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沖縄バスを整備する![前編]

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沖縄県那覇(なは)市に本社を構え、沖縄県全域に路線バス網を展開する沖縄バス。
今月は同社で日々の安全運行を支え、常に車両をベストコンディション保つため励んでいる整備部門を前編と後編に分けて紹介します。
前編では車両点検の流れを見ていくことにしましょう。
南国・沖縄ならではの整備のポイントはあるのでしょうか?

沖縄バスの整備の要(かなめ)、旭町(あさひまち)整備工場

2021年11月1日現在、沖縄バスには約250台のバスがあり、約30人の整備士たちが整備にあたっています。
同社の整備工場は、那覇の中心市街にほど近い場所にある旭町整備工場と、名護(なご)市にある名護バスターミナル内の名護整備工場の2カ所ですが、今回の記事は旭町整備工場で取材を行いました。
旭町整備工場では、那覇営業所、糸満(いとまん)出張所、南城出張所、屋慶名(やけな)出張所、読谷(よみたん)出張所に所属する車両の整備を一挙に引き受けています。
なお、旭町整備工場のある場所は車庫機能も兼ね備えており、2018年10月1日に新那覇バスターミナルが開業するまでは暫定的に那覇営業所が置かれていましたが、新那覇バスターミナル開業後は営業所もターミナル内へ移転しました。
また、南城出張所は南城市地域公共交通再編にともない運行を開始したコミュニティバス「南城市Nバス」の拠点ですが、そのことによって2019年9月30日に廃止された親慶原(おやけばる)出張所に替わる新たな出張所となっています。

南国の事業者ならではの整備のポイントは?

それでは、沖縄バスの整備の様子を具体的に見ていくことにしましょう。
定期点検整備は法律で定められた3カ月点検と、1年に1回の車検(自動車検査登録制度)がありますが、沖縄バスではそれらに加えて同社の自主定期点検整備として、15日点検と1カ月点検があります。
同社では各点検整備の実施間隔の英訳頭文字を取り、車検は "Year" の「Y検」、3カ月点検は "Month" の「M検」、15日点検は "Week" の「W検」と呼んでおり、それに加えて「T検」と呼ばれる臨時点検検査もあります。

高温多湿の沖縄の事業者ならではの点検整備のポイントを尋ねてみたところ、2年に1回、下廻りをアンダーコートするとのことでした。
また、ボディには耐久性のあるウレタン塗装を利用しているそうですが、さびの原因につながる塗装の劣化の確認や早期の補修なども南国の事業者ならではの重要なポイントとのことです。

M検(3カ月点検)に密着

これから3カ月の定期法定点検「M検」を受ける車両があるため、その行程を簡単に見ていくことにしましょう。
M検のためわざわざ旭町整備工場までやって来たのは那覇市外の出張所に所属する高速バスです。

地平での確認事項を済ませた後、リフトジャッキで車体をアップし、トランスミッションへのオイル注入作業など下廻りの点検整備が次々に行われます。

ステアリングホイール(ハンドル)と前輪の切れ角の合いが適正か「ステアリングロッド」と呼ばれる装備なども入念な点検が行われます。

エンジンオイルをろ過して不純物を取り除ききれいにする部品であるエンジンオイルエレメントも交換します。

前輪付近にある走行用エンジンのオイルをためておくオイルパンから古いオイルをトレイへ抜き出して交換するほか、冷房用サブエンジンも古いオイルをトレイへ抜き出して交換します。

タイヤホイールのボルトに緩みがないかを確認し、所定の力で締めることのできるトルクレンチを使って増し締めも行います。

車内装備も確認事項にもとづきチェックし、座席上の読書灯の電球の交換など小さな項目も抜かりなく整備点検していきます。

全ての確認項目の点検結果を整備工程表に書き込み、大がかりな整備が必要な箇所が見つかった場合、早速当該箇所の整備を開始します。
今回は走行用エンジンの一部分を集中的に整備しました。

40年前の「730(ナナサンマル)車」も整備!

戦後、沖縄県は長きにわたってアメリカ合衆国の統治下に置かれていたことから自動車は右側通行でした。
1972年5月15日に本土に復帰した後もしばらくの間、自動車の右側通行が続いていましたが、1978年7月30日に本土と同じように左側通行へと一気に切り替わりました。
この自動車の通行方式の切り替え事業は実施された日付けから、通称「730(ナナサンマル)」と呼ばれ、バスも左側通行への切り替えに合わせ、左側面に扉を持つ右ハンドル車である「730車」が大量に導入されました。

沖縄バスには当時導入された「730車」の1978年式の三菱ふそうMP117Kが記念に1台動態保存され、路線バスとして運行に就いています。
この「730車」の整備点検も同社ならではの特徴の一つです。
今から43年前の車両となるため、グリスをさす箇所が多いほか、現在の車両とは異なり、バッテリー点検・交換を車内側から行ったり、ブレーキなどに使う圧縮空気をろ過するエアードライヤーの水抜きを手作業で行ったりするなど、年式なりに手のかかる部分はあるとのことでした。
しかし、整備・点検は現在の他の車両と同じ工程で行われ、特に専任担当もいないとのことで、同社の整備・点検のきめ細かさと車両自体のコンディションの良さの好循環が築かれていることがうかがい知れます。
次回の後編では、沖縄バスの整備点検の施設や装置・工具を紹介します。

※取材協力:沖縄バス株式会社
※写真(特記以外):伊藤岳志
※文:バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※本項に掲載の車両写真は記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。
※本記事は2017年3月29日発刊の『バスグラフィック』Vol.30の掲載内容を再編集したものです。

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