この夏引退したジェイアールバス関東 唯一無二の高速バス[後編]

このエントリーをはてなブックマークに追加
コロナ禍の中で迎えた2年目の夏も過ぎ去ろうとしています。
今回は夏の終わりとともに約20年間の活躍を終えたジェイアールバス関東の大型高速バス、日産ディーゼル・スペースアローRA KL-RA552RBN西日本車体工業(西工)製ボディ架装車を前編と後編の2回に分けて取り上げています。
同社では唯一無二の存在で、西工58MCのハイデッカーボディS型を架装しており、最後は長野原支店に所属。車両称号はH658-01415、登録ナンバーは「群馬200か1288」でした。
後編ではよりいっそう車両にクローズアップしていきます。

ジェイアールバス関東で唯一のボディデザイン

車両称号H658-01415は、前扉のみのトップドア構造のハイデッカー車です。
ボディは西工製で、1983年に登場した58MCと呼ばれるスマートなスタイルのものをベースにしたハイデッカー車ですが、1990年にフロントバンパーが大型化してヘッドライトがビルトインしたデザインとなりました。

また、西工ではボディのタイプをアルファベットとローマ数字サフィックスの組み合わせで表しますが、高速バス・長距離路線バスのハイデッカー車はS型で、スーパーハイデッカー車はSD型となります。

車検証上の諸元は、全長11.99m、全幅2.49m、全高3.41mで、ホイールベース(前後の軸距)は6.18mです。

大型フロントバンパー感のない、精悍(せいかん)なフロントマスク

では、外観を細かく見ていくことにしましょう。
フロントバンパーはボディと同じ白色と青色に塗り分けられており、ヘッドライトケースのみが黒フチとなっていることから、大型バンパーを装備しているにもかかわらず、その印象は薄れています。
このことからヘッドライトの存在がハッキリとしていて、精悍な印象の面構えとなっています。
フロントウィンドウは2分割構成で、前面行先表示器はフロントバンパー内に収められていますが、活躍末期には事業者名を固定表示していました。

前扉は幅の狭い折戸で、側窓は上段固定・下段引き違いのT窓となっていて、左最後部は車内に化粧室がある関係から固定窓となっています。

側面行先表示器窓は左前輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)の上方に埋め込まれており、活躍末期は事業者名を固定表示していました。
サブエンジン式のデンソー製冷房装置を備えており、前輪直後にサブエンジンのグリルが設けられています。

直線基調で機能美を感じるリアビュー

後面デザインも直線基調で構成されている印象を強く受けます。
リアウィンドウは1枚構成ですが、車内の化粧室の関係で扉側半分のガラスがブラックアウトされており、運転席側半分の下方の車内には後面行先表示器の跡があります。
リアコンビネーションランプは3連で勇壮(ゆうそう)な雰囲気です。

右側面最後部には縦長のエンジングリルがありますが、右前輪直後にも冷房装置用サブエンジン用の大きなグリルがあります。グリルのあるリッド(点検ぶた)を開けるとサブエンジンが現れます。

非常扉直後の右側面最後部側窓は小窓ですが、1枚構成の固定窓ではなく、T窓となっています。

最高出力430ps、総排気量21,205ccのV型8気筒高出力ディーゼルエンジンRH8F型を搭載しています。

オーソドックスな車内仕様

つぎに車内を見ていくことにしましょう。
車内は全て前向きのリクライニングシートで構成されていて、通路をはさんで左右に2人掛けが配される、通称「4列シート」です。

リクライニングシートは天龍工業製で、運転席側には11脚、扉側には9脚が並んでいますが、運転席側の前から9脚には補助席を備えています。

乗車定員は50人となります。

扉側最後部には化粧室を設けていますが、活躍末期は使用していませんでした。
化粧室の向かい側は、運転席側の最後部座席となる2人掛けリクライニングシートがあり、その部分の側窓は上窓固定、下窓引き違い窓に見えるものの、下窓は前側が固定で、後ろ側のみがスライドして開閉する構造となっています。

運転席のメータークラスター(計器盤)はシンプルなデザインで、視認性に優れています。
空調関係と車内灯関係のスイッチは運転席脇のスイッチボックスにまとめられています。
変速機は6速MTです。

車内収納スペースとしては、運転席にオーバーヘッドコンソールが備え付けられているほか、前扉直後にキャビネットが設けられています。
また、運転席側、扉側とも座席上に荷棚を装備しています。

感謝とねぎらいのツアーをもって引退

車両称号H658-01415はジェイアールバス関東でたった1台のみのタイプでしたが、他の日産ディーゼル工業製の車両とは運転性能に大差がなかったことから、乗務に際しての教習・習熟について特筆すべき点はないとのことでした。
しかし、エンジンがV型8気筒であるため、パワーがあって運転しやすいという声があったとのことです。

引退直前の2021年8月14日(土)・15日(日)、両日ぞれぞれ日帰りでバス愛好家のために「お疲れ様 そしてありがとう! UD KL-RA552RBN引退ツアー」が開催されました。
ジェイアールバス関東では希少な存在であり、ユニークな外観から多くのファンがいたため、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を行いながら両日とも参加者たちが最後の別れを惜しみました。

また、同社の車両の中でもこれほど多くの支店を転属した経歴を持つ車両は稀(まれ)であったことから、社員の中にも多くのファンがいたそうです。
このツアーには、車両称号H658-01415が無事に引退を迎えられることへの愛好家や利用客に対しての感謝の気持ちと、社員から車両へのねぎらいの気持ちが込められていたとのことでした。

※ 取材協力 : ジェイアールバス関東株式会社
※ 写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 本項に掲載の車両写真は記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。

この記事をシェアしよう!

このエントリーをはてなブックマークに追加
  • FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
    フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。