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まさに温故知新、西鉄バスの「レトロフィット電気バス」 [後編]

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2020年代に入り、環境負荷の低減やカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、各地のバス事業者で電気バスの導入が活発化してきています。
ただ、そのほとんどが中国のメーカーが製造するもので、国内で製造されるものはあまりありません。
そのような中、福岡県を中心に路線網を展開する西日本鉄道(西鉄)では、国内の工場で製造する「レトロフィット電気バス」の導入が本格的に始まりました。
今回は電気バス導入に積極的な西鉄グループを取り上げており、前編で西鉄バス北九州の「レトロフィット電気バス」を紹介しましたが、後編では「レトロフィット電気バス」登場前の西鉄の電気バスを紹介します。

ディーゼルエンジン搭載バスの改造で生まれた電気バス

2022年6月から営業運行を開始した西鉄バス北九州小倉(こくら)自動車営業所の「レトロフィット電気バス」第1号車。
その運行の約2年前となる2020年2月に、従来のディーゼルエンジン搭載の大型ノンステップ路線バスを電気バスに改造した車両が、西鉄のアイランドシティ自動車営業所へ導入され、すでに営業運行を開始していたのです。
西鉄では「レトロフィット電気バス」登場の前から、それまで使用してきたディーゼルエンジン搭載のバスを電気バスとしてよみがえらせる取り組みを始めていたことになります。

この車両は、2013年式のいすゞエルガQPG-LV234N3改で、西鉄の香椎浜(かしいはま)自動車営業所で活躍していましたが、登録ナンバー「福岡200か2621」と社番「ア2744」はそのままに、2019から20年かけ神奈川県厚木市にある電気自動車や水素自動車などへの改造を行うメーカー・フラットフィールドで電気バス化改造を行い、2020年2月から営業運行をしています。
所属はアイランドシティ自動車営業所で、アイランドシティ照葉(てりは)~千早(ちはや)駅を運行するアイランド-千早線で使用しています。朝のラッシュ時に1日約30km走行し、営業運行終了後に充電します。

目をひく大胆(だいたん)なカラーリングデザイン

それでは、「レトロフィット電気バス」より前に電気バスへと改造された西鉄のアイランドシティ自動車営業所の車両を詳しく見ていくことにしましょう。
何と言っても目をひくのが黒と白の明快な塗り分けをベースにして、金色のデザインやロゴを大胆にあしらったカラーリングデザインです。
福岡市にある広告・看板を手掛ける企業SEEDが制作しました。

デザインコンセプトは“ECO”。
デザインやロゴに使用されている金色は、電気のイメージと電気バスのパワフルさを表しています。
車体側面に大きく描かれた“ECO”のロゴで、側窓下にある“E”は電気バスが力強く走る様子をイメージ。
車体後方にある“C”と“O”は電池の蓄電量を表示するモニターをイメージしています。
また、車体中ほどにはハニカム状のデザインが施されていますが、クリーンエネルギーや非常時電源など電気バスの持つ可能性が効率的かつ安定的に運用できることを表現しています。

外観仕様は一般的なディーゼルエンジン搭載のバスと特に変わりはなく、前中扉構造で前扉が包み込むように開閉するグライドスライドドア、中扉が引戸となる大型ノンステップ路線バスです。
側窓は上段引き違い・下段固定の逆T窓で、中扉戸袋窓手前に行先表示器窓があります。
全長10.92m、全幅2.49m、全高2.96m、ホイールベース(前後の軸距)5.3mで、乗車定員は71人となります。

もともとの構造を活かして電気バス化!

ディーゼルエンジン搭載のバスから電気バスへの改造により、エンジンや排気装置などを取り除いた後、新たにバッテリーや駆動用のモーターなどを搭載しています。
左後輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)横には、ディーゼルエンジン搭載のバス時代は排出ガス浄化装置に使用するAdBlue(アドブルー:高品位尿素水)の注入口がありましたが、電気バスへの改造に伴いそれをそのまま活かし、充電器からケーブルを接続して充電する充電口として利用しています。

出力50kwの充電器の場合、フル充電に至るまでは2時間程度かかり、フル充電での走行距離は暖房使用の満員乗車で約40kmです。
後面に目を転じると、点検ぶたを開けたエンジンルーム内は、電気バス化によりそれまでのディーゼルエンジンからバッテリーへと変わっています。
モーターの最高出力は110kWです。

電気バスならではの車内ポイントは?

つづいて、車内を見ていくことにしましょう。前編で紹介した「レトロフィット電気バス」と同様、左右前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)付近はバッテリーパックのカバーを設けていますが、それ以外は一般的な大型ノンステップ路線バスと大きな差異はありません。
座席は中扉直前が横向き座席であることを除いて全て前向き座席で構成されています。

前中扉間はノンステップエリアで、中扉以降は段上げとなります。
段上げエリアは左右とも、最後部座席を除いて2人掛けとなっています。
最後部座席後ろはリアウィンドウを埋め尽くすほどの大きさのバッテリーのカバーが鎮座していることが特徴です。

車内ノンステップエリアの運転席側にははね上げ式の1人掛け前向き座席があり、折りたたむと車イススペースとなります。
バッテリーパックのカバーは左右前輪のタイヤハウスに完全に覆いかぶさるような形で設けています。
側窓下辺よりも高さがあることが分かり、運転席側のものの上面にはパンフレット差しを取り付けています。
運転席直後の仕切りももともとのものから取り替えており、広告枠の位置が高くなっています。

運転席は基本的にステアリングホイール(ハンドル)やメーターパネルなどに大きな変更はありません。
ステアリングホイール左側に備え付けてあるモニターは系統設定器や後方確認用バックアイカメラのものです。

変速機はそれまでのMT(Manual Transmission:手動変速機)から、電気バス化にともないAT(Automatic Transmission:自動変速機)タイプの操作ボタンに変更していることが特徴で、メータークラスター(計器盤)右側には電池残量などを示すモニターを取り付けています。

ステアリングホイールの根本部分を見てみると、ディーゼルエンジン搭載時にステアリングホイール根本の左側にあったMTのクラッチペダルが姿を消し、右側のブレーキペダルとアクセルペダルのみが残されていることが分かります。

もう1台ある電気バス

アイランドシティ自動車営業所には、実はもう1台、ディーゼルエンジン搭載の大型ノンステップ路線バスを改造した電気バスが所属しています。
この車両は、2018年製のいすゞエルガ2KG-LV290N2改で、登録ナンバーは「福岡200か4540」、社番は「ア1361」です。
住友商事の車両とのことで、ジェイ・バス宇都宮工場で2018年に完成後すぐにフラットフィールドで電気バス化改造を行い、2019年に約1年間、国際興業で営業運行を行った後、2021年に再登録し、西鉄で営業運行を始めた車両です。

出力50kwの充電器の場合、フル充電に至るまでは2時間程度かかり、フル充電での走行距離は暖房使用の満員乗車で約30km。
モーターの最高出力は110kWです。
全長10.43m、全幅2.48m、全高3.04m、ホイールベース(前後の軸距)5.3mで、乗車定員は76人となります。

車内は左右前輪タイヤハウス付近にバッテリーパックのカバーを設けている以外は一般的な大型ノンステップ路線バスと同じで、座席は全て前向き座席で構成されています。

この車両の運転席も基本的にステアリングホイールやメーターパネルなどの大きな変更はありません。
変速機はAMT(Automated Manual Transmission:自動変速マニュアルトランスミッション)となります。

※ 協力 : 西日本鉄道株式会社
※ 写真 : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望を事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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