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安全運転の要(かなめ) 都営バスの新型「バス運転訓練車」を徹底分析する! [後編]

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バス事業者にとって安全運転は肝心要(かんじんかなめ)。
事業者も乗務員もより安全・安心なバスの運行に、日々真剣に取り組んでいます。
そんな安全運行の現場を支えるものの一つに訓練車や教習車といった、乗務員の訓練や教習を行う車両があり、2010年代に各事業者で相次いで導入が行われました。
東京都交通局が運行する都営バスでも、乗務員の運転技術や安全意識向上などのために2009年度から「バス運転訓練車」を導入し、使用してきました。
そして、2022年10月25日登録で新たな「バス運転訓練車」を導入し、2023年3月にそれまで使用していた「バス運転訓練車」を置き換え、使用を開始しました。
今回は都営バスの安全運行をになう新型「バス運転訓練車」を、『バスグラフィック』イメージガールが徹底分析しますが、後編記事では車内のヒミツにせまります。

新型「バス運転訓練車」の運転席は?

前編記事では都営バスの新型「バス運転訓練車」の車外装備を紹介しましたが、後編では車内装備についていろいろと見ていくことにしましょう。
まずはまさに研修の現場となる運転席から。
車外では路線バスとは異なり「バス運転訓練車」ならではの各種装備が見られましたが、意外にも車内運転席のステアリングホイール(ハンドル)廻りはシンプルで、「バス運転訓練車」にしかないような目立った装備は見当たりません。
逆に、路線バスにはある行先表示器を操作する系統設定器や運賃収受を行う運賃箱といった装備はありません。
そのようなことから、運転操作の基本を乗務員にいま一度認識してもらうことに徹している「バス運転訓練車」の存在意義が分かります。

フロントウィンドウと右側面の引き違い窓の間のコーナー部上方にカメラがあります。
これは研修を受ける乗務員の運転操作や顔の動きなどを撮影して、車内後方にある指導乗務員席のモニターに映し出し、記録するためのカメラです。

同様に、研修を受ける乗務員の運転操作や顔の動きなどを撮影するカメラが前扉上部にもあります。
これらのカメラによって、研修を受けている乗務員の運転傾向やクセを客観的に認識させ、改善させる効果が期待できます。

実際の運転訓練で使用するアイマークカメラを『バスグラフィック』イメージガールが装着してみました。
研修を受けている乗務員が訓練運転中にどこを見ているのかを補足(ほそく)するためのカメラで、運転中の視点や各ミラー確認の有無などを指導乗務員席のモニターに映し出します。
従来は帽子(ぼうし)に機器を装着したタイプでしたが、都営バスの新型「バス運転訓練車」のものは、スマートな眼鏡(めがね)型となっています。

車内前方の特徴は?

都営バスの新型「バス運転訓練車」の車内前方から後方への眺め。
同型の路線バスと同じように、前中扉間はノンステップエリアで、中扉以降が段上げエリアとなっていますが、ノンステップエリアは一般的な路線バスの車内と大きく異なります。
ノンステップエリアにおいて路線バスと同じ座席は、扉側にある最前部の座席のみで、ほとんどの座席を撤去していることが分かります。

前扉直後の座席は左前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)の上に設けられていますが、前扉との間の仕切りには折りたたみ式テーブルを備え付けており、他に研修を受けている乗務員や指導乗務員がメモや記録を取る時に使用します。
運転席直後の仕切りにはEDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)の非常ボタンがあることは、路線バスと同じです。
EDSSは乗務員の体調の急変などで異常が見られた場合、非常ボタンを押すと軽微制動が始まり、車内外に音と光で異常を知らせながら停止制動がかかって停車するシステムです。
運転席にも非常ボタンがあります。

右前輪タイヤハウス上に座席はなく、機器箱とパソコンなどが置けるテーブル状の台を設けています。
パソコンは研修時にさまざまな機器で測定した映像や音声、データなどを表示します。
ノンステップエリアの運転席側は右前輪タイヤハウス以降も座席を設けていません。

車内中ほどにロッカーのような大きな機器箱を設けていますが、これは研修時の走行データのほか、乗務員の動作や視線の動きなどを記録・分析する運転データ集積システムで、「バス運転訓練車」の肝(きも)となる部分です。
視点計測機能を中心に安全運転の状況を計測・測定するとともに映像、音声、数値を合わせて収録しています。
運転データ集積システムとはじめとする各種計測・測定機器類は共和電業が製作しています。

扉側の左前輪タイヤハウス直後には備え付けのテーブルと指導乗務員席があります。
テーブルには各種計測・機器類の操作スイッチやパソコンがあり、指導乗務員が研修を受ける乗務員にさまざまな項目の訓練と評価を行います。
なお、指導乗務員席は運転席と同じ仕様のものとなっています。

車内後方の特徴は?

