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高速バスによる貨客混載の効用とは?

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2020年9月4日、東京都新宿区新宿3丁目にオープンした「バスあいのり3丁目テラス」。前編では「大都会のオアシス」のような店舗の様子とオススメのメニューを紹介しましたが、後編ではこの店舗のコンセプトやねらい、そしてバスによる貨客混載の効果について見てみましょう。

2018年から始まっていた「産地直送バスあいのり便」

全国各地からバスで届く食材を使った料理などが楽しめるユニークな店舗「バスあいのり3丁目テラス」は、地域産品のマーケティングを担うアップクオリティと三菱地所の協業により誕生しました。岩手県や福島県などの東北地方から四国各県まで、東京都心に到着するさまざまな高速バス路線の出発地の食材を使った料理や、各地のスイーツ、地ビールなどを提供することが特徴です。

両社と全国農業協同組合中央会、農林中央金庫、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会は、2018年7月から高速バスのバゲージルーム(床下荷物室)の空きスペースを活用した地方特産品運搬「産地直送バスあいのり便」に取り組んできました。2020年9月上旬時点で全国50地域・56路線と連携しており、配送ルートの確保がネックとなってこれまで県外へ出荷できていなかった希少品や伝統野菜、朝どれの野菜、水産品などを、いわゆる貨客混載により高速バスで輸送しています。「バスあいのり3丁目テラス」で使用される食材は、新宿高速バスターミナル「バスタ新宿」に到着する高速バスで運ばれて来ます。

「バスあいのり3丁目テラス」の目的は?

2020年春からの新型コロナウイルス感染症拡大によって、高速バスの運休や減便が相次ぎバス事業者に影響が出ているほか、各地への往来そのものが減少したことで、各地の農産物や水産物の販路も大きく縮小しました。そのような状況をふまえ、「バスあいのり3丁目テラス」は、「産地直送バスあいのり便」の貨客混載で全国各地から都心へ運ばれてきた特産品などを提供することにより、地方の農産物や水産物の継続的な消費・購買につなげることを1つの目的としています。また、バス事業者にとっても貨物の運賃収入のほか、各地域に対してブランディングにつながる利点があります。

もう1つの目的は、地方の産地ならではの希少かつ新鮮な食材や各地の魅力に消費者が出会い、体験できる場となることです。具体的には月替わりでオンライン直売所イベントや、大型ビジョンを活用した観光と食のタイアップイベントなどを展開していきます。店舗には産地直送の野菜や果物の販売コーナーがあり、高速バスで運ばれてきたことをPRするポップも掲げられており、地方の産地と都心の消費者をつなげる役割を担っています。

高速バスの貨客混載が秘める可能性

オープンに先立って9月3日に開催された報道向けのオープニングレセプションの夜の部では、三菱地所エリアマネジメント企画部兼新規事業創造部の井上 成(いのうえ・しげる)担当部長、umariの古田秘馬(ふるた・ひま)代表取締役、アップクオリティの泉川 大(いずみかわ・だい)代表取締役、合同会社高知カンパーニュブルワリーの瀬戸口信弥(せとぐち・しんや)氏、東邦レオの古川 稔(ふるかわ・みのる)代表取締役らがあいさつの後、ラフなスタイルでのトークセッションを行いました。そこでは「日本中の食をめぐる、すてきなバスあいのり100のものがたり」というテーマを念頭に、高速バスを使った食品の地域間流通システムは、地域の活性化や振興、地方と都市の新たな関係性の構築などの可能性を秘めていることが語られました。高速バスを使った貨客混載は将来、思いもよらない新たな価値を創出するチャンスがいくつも詰まっているのかもしれません。

※ 文:『バスグラフィック』編集部
※ 写真(特記以外):伊藤岳志
※ 撮影時のみマスクを着用しておりませんが、感染症対策を行い、可能な限りソーシャルディスタンスを保って取材しています。

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