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こんなバス知ってる? 十勝バスの「マルシェバス」[前編]

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これまで4回にわたり旭川電気軌道でよみがえった60年前の「ラッシュバス」、三菱ふそうMR430をテーマにしてきましたが、再び北海道のバス事業者の話題を取り上げます。
今回紹介するのは、十勝バスの「マルシェバス」です。
十勝バスは北海道帯広市を拠点に路線バス網を展開し、都市間高速バスや帯広空港への空港連絡バス、貸切バスを運行している事業者です。
そんな同社に約1年前、カラフルなデザインに彩られたユニークなバスが登場しました。
それが「マルシェバス」です。一体どのようなバスなのか、前編と後編の2回に分け紹介するので、見ていくことにしましょう!  

なぜ「マルシェバス」が生まれたのか?

十勝バスには、戸別訪問によって交通の原理原則である「不安解消」「目的地提案」を見出したことで、地方のバス事業者としては初めて利用者を増やしたと言われるような積極的な経営方針があります。
この原理原則をあらゆるものに応用させて、様々なイノベーションを起こそうとしている中の一つに「マルシェバス」への取り組みがあります。
「マルシェバス」は、遊休状態で程度の良い状態の大型路線バス日野ブルーリボンU-HU2MMA、1992年式の車内後方を改造し、マルシェ(フランス語で「市場」の意味)機能を付与した車両です。
路線バスとして運行しながらも、始発出発前や終点到着後に移動販売店舗として運用することが考えられたものです。
つまり、路線バスと移動販売車の機能をあわせ持ったバスということになります。

この車両が生まれた大きな理由の一つが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。通勤・通学をはじめとする移動需要が大幅に減り、本業の路線バス事業が深刻なダメージを受けたため、「コロナ禍(か)を経て過去の延長線上に解決策はなく、新たな理想の一点に向かっていかなければならない」と考え、都市政策と交通政策のコラボレーションを先んじて進め、コミュニティの創造にチャレンジする「大空ミクロ戦略」を打ち立てました。そこで新たな収益源確保のための新規事業などの検討を行いました。
その一環として、得意の「移動」を軸に、バスの車内空間を利用して乗客に出向くサービスを発案。
さらに、日中の時間帯の路線バスの空席状況を鑑(かんが)み、車両後方を改造して、路線バスが終点で移動販売車に変わるというサービスを導き出しました。
そこには、運賃収入以外の収入を得ることで、路線の不採算を軽減し、路線全体を維持して地域の足を守るという大きな目的があるとのことです。

移動販売車と路線バスの顔を使い分ける実証実験

「マルシェバス」は、2021年12月5日から2022年2月27日までの間、実際に十勝バスが路線バス網を展開する大空エリアで実証実験を行いました。
まず、帯広駅北多目的広場にて9:30~11:00に停車し、店舗販売。店舗としての営業をいったん終えた後、車内後方店舗部分をしめ切って路線バスとして、帯広駅ターミナル~大空10丁目で乗客を乗降させながら運行。
終点から回送扱いで移動し、JA帯広かわにし大空支店駐車場で12:00~14:00に停車し、店舗販売。店舗としての営業を再び終えた後、車内後方店舗部分をしめ切って路線バスとして大空10丁目~帯広駅ターミナルを往復。
再度、回送扱いで移動し、JA帯広かわにし大空支店駐車場で16:15~18:15に停車し、店舗販売。
そのようなルートとスケジュールで路線バスと移動販売車の顔を使い分けながら実証実験が行われました。
実証実験は既存ダイヤへ「マルシェバス」の運行を組み込んだわけではなく、新設したダイヤで運行したため、特に乗客の混雑はなかったとのことでした。

好評につき、再びチャンスをうかがう

帯広駅ターミナル~大空10丁目という区間が「マルシェバス」実証実験で選ばれたのは、十勝バスのメイン路線であることから。
起点の帯広駅前付近は街中および観光客をターゲットに実証ができ、終点の大空10丁目は中心街から離れた独立した土地であるものの、高齢化率の高い大空団地があり、「マルシェバス」の停車可能な土地がJA帯広かわにしにあったということがポイントになりました。
販売した商品は地元資本のデパート「藤丸(ふじまる)」が扱うもので、近くのスーパーや商店にはない品ぞろえが魅力ということもあり、実証実験後の利用者からはおおむね好評でした。

写真は実証実験時の車内マルシェ部分の様子です。
実証実験は、十勝バスのノウハウとコンテンツを最大限に活かし、そこに人材、物資、資金を集中投下することで、大空エリアを代表とする同社の路線沿線の住環境を充実し、移住者を増やし、さらに商業事業者の誘導と大企業の投資を呼び込んで地域を盛り上げる「大空ローカルハブの共創によるリ・デザイン」のビジョンを描いたうえで行われました。
その結果、まずは高齢化が進んでいる地域では一定のニーズがあり、バス路線の維持のための運賃収入以外の収益確保ができそうだとの手ごたえを感じたとのことでした。
ただ、協業を行った藤丸が経営不振に陥(おちい)り、2023年1月末で閉店することが発表されこともあり、実証実験後は1年近く稼働していません。
しかし、2022年12月、藤丸の再建に向け、新会社を設立し、関係者が再建の決意を示す報道があるなど、「マルシェバス」もいまは次なるチャンスをうかがっています。

カラフルでポップな外観の「マルシェバス」

それでは、「マルシェバス」の外観を見てみましょう。
1992年2月10日登録のベテラン選手ですが、マルシェバス化改造によって十勝らしさをモチーフに「マルシェバス見付けた!」と思わせるコンセプトで、カラフルでポップな感覚のラッピングが施されています。
一目で一般の路線バスとは違うということが分かります。
ラッピングの施工は地元の中島自工が行いました。
車検証上の全長は10.68m、全幅は2.49m、全高は3.15mで、登録ナンバーは特殊用途自動車の8ナンバーではなく、一般的な路線バスと同様、普通乗合自動車の2ナンバー登録で「帯広22う・191」となっています。

外観の改造は最小限に最大の効果をねらう

車体外観については大掛かりな改造を施すことはなく、ラッピングを中心にして必要最小限、手を加えることで、路線バスから「マルシェバス」への転身の効果を最大限にねらっていることが分かります。
前面はクラシックカーのフロントグリルをイメージした装飾パネルを貼り付け、路線バス時代とは表情を変えています。

一部の側窓の上部には青と白で店先のテントの端をイメージしたデザインが施されており、「マルシェバス」の雰囲気を盛り立てています。
デザインは窓ガラス部分にもかかっていますが、カッティングシートで表現されているようです。

左側面最後部にはよく店頭で見かける黒板ポップとテントのデザインが施されていますが、停車して店舗営業する際は実際にテントと黒板ポップを取り付けることができます。
ここに本日のおすすめ商品などを記載します。

エンジンは路線バス時代とは特に変わらず、総排気量9,880cc、最高出力230psの6気筒ディーゼルエンジンM10U型を最後部に搭載しています。
後編では「マルシェバス」の気になる車内にいよいよ入ってみます。

※協力 : 十勝バス株式会社
※写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※本項で公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望を事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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