「バス運転訓練車」として大改造した車内前方とは異なり、中扉以降の段上げエリアとなる車内後方は一見すると同型の路線バスのように座席が並んでいます。
座席のモケットは紺(こん)色をベースにして、さまざまなポージングの都営バスマスコットキャラクター「みんくる」がちりばめられたデザインであることも路線バスとは変わりません。
なお、運転席側の段上げエリア直前は、同型の路線バスでももともと2席分を設けておらず、車イスなどの乗車スペースにもできるフリースペースとなっていますが、撮影時には可搬(かはん)型の折りたたみイスが置かれていました。

前編記事でも紹介したように、段上げエリアとノンステップエリアの境(さかい)にある運転席側の仕切りには大型モニターを備え付けています。
車外上部四方のカメラで撮影した映像を合成して車両の状況を示す「3Dサラウンドマルチビュー」の画面などを映し出し、研修で大いに活用します。

段上げエリアとノンステップエリアの境の扉側仕切りにも折りたたみ式テーブルを備え付けており、他に研修を受けている乗務員や指導乗務員がメモや記録を取る時に使用します。

新型「バス運転訓練車」の車内後方から前方への眺め。
段上げエリアは座席が並んでおり、同型の路線バスと同じようですが、こうして見ると実は路線バスとは座席レイアウトが異なっていることが分かります。
最後部座席手前まで、扉側は路線バスでは2人掛けの前向き座席となることに対し、新型「バス運転訓練車」では最後部座席手前の1席のみが2人掛けで、他は1人掛け前向き座席となっています。
運転席側は路線バスでは2人掛けと1人掛けの前向き座席を設けていることに対し、新型「バス運転訓練車」では全て1人掛けの前向き座席となっています。
また、段上げエリアで路線バスにはある手スリ(にぎり棒)が、新型「バス運転訓練車」にはないことも分かります。

車内事故予防訓練に欠かせない装備とは?

最後部座席は5人掛けとなっています。
同型の路線バスは乗車定員の関係から、座席中央にアームレストを設けて4人掛けとなっていますが、新型「バス運転訓練車」にはありません。
また、路線バスではリアウィンドウ上方にある後面行先表示器も、新型「バス運転訓練車」では設けていません。
さて、ここでもう一つ、「バス運転訓練車」ならではの装備、それもとても重要な装備があるのですが、この記事をご覧になっている皆さんは気が付かれたでしょうか?

その答えは「LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)表示灯」です。
最後部座席中央の座面下部のほか、段上げ部分のステップ、中扉直後の仕切りに備え付けています。
これらのLED表示灯を備え付けた部分は乗客がつまずいたり、中扉にはさまれたりするなど、車内事故が多く起きるポイントで、特に発進直前に乗務員が車内にあるミラーを注視して確認しなければならない箇所となります。

車内3カ所にあるLED表示灯はそれぞれオレンジ、赤、緑色の任意の色に変えることができ、研修では車内のミラーに映し出された表示灯の色を、指導乗務員に報告します。

東京都交通局に尋ねたところ、今回の新型「バス訓練運転車」で研修を受講した乗務員からは、「自分の運転操作のクセなどに気付くことができた」「数値やデータで確認することができて分かりやすかった」といった意見を多く得ており、「バス運転訓練車」を効率的に活用して研修を行うことで、1件でも多くの事故削減につなげたいとのことでした。

なお、東京都交通局では「バス運転訓練車」のほかに、新規採用乗務員の街路実習や採用時の実技試験などを目的に使用する「バス運転教習車」が4台あります。
その内訳(うちわけ)は、2005年式の3台が、いすゞエルガPJ-LV234L1の局番N317(足立230さ・317)および、日野ブルーリボンII PJ-KV234L1の局番N333(江東200さ・333)、局番N376(江東200は・・11)。2007年式の1台が、日野ブルーリボンII PKG-KV234L2の局番R635(江東200は・・19)となっています。
いずれも「バス運転訓練車」と同様、研修所に所属しており、クリーム色をベースに若草色のラインを配したカラーリングデザインで、路線バスを改造して生まれた車両です。

※ 協力 : 東京都交通局
※ 写真 : 伊藤岳志
※ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。
記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望や使用状況のお問い合わせなどを事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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