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こんなバス知ってる? DMVを体験![後編]

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みなさんはDMVをご存じでしょうか?
DMVとは“Dual Mode Vechicle”(デュアル・モード・ビークル)の略で、道路と鉄道線路の両方を走行可能な新しい形態の交通機関のことです。
全体的な車体のフォルムはバスで、道路走行時は一般的なバスと同じようにタイヤで走行します。
そして、線路走行時は車体前端と後端に備え付けられた鉄道車輪を展開し、車体前方を少し浮かせた状態でレールの上に乗り、レールに接地させた後輪を動力として走行します。
今回は『バスグラフィック』専属契約カメラマンでもある鉄道プロカメラマンの伊藤岳志(いとう・たけし)さんが、日本初のDMV営業運転となる徳島県の阿佐海岸鉄道(あさかいがんてつどう)に乗車してきたことから、体験レポートを前編・後編に分けてお伝えします。
(バスグラフィック編集部)

実はJR北海道が先がけのDMV

日本初のDMVの営業運行を始めた阿佐海岸鉄道ですが、実は同社の独自開発ではありません。
この道路と鉄道の二刀流を最初に考案し、実用に近い形まで開発したのはJR北海道なのです。

2000年代初頭、多くの赤字ローカル線を抱えていたJR北海道は、運行コストと車両コストの低減と、鉄道から離れたエリアへ乗り換えなしで直通できる、過疎地域の利便性向上を目指した新たな交通機関としてDMVを考案します。
開発は2004年から2010年頃まで積極的に行われ、試作車両も3次型まで登場しました。実証実験も行われ、実用化も間近と思われたのですが、2015年に断念してしまいます。

しかし、DMVの将来性に着目していた鉄道会社は多く、阿佐海岸鉄道もそのひとつでした。JR北海道の車両を借り受けて各地で実証実験が実施され、2017年に阿佐海岸鉄道がDMVの導入を決定します。
地平にモードインターチェンジを設けるために、当時JR牟岐(むぎ)線であった阿波海南(あわかいなん)~海部(かいふ)を阿佐海岸鉄道に編入したうえで、阿波海南駅にモードインターチェンジを設置するなど、多くの変遷(へんせん)と工事を経て今日に至っています。

ベースはトヨタのマイクロバス

それでは、現在阿佐海岸鉄道で活躍するDMVの車両について解説していきましょう。
車両形式はDMV93形で、開業2年前の2019年に登場しました。ベース車両はトヨタ自動車のマイクロバスである「コースター」の3代目モデル(XZB70系)です。
JR北海道で実証運行に使用されたのは、当初は日産自動車のマイクロバス「シビリアン」3代目モデルがベースでしたが、実用化目前だった3次型はトヨタ・コースターの2代目モデルがベースで、そのノウハウが大いに活かされていると言えるかもしれません。

外観で特徴的なのがフロント部分の出っ張りです。
まるでボンネットバスのように突き出たフロントオーバーハング部(車体前端から前輪中心までの間の部分)には、レールを走るための鉄道用車輪が収められています。

モードチェンジ時には折りたたんで格納されていた鉄道用車輪が展開して、前輪タイヤも含めた車体前方を持ち上げます。
よって鉄道モード時は、前側は鉄道用車輪のみで走行することになります。

リアオーバーハング部(車体後端から後輪中心までの間の部分)にも鉄道用車輪が収められていますが、後輪タイヤはレールに接地させて駆動輪としています。つまり後部の鉄道用車輪は、車体後方をレールに追随(ついずい)させるためのガイド輪の役目を果たすものとなっています。
また、後輪タイヤには、鉄道モード時のスリップ低減のためにスタッドレスタイヤが使われているのが特徴で、これもJR北海道のノウハウの一つです。
車体外観のキャビン(客室部分)はベース車両から大きく変わったところはありません。

車内は基本的にベース車両のままですが、にぎり棒(手スリ)とメモリーブザー(降車ボタン)、液晶モニター、運賃箱、整理券発券器が追加装備されているのが特徴です。

また、運転席横の助手席スペース付近に、鉄道モード時の保安装置が設置されています。

カラーリングデザインは3色

阿佐海岸鉄道のDMV93形は現在、カラーリングデザインが異なる3両があり、それぞれ愛称が付けられています。
青色の1号車(DMV931)は「未来への波乗り」です。
太平洋の青を基調にして、宍喰(ししくい)駅のマスコット「伊勢ぇび駅長」がサーフィンするイラストをあしらっています。

緑色の2号車(DMV932)は「すだちの風」です。
緑を基調に徳島特産のスダチと県鳥のシラサギのイラストをあしらっています。

赤色の3号車(DMV933)は「阿佐海岸維新」です。
赤を基調に、坂本龍馬と南国土佐の太陽のイラストをあしらっています。
通常は1日に2両が運用されますが、まれに運用途中で車両の差し替えがあるので、運が良ければ3色すべてのDMVを見ることができます。

安全運行のための人材確保と保安装置

道路も鉄道も走れるDMV。みなさんがちょっと気になるのは、運転士が保有する免許ではないでしょうか。
答えは意外と単純で、道路用として中型自動車第二種免許、鉄道用として甲種内燃車運転免許が必要で、阿佐海岸鉄道の運転士はこの両方を取得しています。
2022年12月のDMV運行開始に合わせて、従来から所属する運転士は、マイクロバスを運転するための中型自動車第二種免許を取得。また、元・鉄道運転士や元・バス運転士の新規採用も行っており、元・鉄道運転士は中型自動車第二種免許を、そして元・バス運転士は、JR四国や土佐くろしお鉄道に出向のうえ、甲種内燃車運転免許を取得してもらったとのことです。
このようなことで、阿佐海岸鉄道は実務経験者による効率的な人材確保を行ったうえで、DMVの開業を迎えました。

鉄道モードにおける保安装置は、DMV独自のものを導入しています。従来の鉄道車両では、車輪を通してレールに流れた電気信号を感知する「軌道回路」で車両の現在位置を把握(はあく)し、信号の制御などを行っていました。
一方、DMVの車両ではこのような一般的な鉄道の保安システムではなく、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)や赤外線センサーを使った位置情報により、車両の現在位置把握と信号・踏切制御をおこなうDMV独自の運転保安システムが新たに導入されています。

そして、駅における自動停止装置も採用され、よりいっそうの安全運行を実現しています。
なお、鉄道モードの運転でも、加速はアクセルペダル、制動はブレーキペダルが使われています。

※ 写真・文 : 伊藤岳志

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