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江ノ電バスの「教習車」

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近年、バス事業者が自前で「安全運転訓練車」や「教習車」と称した車両を導入するケースが増えています。
これらの車両は、すでに免許を取得して実際に営業運行を行っている乗務員の訓練が目的であることが大きな特徴です。
今回は2社の車両を前編と後編に分けて紹介しており、前編では小田急バスの「安全運転訓練車」を紹介しましたが、後編では江ノ電バスの「教習車」を紹介します。

■ 江ノ電バスに「教習車」が誕生したキッカケは?

江ノ島電鉄(江ノ電)グループのバス事業者、江ノ電バスは神奈川県の湘南、鎌倉、横浜エリアに路線バス網を展開しています。
同社では2016年に専用の装備とカラーリングデザインを持つ「教習車」を導入しました。

「教習車」は、近年採用される乗務員の傾向として、大型車の運転経験が浅い、もしくは経験のない大卒や他業種からの転職組が増えてきていることを鑑(かんが)み、より充実した運転訓練を行うことを目的に誕生しました。
また、少子高齢化が進展し、高齢者の利用が増加傾向にあると同時に車内事故のリスクも高まってきており、よりいっそうの注意を払った運転を身に着ける必要があるため、車内事故防止訓練専用の装置も備えています。

■ 大型ワンステップ路線バスを大改造

江ノ電バスの「教習車」は2002年式の三菱ふそうエアロスター大型ワンステップ路線バスをベースにしており、もともとは鎌倉営業所で路線バスとして使用されていた車両を、バスの整備や車体の二次架装を行うメーカーである東急テクノシステムで改造して生まれました。
登場時は写真のように社番342でしたが、ほどなくして2016年4月に改番されて社番570になっています。
営業に使用されないことから登録ナンバーは自家用登録の「湘南200は・262」で、引き続き鎌倉営業所に所属しています。

■カラーリングデザインが紅白の理由

「教習車」の外観は赤と白の塗り分けのカラーリングデザインで、同社の路線バスにも貸切バスにも使用されていない色調で目立ちますが、塗り分け方は路線バスのカラーリングデザインに準拠しています。
なぜ、独自のカラーリングデザインになったのでしょうか。
答えは、利用客に対しての安全のため。「教習車」が営業中の路線バスと同じカラーリングデザインであった場合、教習中にバス停で停まった際に路線バスと勘違いした利用客が駆け寄って来る可能性があります。
その際、転倒や飛び出しなどの事故を誘発する危険性が生まれます。
紅白で目立つ色調でありながらも、「教習車」独自のカラーリングとすることは、利用者の安全に対しての大きな配慮が織り込まれているのです。

■ 訓練装置のある位置は事故の起こりやすいポイント

この「教習車」ならではのポイントの一つが、事故が起こりやすいポイントに装備されたLEDランプです。

運転席に座った位置から死角となるフロントバンパー上面、左右後輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)直前や、車内の中扉廻り、段上げ部分、最後部座席付近などに装備されています。

これらのLEDランプは指導教官が点灯、消灯、色の切り替えを行い、訓練を受ける乗務員がミラーなどを使用してしっかりと確認、認識をしているかをチェックすることができます。

訓練を受ける乗務員に正しい確認動作の心構え、手順を徹底的にたたき込むことで、巻き込み事故や車内事故を未然に防ぐねらいがあります。
また、車内には燃料消費量を可視化し、経済運転の重要性を知ることができる燃料目視シリンダーも備え付けられています。

安全運転への努力に終わりはありません。
各事業者の「安全運転訓練車」や「教習車」の存在と、乗務員の真摯(しんし)な取り組みによって、私たちが日々、安全で快適なバスを利用することができるのです。

※ 協力:江ノ島電鉄株式会社、株式会社江ノ電バス
※ 文・写真 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 掲載の車両写真は記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。
※ 本記事は2016年4月22日発刊の『バスグラフィック』Vol.27の掲載内容を再編集したものです。

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