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走り始めた川崎鶴見臨港バスの“KAWASAKI BRT” [後編]

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2019年5月27日に国産ハイブリッド連節バスの製造・販売が発表されてから、2023年の今年で約4年。
これまで連節バスとは無縁だったバス事業者が相次いで連節バスを導入しています。
連節バスは2連以上の車体で構成される長大バスですが、わが国で近年導入されているものは、BRT ( Bus Rapid Transit :バス高速輸送システム)と呼ばれる公共車両優先システム、バスレーンなどと組み合わせ、速達性・定時性の確保や輸送能力の拡大を図った新たなバスの輸送形態として位置付けられている事例が多くあります。

おもに神奈川県川崎市と横浜市に路線バス網を持つ川崎鶴見臨港バスの国産ハイブリッド連節バスもそのうちの1つです。
2023年3月1日より川崎臨海部に展開する路線で“KAWASAKI BRT”と名付けられた連節バスの運行を開始しました。
後編記事では車内の様子と、“KAWASAKI BRT”運行にあたって『バスグラフィック』編集部が行った川崎鶴見臨港バスの平位 武(ひらい・たけし)取締役社長への質問に対するコメントを紹介します。

前車体(まえしゃたい)の車内の様子

それでは、川崎鶴見臨港バスに導入された日野ブルーリボン ハイブリッド連節バスKX525Z1の車内を見ていくことにしましょう。
ますは前車体からです。前方から後車体後方を眺めると、後車体の後扉付近まで長いノンステップエリアとなっています。

座席は基本的に前向き座席で構成され、タイヤハウス(タイヤの収納部分)上にあるものは一部が後ろ向き座席となっており、横向き座席はありません。
運転席側の前輪タイヤハウス直後にある4つの1人掛け座席ははね上げ式となっており、はね上げると2台分の車イススペースとなります。

後車体(うしろしゃたい)の車内の様子

つぎに後車体です。
前方から後車体後方を眺めると、後扉の直後から段上げ構造となっています。
運転席側の座席は全て2人掛けの前向き座席となっていますが、カタログ仕様では前から2席が1人掛けの前向き座席となります。
これら2席は、事業者の選択よって2人掛けか1人掛けかの違いが見られる部分です。
また、営業運行は前乗り前払いではあるものの、起点の「川崎駅前」バス停では後扉からも乗車を可能にするため、後扉の仕切りにICカードリーダーを取り付けています。

最後部座席は扉側に機器箱があることから3人掛けです。
最後部座席直前の座席とその手前の座席は向かい合わせの関係となっています。

運転席の特徴は?

再び前車体に戻って運転席を見てみることにしましょう。
運転席に車内外を確認するためのモニターが複数備え付けられているところが、一般的な大型路線バスの運転席との大きな違いです。
メータークラスター(計器盤)左側に系統設定器のボタンがあり、その隣には車イススペース専用のものを含めて次停車表示灯が2つあります。
変速機は7速AMT(Automated Manual Transmission:自動変速マニュアルトランスミッション)です。
連節バスは通常では前車体と後車体を切り離せないことからトレーラーではありません。
よって、けん引自動車には当てはまらないため、各事業者によって規定は異なりますが、基本的には大型自動車第二種免許で運転できます。

運転席脇のスイッチボックスには EDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)の非常ボタンを備え付けています。
運転者の体調の急変などで異常が見られた場合、EDSSの非常ボタンを押すと軽微制動が始まり、車内外に音と光で異常を知らせながら停止制動がかかって停車するシステムです。
運転席にある非常ボタンは誤って押した場合の解除機能を備えています。

運転席直後の仕切りにも客席用のEDSSの非常ボタンを備え付けています。
EDSSは全ての日野ブルーリボン ハイブリッド連節バスKX525Z1に標準で設けている安全装備です。

川崎鶴見臨港バスならではの仕様は?

日野ブルーリボン ハイブリッド連節バスKX525Z1は、すでに各バス事業者への導入例がありますが、基本的には側窓の窓割や車内の座席レイアウトなどに事業者ごとの大きな違いはありません。
ただし、床上張りや座席モケットのデザイン、デジタルサイネージモニターの有無といった細部では川崎鶴見臨港バスならではの仕様があります。
木目調の床上張り、寒色系でまとめたシームレスなデザインの座席モケットは特注仕様とのことです。

また、次停名表示器のモニターとは別にデジタルサイネージのモニターを別途備え付けていることも川崎鶴見臨港バスの特徴です。
このモニターは乗降の仕方や“KAWASAKI BRT”の紹介、目的地のバス停への到着予測時間案内などを表示します。
前車体では運転席直後の仕切りに取り付けています。

後車体の最前部運転席側の上方にもデジタルサイネージのモニターを取り付けています。
なお、モニターの近くには後車体の客席用のEDSS非常ボタンと、緊急時に乗務員へ通話することができるインターホンを備えていますが、これらは標準的な装備となります。

平位 武 取締役社長に聞く連節バス導入と将来の展望

さて、このたびの“KAWASAKI BRT”運行にあたり、『バスグラフィック』編集部が川崎鶴見臨港バスの平位 武 取締役社長へ小インタビューを行い、今回の連節バス導入と将来の展望について聞き、本記事のしめくくりとします。

編集部 : 今回の連節バス導入メリットと、川崎鶴見臨港バスでの連節バスの位置付けを教えて下さい。


平位社長 : 弊社ならでは、という点では、工業地帯への輸送を主目的に連節バスを導入したのは弊社が初めてかもしれません。
そのためダイヤも早朝からの運行となっております。
川崎市臨海部、特に京急大師線や JR 鶴見線からのアクセスが難しい水江町エリアはバスをご利用される方が多く、ラッシュ時にはバス車内やバス待機列による駅前広場の混雑などが課題となっています。
連節バスおよび特快運転の導入により、駅から離れた工業地帯への大量かつ速達輸送を実現できるのは大きなメリットだととらえております。
また、環境負荷の少ないハイブリッド連節バスによる運行により、利用者1人あたりの 二酸化炭素排出量の削減が見込まれ、カーボンニュートラルの観点でもメリットがございます。
臨港バスの新たなフラッグシップとして、これらのメリットを活かしつつ、今後も連節バスには大いに活躍してほしいと考えております。

編集部 : “KAWASAKI BRT”運行開始当初のインターネットニュースの報道によると、水江町ルート支線用への車両の増備や無人運転なども考えられているとのことですが、今の時点で社長が考えられている川崎鶴見臨港バスでの連節バスを使用した運行システムの完成形(理想)はどのようなものでしょうか。また、いつ頃までに実現したいとお考えでしょうか。


平位社長 : BRT導入は多くのお客様にご利用いただいております川崎駅から水江町エリアへのバスの混雑緩和やBRT システムによる速達性向上を目的として行いました。
川崎駅~水江町エリアのさらなるバス輸送の利便性向上により、今後もますます発展が見込まれる水江町エリアの発展の一翼となれることを目指して、今後も“KAWASAKI BRT”事業を進めていきたいと思います。
なお、無人運転についてですが、事故削減や運転者不足問題への対応策として期待されているものの、導入にはクリアしなければならない課題もございます。
特に、運転士不足への対応策としては、いずれはこういった技術を導入していかなければならないと考えております。

※ 協力 : 川崎鶴見臨港バス株式会社
※ 写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望を事業者へ行わないようお願い申し上げます。
※ “KAWASAKI BRT”の運行状況や運賃・時刻表などにつきましては、川崎鶴見臨港バスの公式ホームページをご確認下さい。
https://www.rinkobus.co.jp/route/kawasakibrt.html

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