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伊東浩子の『私にも言わせてよ!』三.思い出を心の原点にして

みなさまこんにちは。

このところの天候には驚くばかりですが、ちょうどこの時期になると思い出すことがあります。
1992年9月8日 私が都営バスの運転手として、指導員もなく初めてひとりでバスを運行したひとり立ちの日です!

この日は、都営バス初の女性運転手ということで注目され、朝からメディアの取材を受けてからの運行でした。
路線は[CH01 都庁循環]です。緊張とワクワク感と・・・。
おこがましいですが不安よりも期待や充実感の方が強く、感無量だったことを思い出します。

私は、この時の気持ちを「バス運転手として」だけでなく、心の原点としていつも大切にしています。難しいことや迷う時、滅入る時にはそれを思い出して気持ちを切り替えます。


さて、みなさまは「バスを運転することは特殊なこと」だと思われますか?というのも、私は度々『どうしてバスの運転手になったの?』と訊かれることがあるからです。
当時、車の運転が大好きだった私にとってバスを運転することは、好きの延長線上で自然体なことでした。

そして今、コラムを書かせていただくことで26年間をあらためて振り返っていると、人生のいろいろなことがいくつも浮かび上がってきます。

例えば、私がまだ幼い小学生だったころのことです。
私には2歳下の妹がいるのですが、その妹と比べて私は、食が細くて身体は小さく体力も無く気の小さい泣き虫なこどもでした。

そのこともあって私は、いつも両親から叱咤激励され育てられました。
家族思いのやさしい父は、自営業で職人をしていましたが、とても働き者で夜なべしている姿をよく見ました。母は、お稽古事に通い家事の手伝いや使い走りは日常的に当たり前という躾の厳しい人でした。

思い起こせばそれは、両親の愛情であり、両親が与えてくれたたくさんの学びの機会であったことだと感謝しています。

身体の弱かった私は、小学校4年生まではプールに入ることを止められていて、解禁になったのは5年生の夏でした。スイミングスクールが開催する5日間の夏季特別講習に参加して水泳を覚えたものですが、その時に味わった爽快感と達成感、さらに向上心と諦めない気持ちというオマケもついて、それが私の人生の礎になったのだと思います。

夕凪が涼しく感じ出すこの季節、そんな昔の思い出がひとり立ちした時の思いと重なり、とても暖かく懐かしい気持ちになりました。
大型二種免許を取得しようと思ったのもこの時期だったんですよ。

私は、バスを運転することが嬉しくて楽しくて、バスのハンドルを握ると何か不思議な気持ちになります。運転席から見える風景は素晴らしく季節を感じられることはもちろん、路線バスはたくさんのお客様と出会うので、いつもいろいろな発見やお客様の仕草から学ぶことが多くあります。

同じシチュエーションは二度とないので、そのひとときひとときを大事にしようと心がけて運行してまいりました。

私がバスドライバーとして過ごした時間は、子どもの頃の夢やあこがれを実現したというよりは、些細なきっかけとその時にできることを自分の気持ちに真摯に向き合い精一杯やってきた結果です。

どんなことにも一所懸命取り組むことで切り開き、乗り越えてきたかなぁと思います。発想の転換と気持ちの切り換えに助けられたことも多くありました。 
 
毎年、この日が来ると、指導してくださった師匠を筆頭に上司や先輩や同僚・後輩、叱咤激励し支えてくださった方々、乗車してくださったお客様を思い出し感謝の気持ちを新たにします。

このところは女性ドライバーが増えてとても嬉しく思いますし、路線バスはローテーションに組み込まれるので知恵を絞って家事・育児との両立もできます。

私が次世代に伝えられることは何か、応援できることは何か、そんな事を考えながらこのごろは乗客としてバスを便利に利用させていただいております。
立場が異なると目線も感じ方も変わりますから、運転席とは違う風景が見えて面白いですよ。



※バス業界では、指導員もなく独りでバスを運行させることを「独車(どくしゃ)」と言います。

執筆 伊東浩子 『バスギアスペシャルアドバイザー』

いとう ひろこ ― 神奈川県川崎市に生まれ、横浜で育つ。結婚を機に現在の東京都杉並区に移り住む。1992年7月、都交通局に入局。当時35歳で専業主婦から東京都交通局女性乗務員第一号となる。持ち前の元気と負けず嫌いな性格で、主婦業にもいっさい手を抜かず25年に渡って勤務後、2017年に定年を迎え退職。その後は、バス運転手の経験を活かし、講師として地域・社会に貢献。現在も学校運営協議会などを通じて地域の子供達に人との接し方を教えるなどの教育に携わる傍ら、当サイト『バスギアスペシャルアドバイザー』としても活躍の幅を広げている。
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