバスは、住民にとって貴重な交通機関。休日の朝でも多くの利用者で混み合います。あっという間に車内は前ドア付近まで満員に。狭い道とカーブが続く中、永沼さんは的確なハンドルさばきで対向車とすれ違いつつスムーズな運転を続けます。
特に気をつかうのはどんなところ?
途中でやや渋滞はあったものの、ほとんど遅れることなくバスは8時35分過ぎ、鶴見駅西口へと到着。定時運行を守るためのコツとして、永沼さんは「時間を考えながら走らないといけませんね。数分遅れると各停留所のお客様はどんどん増えていくので」といいます。
10分ほどの休憩を経て、永沼さんの運転するバスは折り返し便として鶴見駅西口を出発。同じ41系統ですが、今度は新横浜駅に戻るのではなく、東急東横線の大倉山駅、横浜市営地下鉄ブルーラインの新羽駅を経て、第三京浜の港北インターチェンジ近くにある「川向町折返場」(横浜市都筑区)に向かいます。
大倉山駅付近の道路は、地域のシンボル「大倉山記念館」にちなんだギリシャ風の白い建物が並ぶ瀟洒な商店街。しかし、実はこのあたりが41系統でもっとも気をつかう区間なのだそうです。「特に平日は駐車車両が多くて道も狭いので、鶴見駅周辺より気を配らないといけませんね」。坂道ありカーブあり、そして歩行者の多い商店街ありと、41系統は腕利きドライバーの「見せ場」が続く路線です。
鶴見川を渡ると、車窓は商店街や住宅の並ぶ街並みからいつしか緑濃い風景へと移り変わっていきます。
沿道に工場が目立つようになってくると、いよいよ終点の川向町折返場です。鶴見駅西口からの所要時間は約1時間。しばらくの休憩ののち、バスは再び鶴見駅西口に向けて発車します。
プロの心得「360度を見渡しながら運転」
気づけば時間はもう10時過ぎ。お昼に近付くにつれて車内は混み合ってきます。満員状態のとき、永沼さんが特に気を配っているのはカーブでのハンドル操作だといいます。「重くなるとカーブで遠心力がきつくなるので、その点に気を付けています」。大きなバスを安全、かつお客様にとって快適に運転するため、プロはこんなところにも気を配っているのです。
約1時間かけて鶴見駅西口に戻ると、今度は「38系統」で駅周辺の住宅地をぐるりと一周。約30分の運行を終えて再び駅に戻ってくると、再び41系統として、けさ出発した新横浜駅に戻ります。午前中の運行はこの新横浜駅行きで終わり。終点に到着後、休憩のためいったん営業所に戻ると、永沼さんの顔にリラックスした笑みが浮かびました。
バスの乗務員には「前だけでなく、ミラーなどを駆使して側面から車内から、それこそ周囲360度を見渡しながら運転する」意識が欠かせないという永沼さん。1日に約33万人が利用する「横浜市民の足」は、このように確実な基本動作と乗客への心配りを欠かさない高い意識を持った乗務員さんたちによって、毎日安全に走り続けているのです。
(文・編集:小佐野カゲトシ / 写真:伊藤岳志)
※本記事は2018年10月3日発刊の『バスグラフィック』Vol.36の掲載内容を再編集したものです。この記事をシェアしよう!
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