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小田急バス初導入の大型EV路線バス[前編]

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2023年の後半から2024年にかけ、全国各地の事業者にEV(Electric Vehicle)バス(電気バス)の導入が活発化している印象です。
特に首都圏の事業者では、試験的導入や実証運行のための一時的な導入を除き、各社で本格的な営業運行を見すえたEVバスを初めて導入するケースが増えているようです。
今回はその中でもやはり本格的な営業運行に使用するため、2023年11月28日登録で2台の大型EV路線バスを導入し、2024年3月16日から営業運行を開始している小田急バスを取り上げます。
小誌イメージガールのアテンドにより、記事は前編で外観、後編で車内の様子を紹介します。

小田急バスが初導入した大型EV路線バスは?

小田急バスは東京の武蔵野・多摩エリアを中心にして、神奈川県横浜市や川崎市などにも路線バス網を展開している事業者です。
同社では東京都武蔵野市、三鷹市全域と調布市を管轄する武蔵境(むさしさかい)営業所へ2台のEVバスを導入しました。
営業運行に供する目的では小田急バスとして初めての大型EV路線バスになります。
メーカーは中華人民共和国のEVメーカーBYD製の“K8”と呼ばれる大型EV路線バスモデルです。
BYDのK8は、同社製EVバスの中でもここのところ各事業者で導入があいつでいる全長10.5mの短尺(たんじゃく)タイプのノンステップ車です。
2台は同型で、社番(小田急バスでの固有番号)がEV-23C0001(多摩201い・・・1)および社番がEV-23C0002(多摩201い・・・2)となります。

EVバス導入に至ったキッカケは?

小田急バスの担当者にEVバス導入に至ったキッカケを尋ねたところ、「小田急グループカーボンニュートラル2050」における2030年度までのCO2(二酸化炭素)削減目標をふまえ、今回の2台を手始めに運用上や設備上の課題点を洗い出し、2025年度からのEVバス本格的導入へとつなげていきたいからとのことでした。
また、今回導入した2台は、同業他社でのEVバス運用実績をふまえたうえで、2022年12月に導入を決めたとのことです。

なぜ、BYDのK8を選んだのか?

これまでの「バスギア ターミナル」での記事や、動画投稿サイトYouTubeでの小誌公式チャンネル「バスグラフィックTV」の動画番組でも紹介してきたとおり、近年、中国で製造されたEVバスがわが国でもいろいろと登場してきています。
小田急バスが今回導入したBYDのほか、アルファバスやEVモーターズ・ジャパンなど、新進気鋭とも言えるメーカーのEVバスが各事業者で活躍を始めています。

そのような状況の中で、小田急バスはなぜBYDのK8を導入したのでしょうか?
担当に再び尋ねたところ、検討時に関西電力のエネルギーマネジメントシステムに対応していた車両がBYD製のみだったこと、およびBYDのK8は車内空間が広く、乗車定員が多かったという理由を挙げていました。
関西電力では法人向けソリューション(企業の問題や課題をさまざまな手立てで解決すること)として、各バス事業者へ向けて「EVバスパッケージサービス」を展開しており、導入時に必要な設備や費用の相談から導入後のサポートまでをワンストップでサポートしており、小田急バスでもそれを利用した形です。

実は新車ながらも「従来型」での導入

このたび小田急バスが2台導入したBYDのK8ですが、実は「従来型」であることも興味深いところです。
BYDのK8は2022年5月に「新型」が発表され、2023年末の納車に向けて注文を開始しました。
「新型」のK8はフルフラットノンステップバスとなり、外観もフロントデザインが変更されて「従来型」よりもマイルドな印象であるため、より日本市場を意識したスペックで、通称“K8 2.0”とも呼ばれています。
そのようなことから、小田急バスが導入したBYDのK8は「新型」であっても良かったはずですが、新車でありがながらも「従来型」を導入しました。
その理由を尋ねたところ、導入時のメーカーとの打ち合わせの際には「新型」の打診もあったものの、フルフラットノンステップバスの車内レイアウトがまだ確定しておらず、ラッシュ時の収容力に不安があったことから、他社で実績のあった「従来型」を導入したとのことでした。

小田急バスが導入した車両の諸元は、全長10.5m、全幅2.49m、全高3.36mでホイールベース(前後の軸距)は5.5mです。
EVバスなので、動力はディーゼルエンジンではなく、モーターになりますが、モーターは定格出力75kW、最高出力100kWの交流モーターを2基搭載しています。
フル充電に要する時間は約5.5時間、フル充電での走行距離は約230kmとなります。

青と白のカラーリングデザインのワケは?

小田急バスのBYD K8の外観で最も印象的なのはやはりカラーリングデザイン。
それまでの小田急バスの路線バスがまとってきた紅白のカラーリングデザインとは打って変わってブルーと白のさわやかなカラーリングデザインとなっています。
このカラーリングデザインはラッピングによるもので、実は完成時には従来の路線バスと同様の紅白のカラーリングデザインをまとっていて、その上にEVバスをPRするための特別なカラーリングデザインのラッピングを施した格好です。

「排気ガスの出ないクリーンなバスで青い空を……」というコンセプトの元に青を基調としたカラーリングデザインで、「電気の力でクリーンに走る。EV BUS」のロゴなども配しています。
EVバスのPRの意味合いを含めていることから、ラッピングの施工期間は特段定めていないとのことです。

外観の特徴は?

それでは、小田急バスが導入したBYD K8の外観上のポイントを見ていくことにしましょう!
屋根上には前方にバッテリーなどの電装品のカバー、後方に冷房装置のカバーがあります。
屋根の前後にはファンのカバーも見られます。
これらバッテリーへの充電は、武蔵境営業所に設けたダイヘン製の50kW急速充電器によって行います。
また、関西電力のエネルギーマネジメントシステムを導入して運用しています。

行先表示器はフルカラーLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)による電光式ですが、側面行先表示器は前扉直後の側窓ガラスの内側に組み込まれるような形で備え付けています。

中扉は扉が左右に分かれて包み込むように開閉するグライドスライドドアとなっています。
前扉もグライドスライドドアですが、これが標準仕様です。

そして、近年導入されている国産の大型ノンステップ路線バスと同様に、中扉の床面には車イス乗降用の反転式スロープを備えています。

側窓廻りが黒く処理されており、ガラスも濃いスモークとなっていることから側窓は固定窓のように見えますが、実際は下段固定・上段引き違いとなる逆T窓も組み込まれており、開閉する窓もあります。

BYD K8の「従来型」のフロントデザインはなかなか前衛的ともいえますが、リアデザインも同様で、丸型のリアコンビネーションランプを後面端に縦に4つ並べるという思い切ったもの。
国産大型路線バスとは一線を画するデザインとも言えます。
小田急バスでは、扉側のリアコンビネーションランプの上にバス停での案内などに使用する車外スピーカーを設けています。

非常扉が右側面最後部にあることも、近年の標準的な国産大型路線バスとの違いを感じさせる部分です。
近年の標準的な国産大型路線バスの非常扉は右側面最後部から小窓1つ分前に設けていることが多いことから、設計思想の違いが見て取れます。

普段見ることはまずありませんが、非常扉を開放した状態です。
扉はほぼ直角に開き、大きな開口部が確保されます。

後編記事では車内の様子を紹介します。

※ 協力 : 小田急バス株式会社
※ 写真 : 伊藤 岳志
※ 文 : 宇佐美 健太郎
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て、2024年3月に取材・撮影したものです。
※ 記事中の車両についてのお問い合わせなどを事業者など関係各所へ行わないようお願い申し上げます。

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