川崎鶴見臨港バスのエース4人が語る「バス運転士」の魅力(後編)―高速道路で超ビックリ体験も!―
貸切バスと路線バス、運転するうえでの違いは?
――皆さんは現在「貸切運転士」として貸切バスを運転されているとのことですが、貸切運転士を目指したきっかけは何だったのでしょうか。
A:最初はとりあえず「バスに乗りたい」ということだったんですが、神明町営業所(川崎市幸区にある営業所)に入ったら貸切バスがあったんですよ。それを動かす機会があって、これすごいな、やりたいなと。
D:ぼくは彼が「貸切流用予備」で貸切バスの仕事に行ってるのを見て、いいなあと(笑)。
――実際に運転するうえで、貸切バスと路線バスで異なるのはどんな部分でしょうか。
B:やっぱり、高速道路を使うので路線バスよりスピードを出しますから、その怖さというのはありましたね。それは今も意識していて、スピードに対する怖さをなくしてはいけないと思っています。
C:違うなと思ったのは渋滞です。路線バスは通る道が決まっているので渋滞は仕方ないんですが、貸切だと別の道を考えないといけないので。あと、路線バスと貸切の車では運転席の位置やミラーの感覚が違うんです。最初のうちは「貸切の車は大変だな」と感じていましたね。
高速道路でバスを追い抜いたトンでもない奴!
――路線バス・貸切バスを含め、これまでに忘れられないエピソードや経験はどんなものがありますか。
C:何と言っても、飛騨高山からの帰り道に中央道で馬に抜かれたことですね(一同驚き)。馬匹(ばひつ)輸送車が故障して逃げ出しちゃったらしいんです。一緒に乗務していた先輩に馬がいると言ったら「大丈夫か、疲れてないか」と言われたんですけど本当に馬で(一同爆笑)。
A・B・D:その話には勝てない(笑)。
――馬に抜かれたほど衝撃的でなくても、印象に残っていることを伺えれば(笑)。
D:鶴見営業所に配属されたとき、朝のラッシュに驚きました。鶴見では深夜バスも遅い時間まで満員です。しかも坂道ばかりで道も狭い。でも、おかげで運転技術は向上しました。
A:僕は臨港バスの全部の営業所を回ってるんですが、確かに鶴見の営業所に移ったときはやっぱりお客様が本当に多くて、びっくりでしたね。今思えば全営業所を見る経験ができてよかったなと。
――道の狭さや坂道の多さなど、臨港バスは運転士として鍛えられる環境ということですね。新人時代に磨いた運転技術が現在の力になっていると実感するのはどんな時ですか。
B:路線バスは、路線になっている限り曲がれないことは絶対にないですよね。でも観光バスだと温泉町なんかは狭いですから、ここ曲がるの?と思うことは今もありますよ。他のバス会社の運転士も見ている手前、一発で決めなきゃと思って背筋伸ばして運転したり(笑)。
A:とはいっても、ちゃんと狭い道に入って停めてるわけですから(笑)。でも、腕は磨き続けないといけない。これは永遠ですね。
――皆さんのキャリアを通じて、臨港バスが「変化してきたな」と思う部分はありますか。
B:運転士の質はどんどん上がっていると思いますね。
C:風景が変わりましたね。路線バスに乗っていた時は浮島(川崎市浮島町)に行く高速道路はなかったですし、武蔵小杉のあたりもあんなに高いビルあったっけ、と思ったりとか。
D:バスも乗り心地や性能が良くなりました。ただ、パワーは昔の車のほうがあった感じがしますね。高速道路などでは特に違いはないんですが、山道ではそれを感じます。
A:あまり僕の中では変わっていないかな、という感じです。居心地がいいのは昔からですね。「臨港カラー」というのが昔からあって、大きな部分ではあまり変わってないのかなと思います。そこに良さがあると思います。
――「変わらない良さ」というお話が出たところで、最後にお聞きしたいと思います。皆さんが考える「臨港バスの良さ」とはどこでしょうか?
一同:居心地いいよね。
C:気がついたらもう20年以上過ぎていたという感じですね。
D:居心地の良さの中に厳しさがあるというか、そういう感じじゃないですか?
B:そう、居心地がいいといってもイコール「緩い」んじゃなくて、厳しさもあるところですね。締め付けじゃなくて、バランスが取れているというか。本当に「臨港に入ってよかった」と思います。
2回に分けてお届けしてきた、路線バスと貸切バスの両方を長年経験してきたベテランの座談会。高速道路で馬に追い抜かれるという衝撃の体験談もさることながら(笑)、これからバス乗務員を目指す方々にとって参考になるお話も多かったのではないでしょうか。ぜひ「バスギア」を通じて、憧れのバスドライバーへの夢をかなえてくださいね。
(文・編集:小佐野カゲトシ / 写真:伊藤岳志)
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