優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』 優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』 優良バス会社が集結!バス会社への就職を加速させる合同企業説明会『バスギアエキスポ』

国内初のBEVフルフラット路線バス「エルガEV」を体験! [後編]

このエントリーをはてなブックマークに追加
いま自動車業界は100年に一度の大変革期と言われ、EV(Electric Vehicle:電気自動車)や自動運転などの開発競争が激化しています。
我が国では2020年代に入り、中華人民共和国の各メーカーが製造・販売するEVバスが急速に数を増やしていますが、2024年5月28日、いすゞ自動車が満を持して、日本初のBEV(Battery Electric Vehicle)フルフラット路線バス「いすゞエルガEV」を発売しました。
また、2024年10月31日には日野自動車から、いすゞエルガEVと同じ構造、意匠(いしょう)を持つ統合商品「日野ブルーリボンZ(ズィー)EV」が発売され、2025年の今年は国産EVバスの動向に目が離せなくなることは必至です。
今回はいすゞ自動車の取材協力を経て、これからの時代の路線バス「いすゞエルガEV」を徹底的に紹介していますが、後編記事では同車種最大のポイントであるフルフラットに注目しながら車内を見ていきます。

■「エルガEV」開発時のもう一つの命題は?

「いすゞエルガEV」は、ディーゼルエンジンとモーターで走行する従来の大型ハイブリッドノンステップ路線バス「いすゞエルガ ハイブリッド」に代わる、これからの時代の公共交通を見据え、CN(カーボンニュートラル)化を目指した路線バスです。
前編で説明したとおり走行はモーターのみで行い、エンジンは搭載しておらず、CO2(二酸化炭素)を排出しない走行を実現していることが特徴ですが、CN化のほかにもう一つあった開発時の大きな命題に対する回答が車内にあります。
それは「車内事故ゼロ」で、車内の細かな段差をなくしてフルフラットフロアにし、安全性に対する社会や市場からの要求に応えていることです。
では早速、前扉から車内に入ってみることにしましょう!
乗降時に車体を傾け、出入口から車内に踏み入れる一歩をより低い状態にすることのできるニーリング機構により、33.5cmある地上と床面との間の高さを7cm低めて26.5cmとすることができるため、ラクに乗り込めます。

■車内前方から後ろへ進んで見てみると…

前扉から車内に入ると、中扉までの間はディーゼルエンジン搭載の従来の大型ノンステップバス同様、前向き座席が並んでいることが目に入ります。
一見すると特に何の変哲もないように思えるかもしれませんが、よく見てみると通路が中扉以降も段差のない状態で最後部座席まで続いていることに気が付きます。
そして中扉以降の座席の足元部分にも細かな段差がなく、非常にスッキリとした状態であることが分かります。
そう、これこそが「いすゞエルガEV」の大きなポイントの一つであるフルフラットフロアなのです。

運転席側となる右前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)直後は折りたたみ式の1人掛け前向き座席を4席設けており、全て折りたたむと2台分の車イススペースになります。
床固定式の車イス固定装置を設けており、操作が簡単なリトラクター(自動巻き取り)式の車イス取り付け固定ベルトを採用しています。

そして、注目は中扉以降の車内。
我が国で現在、広く普及している大型ノンステップ路線バスはほとんどが前中扉間ノンステップで、中扉以降が段上げとなり、ステップがありますが、「いすゞエルガEV」は中扉以降の段上げがなく、通路はもちろんのこと座席の下にも段差がありません。
これは左右後輪の内側に「インアクスルモーター」と呼ばれる独立したモーターを採用することによって実現できました。
後輪タイヤハウスの間をフラットフロアとすることができて、車内空間の有効活用につながっています。

左右後輪タイヤハウス廻りはともに成型部品のカバーで仕上げており、タイヤハウス前側の座席の構造体を兼ねて一体化していることが分かります。
タイヤハウス上は物置き台となっています。

ついに車内最後部まで来ました。
後輪直後の座席は後向き座席となっており、向かい合わせになる格好で最後部座席を設けています。
最後部座席の足元は、従来の大型路線バスではほぼ例外なく段差がありましたが「いすゞエルガEV」はご覧のように一切の段差がなく、ものすごくスッキリとした印象です。
座席レイアウト上、運転席側にある非常扉前には従来のバスのように座席がないため、アクセスしやすくなっています。
また、フルフラット化により非常扉を開けた際、地上から床面までの高さが50~54cmと、とても低くなっていることからも安心感があります。

最後部座席の様子です。
今回の試乗車では5人掛けとなっています。
リアウィンドウはなく壁のようになっていますが、この直後には電装品などを収めた機器スペースがあります。
フルフラット化による座席レイアウトの変化で、従来の大型路線バスのような手スリの取り廻しができないことから、最後部座席部分に立ち・座りの際のサポートとなるようなにぎり棒(ぼう)を設けていることがユニークです。

