京成トランジットバスの「ファン!バス」[前編]

同社では2024年9月24日登録で、遊びゴコロあふれた一風変わった外観の大型バス「ファン!バス(FUN!BUS)」を導入しました。
今回はこの世界で1台しかない京成トランジットバスの「ファン!バス」の魅力を前後編の記事に分けて伝えます。
今回の前編記事では個性的な外観を『バスグラフィック』イメージキャラクターの布施貴美子(ふせ・きみこ)さんとともに見ていきます!
■ 「ファン!バス」って一体どんなバス?

「ファン!バス」はもともと、バスボディメーカーのジェイ・バスが2018年に「FUN! 楽しい」「FUN! 面白い」「FUN! 遊びゴコロいっぱい!」というコンセプトを掲(かか)げて、新たなチャレンジである「ファン!バス……楽しい時間を作るプロジェクト」によっていすゞエルガ2DG-LV290N2大型ノンステップ路線バスをベースに1台だけ製作されました。
同車は栃木県にあるジェイ・バス宇都宮(うつのみや)工場が管理し、バス事業者が導入予定の新車を確認する検収で来訪した時の送迎を行ったり、バス雑誌主催のイベントに出展したりして、ジェイ・バスのコンセプト提案車として活躍していました。

「ファン!バス」最大の特徴は、車両後方の屋根部分を一般の大型路線バスより約40cmキックアップして大きく盛り上げたことです。
かさ上げされた屋根部分の両サイドには、1950~60年代に流行した豪華(ごうか)な観光バスのような側天窓(がわてんまど)を設けて、眺望(ちょうぼう)を良くし、明るい車内を創出しています。
外観を一目見ただけで「乗ってみたい!」と思わせる魅力があります。
■ なぜ「ファン!バス」が京成トランジットバスに?

そんな「ファン!バス」がなぜジェイ・バスから京成トランジットバスへやって来たのでしょうか。
話は2021年頃にさかのぼります。
当時、京成トランジットバスの担当者がジェイ・バス宇都宮工場へ車両検収に行った際、工場最寄りの駅から工場の間を「ファン!バス」で送迎されたことで、同車に強い興味を持ったことがそもそもの始まりだったそうです。
そして、2024年の初めにジェイ・バスが「ファン!バス」の譲渡を検討しているとの話があり、京成トランジットバスへの譲渡が決まりました。

京成トランジットバスでは創立20周年を迎えた2020年頃、コロナ禍(か)による利用者の減少が著(いちじる)しかったため、いかに乗客の移動価値を向上させるかが課題になっていました。
そのような中、コロナ禍まっただ中の2021年に創立20周年を記念して誕生した京成トランジットバス・キャラクターの「トラにゃ」のステッカーなどをあしらった「創立20周年記念車両」がデビューしたほか、2023年には路線バス活性化策として市川商科大学の学生が行徳まつりをモチーフにデザインした「お祭りバス」が登場しました。

また、同年には市川市観光協会主催の「市川市観光PRコンテスト」で入選した作品をラッピングした「いちかわきゅんバス」も登場させており、いずれも「移動空間を楽しくする」という京成トランジットバスが目指しているコンセプトであり、それが「ファン!バス」にも当てはまったとのことでした。
そして、京成トランジットバスではいつもの路線バスの沿線をいつもと違った車両からの視点で眺めてもらいたいという利用者への思いもあったことから、「ファン!バス」なら「乗ってみたい!」と思われるのではないかと考えたことが導入の理由となりました。
同社の整備工場長が「『ファン!バス』も責任を持って整備・維持する!」と力強く話したことも後押しとなり、唯一無二(ゆいいつむに)の存在である「ファン!バス」は京成トラジットバスへやって来ることになり、路線バスとして活躍することになったのです。
■ 「ファン!バス」外観をクローズアップ!

