優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』 優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』 優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』

いま振り返る「ノンステップバス」の歴史(4)普及を後押ししたバスの「標準化」とは?

このエントリーをはてなブックマークに追加
今では全国的に当たり前の存在となった「ノンステップバス」。出入り口に段差がなく乗り降りの楽なこのタイプのバスが国内メーカーから相次いで登場したのは1990年代末のことでした。その歴史をたどるこのシリーズもこれがラスト。今回は、ノンステップバスが本格的に普及するまでの流れをたどります。ノンステップバスの発展に深く携わってきた元東京大学教授の鎌田実氏(現・日本自動車研究所長)のお話を基に、知られざるエピソードも交えつつご紹介します。

●前中扉間ノンステップが「標準」に

後部まで段差のない通路を実現していた初期の国産ノンステップバスは、後軸部分の床面高さを下げられる「ドロップアクスル」を採用するなど、メーカー各社の「意欲作」と言えるバスでした。しかし、高価で混雑時には向かないなど、運行側から見るとデメリットがあったのも事実です。その後普及したのは、現在見られるような、後部の床面を段上げしたタイプの車両でした。

日産ディーゼルは1999年、後軸の駆動部分にドロップアクスルではなく従来型のメカニズムを採用し、後部を段上げにした前中扉間ノンステップのバスを発表。バス事業者には価格も低く抑えられ、かつ収容力もあるこのタイプが受け入れられることとなり、その後国産のノンステップバスはフルフラットではなく、後部を段上げした形の前中扉間ノンステップが主流となっていきました。

ノンステップバスの構造をめぐる試行錯誤が続く中、2000年には高齢化社会の本格的な到来を受け、公共交通などのバリアフリー化を法律で義務付ける、いわゆる「交通バリアフリー法」が施行されました。路線バスについては車いす対応が義務付けられ、バス事業者が新規にバスを導入する際は床面高さ65㎝以下の低床バスの導入が義務化されました。

そんな中、その後のノンステップバスの流れを形作る動きも進展しました。「標準化」です。2000年に日本自動車工業会や日本バス協会などが大型ノンステップバスの標準仕様を策定し、2002年には国土交通省が「次世代普及型ノンステップバス標準仕様」の策定を開始。そして2004年には、現在に続く「標準仕様ノンステップバス認定制度」が創設されました。

●車内の「色」も標準化が進んだ

鎌田氏によると、標準化が推進された理由は車両の価格をなるべく下げて普及を図ること、そしてもう1つは手すりや降車ボタンなどといった車内各部の仕様を極力合わせることで、視覚障害者などにも使いやすいバスをつくることだったといいます。

その中で、利用者にもわかりやすい形で統一が進んでいったものがあります。「車内の色彩」です。標準仕様ノンステップバス認定制度の「室内色彩」の項目には「座席、縦握り棒、通路及び注意箇所などは高齢者や視覚障害者にもわかりやすい配色とする」などの仕様が記載されており、この中に「縦握り棒、押しボタンなど、明示させたい部分には朱色または黄赤を用いる」といった記述があります。縦握り棒、つまり手すりは朱色または黄赤=オレンジ色ということです。

車内の色彩を標準化したのは、弱視や色覚異常の人でも見分けがつきやすいようにする、いわゆる「ユニバーサルデザイン」の考えに基づいています。これらの仕様策定に携わった鎌田所長によると、当初手すりは「赤」で検討を進めていたものの、赤は色覚異常の人には黒く見えてしまうため、オレンジ色に決まったといいます。

国土交通省の「バリアフリー整備ガイドライン」には「参考例」としてバス車内の色彩の組み合わせの例が掲載されており、座席表皮は「ブルー系」、床や通路は濃いめのグレーである「ニュートラル・グレー」、天井や壁面は「淡色グレー」となっています。ただ、鎌田氏によると、そもそも色彩の仕様はコントラストを明確にすることが目的のため、色そのものを細かく指定する狙いはなかったのだそうです。

●都営バスのカラーリングに込められた意味

ノンステップバスと「色」に関しては、こんなエピソードもあります。東京都交通局のノンステップバスは、白地にライトグリーンの塗り分けをベースに、黄色の円状の模様を組み合わせたデザインですが、実はこのデザインの基になったのは鎌田氏のアイディアでした。東京都交通局がノンステップバスを導入する際、「床が低いことがわかるようにしてほしい」と提案し、参考として下向きの矢印を側面に描いたイギリスの例を紹介。その案を踏まえてデザイナーが考案したのが、現在の都バスのカラーリングになっているそうです。

今では当たり前の存在になったノンステップバス。本格的に導入が始まってから間もなく四半世紀が経とうとしていますが、現在の形が固まるまでには関係者によるさまざまな試行錯誤の歴史がありました。いよいよ本格的なEV(電気自動車)を迎え、バスの姿もさらに変わっていくことが予想されます。今から10年後、20年後のバスは、はたしてどのような姿になっているでしょうか。

※文:小佐野カゲトシ

この記事をシェアしよう!

このエントリーをはてなブックマークに追加
  • FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
    フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。