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奇跡の復活! 60年前の「ラッシュバス」がよみがえったワケは?[後編]

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旭川電気軌道は北海道旭川市に本社を置き、同市を中心に路線バス網を展開しているほか、貸切バスも運行しています。
同社では2022年10月、約40年前まで活躍していた大型路線バスの三菱ふそうMR430をレストア(大規模な修繕・復元作業)によって復活させ、大きな話題となりました。
三菱ふそうMR430は3軸の大型路線バスですが、大型タンクローリーのように前輪が2軸となっている非常に珍しい車両です。
廃車となってから40年以上、野ざらしに近い状態で、特に他に同型の保存車などはなかったことから、まさに奇跡の復活劇とも言えるでしょう。
今回はこのレトロバス三菱ふそうMR430復活について紹介していますが、後編では復活劇とそのワケの核心にせまります。

2021年6月、突如として運命が変わった!

約40年間、半ば野ざらしのような状態にあった旭川電気軌道の前輪2軸大型バス三菱ふそうMR430ですが、2021年6月、突如としてその運命が変わります。
廃車体の所有者である愛好家が旭川電気軌道を訪れ、当時置いていた場所で保管することが困難となったことから引き取りを同社に持ち掛けたのです。
所有者はMR430に対する思い入れがとても強く、旭川電気軌道もその存在価値については十分理解していたため、2026年に同社が創立100周年を迎えることを見すえ、100周年記念事業としてMR430を復元する企画が立ち上がったのです。

実際に走行可能なフルレストアに予定変更! その費用は?

愛好家から引き取った三菱ふそうMR430は当初、外観だけを復元する予定でした。
約40年前に廃車となった車両でしたが、旭川電気軌道はMR430が貴重な車両であることは分かっており、そのポテンシャルが相当高いものだと認識していました。
そこで「どの段階まで復元するのか?」「復元に際しての費用はどのくらいかかるのか?」などと社内でいろいろと討議することになり、その結果、「せっかく復元作業を行うなら走らせたい」という声が上がったためフルレストア(完全修繕)を行うことになりました。

約40年間、動くことのなかった車両を走れるまでに復元するには、やはり相当な費用がかかります。
このプロジェクトに深くかかわっている同社運輸部に尋ねたところ、今回の復元作業では、観光庁が行っている既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業の交通連携型による補助を活用したうえで、1960年代から現代までの車両の進化を示すバリアフリー教育の素材、愛好家向けイベントへの活用などの計画を立て、社内起案を通したとのことでした。

ただし、補助事業の条件として、復元する三菱ふそうMR430が車検を取得し、走行できる状態にまで持っていかないといけないというものがあり、40年以上も放置されていた車両を、はたして走れるまでにレストアすることができるのかどうか、未知の境遇だったそうです。
なお、このプロジェクトについては、旭川電気軌道と関連整備会社である旭川オートサービスで行っており、特にメーカーが絡むことはなかったそうです。
報道資料によると費用は約2,800万円を要したとのことでした。

レッカーの後、いよいよ始まったレストア作業

実質40年以上放置状態で、車体はサビやへこみだらけ、荒廃が進んでいた旭川電気軌道の三菱ふそうMR430ですが、レストアが決定すると、作業前に置かれていた場所から整備工場まで、大型レッカー車によるレッカー移動が行われました。
指定のレッカー業者に依頼しましたが、長年動かず鎮座した状態であったため、レッカーで車体前方を持ち上げた際、後輪に過重がかかることを考慮し、タイヤのハブボルト破損やフレーム変形などが発生しないよう慎重に作業が行われました。
幸い、移動経路は直線道路であったため右左折の心配は特になかったとのことでした。

整備工場でのレストアで最初に始めた作業は、MR430を整備工場内で移動できるようにタイヤのハブボルト交換や車軸のグリースアップです。
タイヤは事前に用意した同サイズのものに交換しました。
実はこの時はまだ内外装の見える部分の修復と構内移動のみを想定していたため、1年以内での完成を予定していました。

ところが、作業が始まってからプロジェクトの計画変更で車検取得が必要となり、公道を走行できる状態にまでフルレストアしなければならなくなったため、当初の作業内容とスケジュールを大幅に変更しました。
腐食したフレームや蓋板(ふたいた:外板パネル)の製作を行ったほか、車検証記載どおりの型式のエンジンを使用する必要があったので、エンジンなどの修復に必要な部品の調達を始めました。
フルレストアが決定したことで、難しい課題が大幅に増えたことも事実だったそうです。

修復と新調を組み合わせたフルレストア作業の内容とは?