では、ここから「ファン!バス」の外観上の特徴をクローズアップしていきます。
車検証上のデータでは、全長10.43m、全幅2.48m、全高3.37mで、ホイールベース(前後の軸距)は5.3m、乗車定員は75人です。
カラーリングデザインは京成トランジットバスに譲渡された際にもともとのものから塗り替えられ、同社の一般路線バスと同じワインレッドをベースにしたものとなりましたが、メタリック塗装になっていることがポイントで、アクセントラインやロゴも金色となっています。

「ファン!バス」外観最大の特徴は中扉以降の屋根をキックアップするように約40cm盛り上げていることです。
盛り上がった屋根部分の側面にも固定窓を設け側天窓としています。
また、床面も上がったためもともとあった側窓の下1/3ほどがふさがれたようなスタイルになっています。

「ファン!バス」の盛り上がった屋根部分を後方から見たスタイルも個性的です。
リアウィンドウはベース車である一般的ないすゞエルガ大型ノンステップ路線バスよりも高い位置に設けており、窓の上辺から屋根までの間も長く個性的な表情を見せています。
右側面後方にある非常扉の下1/3もふさがれたようなスタイルになっていることが分かります。

京成トランジットバスの「ファン!バス」はホイールが金色になっていることも大きな特徴です。
ジェイ・バスからの譲渡時に、京成トランジットバスの整備工場長の強いこだわりによって塗り替えられ、まばゆいばかりの輝きを放っています。

側面行先表示器は前扉直後のピッチの広い側窓内に備え付けています。
京成トランジットバスへの譲渡時に前面や後面のものも含め、行先表示器はLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)による電光式のものに替えられています。
なお、将来的にはフルカラーLEDによる電光式行先表示器への取り替えも検討しているとのことです。

前扉直情にある“ISUZU”のロゴもよく見ると金色になっています。
この車種で前扉直上にあしらわれる“ISUZU”ロゴは一般的には銀色がほとんどであることから、金色は珍しいと言えます。
■ まだまだある「ファン!バス」ならではの外観の特徴

ヘッドライトケースは一般的なこの車種ではグレーであるものの「ファン!バス」はもともと特別に金色のヘッドライトケースが与えられていたことから、京成トランジットバスではその意思を継(つ)ぐ意味も込め、そのまま継続して金色のヘッドライトケースを採用していることも大きなポイントです。

フロントデザインは一般的ないすゞエルガ大型ノンステップ路線バスとは変わりないものの、金色のヘッドライトケースの採用により、全く違った表情に見えてきます。
フロントウィンドウ直下の真ん中にある“ISUZU”のロゴも金色となっています。
扉側に描かれた社番は京成トランジットバスの路線バス標準仕様の白文字標記で、“M283”の社番(京成トランジットバスでの固有番号)が与えられています。
登録ナンバーは希望登録ナンバーにより社番と同じ数字の「283」になっています。

その登録ナンバーは、いわゆる「光るナンバープレート」の字光式を採用しており、ナンバー枠(わく)自体に少し厚みがあります。

安全装備にもぬかりはありません。
左側面最後部の側窓脇には「モービルアイ・シールドプラス」のカメラを取り付けています。
左側面最後部のほか、右側面最後部や前面にも取り付けており、運転席にあるモニターに大型車特有の死角を映し出す機能のほか、前方衝突防止機能(車間距離警報)も付いた安全システムとなっています。

エンジンは車体最後部に搭載しています。
最高出力は240馬力(ps)、総排気量5,193ccのインタークーラーターボ付き直列4気筒ディーゼルエンジン4HK1-TCH型です。

後面の登録ナンバーも「光るナンバープレート」である字光式であるため、よく見ると夜間に登録ナンバーを照らし出すナンバー照射灯が省略されていることが分かります。

エンジンリッド(点検ぶた)の左側には、出入口の扉が開いている時に後続車に注意喚起を行う乗降中表示灯を備え付けていますが、非常に薄いタイプを採用しています。

リアウィンドウ右隅(みぎすみ)には、メーカー名と車名のロゴ“ISUZU ERGA”が入れられていますが、こちらも文字色が一般的によく見る銀色ではなく金色となっており、車体細部にわたって特別感がにじみ出ていることが分かります。
後編では「ファン!バス」の特別な車内に潜入(せんにゅう)します。
※ 取材協力 : 京成トランジットバス株式会社
※ 出演 : 布施貴美子
※ 写真 : 伊藤岳志
※ 文 : 宇佐美健太郎
※ 本記事内中に公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。記事中の車両についてのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。
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