■最後部から前方へ戻って見てみると…

最後部座席とその直前の座席は向かい合わせの格好となっています。
左右ともに最後部座席直前の座席は2人掛け後向き座席ですが、足元に段差がなく余裕があるため、向き合って座っても思ったほど圧迫感はありません。

後向き座席は後輪タイヤハウス前側にあるものとは異なり、タイヤハウスのカバーと一体構造になったものではなく、脚のある一般的な構造の座席です。
後輪タイヤハウスのカバー上には左右ともににぎり棒を2本ずつ設けています。
また、タイヤハウスのカバーに沿って伝え歩きができるような手スリも備え付けています。

車内中ほどに立った位置からの前方への眺めです。
前輪タイヤハウス上には左右ともに座席は設けておらず、扉側は物置き台、運転席側はカバーを備え付けています。
いずれもサイドには伝え歩き用の手スリを取り付けています。
運転席直後の仕切りはスタイリッシュなデザインで、天井から床までをしっかりと仕切る構造となっており、飛沫(ひまつ)などによる感染症対策を強化しています。

また、仕切りの目の高さに来る一部分を透明ポリカーボネート製にして、客席から乗務員の様子が見通せるようになっており、万が一、乗務員に体調不良などの異変があった場合は備え付けているEDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)の非常ボタンが押せるようになっています。
EDSSは非常ボタンを押すと軽微制動が始まり、車内外に音と光で異常を知らせながら自動停止制動がかかって停車します。

運転席の様子です。
従来のディーゼルエンジン搭載大型路線バスのメーターパネルをベースにしたメーターパネルとなっており、EV固有の情報も分かりやすく表示させていることが特徴です。
乗務員の負荷軽減と安全の観点から、EV固有の操作を極力減らすように配慮した設計で、ディーゼル車からの乗り換えでの操作ミスによる事故防止を図っています。
車両の操作フィーリングはディーゼル車に近いものにチューニングしており、大型路線バスで実績のあるいすゞにしかできないポイントでもあるとのことです。

大きな丸いメーターは左がパワーメーター、右がスピードメーターです。
中央の緑色の文字はマルチインフォメーションディスプレイで、平均電費(でんぴ)や瞬間電費、バッテリーSOC(State Of Charge:充電状態)/航続可能距離、バッテリー最大容量(バッテリー劣化状態)などを表示します。
緑色の文字の右側にある“N”は走行モードのセレクトレンジインジゲーターで、“N”(Neutral:中立)や“D”(Drive:前進走行)、R(Reverse:後退)を表示します。

ステアリングホイール(ハンドル)左側にあるのがセレクトボタンと電動バーキングブレーキのスイッチです。
EVであることからトランスミッションはありませんが、従来のAT(Automatic Transmission:自動変速)車と同じ感覚で運転できます。
丸に囲まれた“P”の表示があるリブの付いたスイッチが電動パーキングブレーキのスイッチで、電動により軽いスイッチ操作で作動し、万が一、未操作でキーを“OFF”にした場合、自動で作動してパーキングブレーキのかけ忘れを防止します。
写真右上にはステアリングホイール下部に装備している乗務員用のEDSS非常ボタンが見えます。

■2025年は「エルガEV」注目の年に

いすゞ自動車によると、国産ならではのアフターサービス体制などが海外製との違いであり、導入検討から運用までのトータルソリューションで、車両の提供だけでなくユーザーの正常運行をサポートしていることが「いすゞエルガEV」の優(すぐ)れたポイントであるとのことです。
いよいよ2025年に入ってから、全国各地の事業者へ導入が開始され始めました。

2025年に入り早速、1月20日(月)から26日(日)までと、1月28日(火)から2月3日(月)までの間、石川県金沢市において「いすゞエルガEV」を使用し、EVバスの雪道での走破性や寒冷時の航続距離など、雪国における路線バスへのEV導入に向けた課題を検証する目的などで実証実験が行われました。
今年は「いすゞエルガEV」の動向に注目が集まりそうな年になることに間違いないでしょう。

今後、「バスギア ターミナル」のWEB記事や動画投稿サイトYouTube「バスグラフィックTV」の番組などで、各事業者に導入された「いすゞエルガEV」を紹介していく予定です、どうぞお楽しみに!

※ 取材協力 : いすゞ自動車株式会社
※ 写真(特記以外) : 伊藤岳志
※ 出演 : すみれ(バスグライメージモデル)
※ 文 : 宇佐美健太郎
※ 協力 : 青木 寛
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件にメーカーの特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両についてのお問い合わせをメーカーへ行わないようお願い申し上げます。

この記事をシェアしよう!

このエントリーをはてなブックマークに追加
  • FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
    フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。