レストア作業では見た目で使えそうな部品とそうでない部品を選別し、全ての蓋板と内装部品を外して高圧洗浄を行いました。
車体を構成するフレームはさび付いていたため、いったん切り出して採寸したうえで新たに作り直しました。
ほぼ全てを作り直しているので新車を作っているようだったとのことでした。また、窓枠部分以外の側面の蓋板は新たに製作しました。
ただし、屋根と前扉、中扉はへこみなどを修復のうえオリジナル状態のものを使用しているとのことです。

フロント部分ははがした外板をベースにして整形、各ガラスパーツは特注で製作しているものもあるとのことですが、製作できなかったものは状態の良い再生品を利用しています。
いったん取り外された蓋板は3,000本以上のリベット(びょう)で打ち直しています。
各部品については現在、製造・流通している物がほとんどないため、整備工場の取引先企業などに試行錯誤しながら新たに作ってもらった物もあるとのことです。

完成に至るまでのレストアの大まかな工程は以下のとおりです。
■屋根以外の蓋板を全てはがし、フレーム状態にして高圧洗浄
■腐食した蓋板やフレームをはがし、形どおりに製作
■内装をはがし、同じ形ものを製作
■エンジン、トランスミッションを下ろして異常箇所を点検した後、始動確認
■はがしたフレームを新たに組み、製作した蓋板をリベット留め
■エンジン、トランスミッションを車体に取り付け始動確認
■車体の全塗装
■内装の取り付け
■走行確認後、車検取得

苦労したパワステポンプ調達とそのままのエンジン

今回のレストアでは長年の風雪でいたみにいたんだ車体を再生するのがいかに大変なことかが分かりますが、車検を取得して走行させるため、それ以上に重要なことが走行にかかわる機構やエンジンの再生で、そこが大きなポイントになります。

旭川電気軌道の三菱ふそうMR430には、当時の大型路線バスではまだ珍しかったと思われるステアリングホイール(ハンドル)を回す力をアシストするパワーステアリングを装備しています。このパワーステアリングを正常に動作させるためのポンプが欠品していたため、全国各地のさまざまなネットワークを駆使し、情報を集めました。
しかし、ポンプはなかなか見付からず、これはもう無理かとあきらめていたところ、道東にMR430と同世代の大型バス三菱ふそうMR450の廃車体があり、そこにポンプが付いていれば流用できるのではないかという情報を得て担当者が現地におもむきました。
その結果、廃車体にポンプが残っており、所有者の承諾も無事に得て調達することができ、MR430に取り付けられたのです。
基本的にはもとあった部品はいったん全て取り外したうえで、洗浄や修理を行ったり、新たに作り直したり、他の廃車体から調達したりして、1つ取り付けては正常に稼働するか確認し、うまくいかなかった場合は調整などを行いまた取り付けて……の地道な作業が続いたそうです。

エンジンについても当然、現在は当時の部品がなく、特にガスケット(パッキン)の入手が不可能であるため、オーバーホールで内部に大きく手を加えることはしておらす、基本的には洗浄と部品の塗装で済ませましたが、始動に成功し、異音などもありませんでした。
燃料供給系の配管などは腐食していたため、可能な限り新しい部品に置き換えています。

車内も当時をできるだけ再現し、ついにレストア完了!

外観やエンジンがよみがえってきた中で、車内も当時の姿へ戻すべくレストアが進みました。
座席はラッシュ対策で「三方(さんぽう)シート」と呼ばれるロングシートのみで構成されたレイアウトでしたが、台座が木枠(きわく)であったため、それを再生することに苦労したとのことです。

また、つり革は現在の路線バスで使用されているものよりも小ぶりで、すでに製造・販売を行っていなかったことから、3Dプリンタを使って製作。レプリカではなく実際に使用するため、安全面を考慮して耐荷重試験も行っています。
メモリーブザー(降車ボタン)については、作り直すことができないため、MR430と同世代の車両の廃車体から所有者の承諾を得て調達。ミラーなどの部品も、情報を頼りに熊の出そうな森に眠っている廃車体を探し出し、所有者に承諾を得たうえで調達しているとのことで、担当者が「これがなければ車検が取れない」という思いで何度もチャレンジし、ようやく発見した部品たちの結晶であるとも言えるでしょう。

このようにして、苦労続きのレストアにはのべ1,000人以上がかかわり、15社以上の企業も協力を行って、企画から1年以上の歳月を経て完了。
旭川電気軌道の三菱ふそうMR430は廃車から約44年の時を超え、令和の時代に完全復活したのです。
まるで当時からタイムスリップしてきたかのようなみずみずしい姿は、くち果てようとしていた廃車体だったことがにわかに信じられないほどです。
見事な復活劇をとげたMR430ですが、いったいどのような車両なのでしょうか。
次回で内外装をクローズアップしてみることにします。

※協力 : 旭川電気軌道株式会社
※写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)

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