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小田急バスの「安全運転訓練車」

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近年、バス事業者が自前で「安全運転訓練車」や「教習車」と称した車両を導入するケースが増えています。これらの車両は、これから大型自動車第二種免許を取得する人の教習をするための車両ではなく、すでに免許を取得して実際に営業運行を行っている乗務員のための車両であることが大きなポイントです。さらなる安全運転を行うことを意識するための訓練を目的としたものですが、同時に経済的な運転なども学べ、バス事業者にとって最も大切な日々の安全運行を支えています。今回は2社の車両を前編と後編に分けて紹介します。

■ 創立時のカラーリングデザインをイメージした外観塗装

東京都西部と神奈川県東部に路線バス網を展開する小田急バス。同社では2013年に専用の装備とカラーリングデザインを持つ「安全運転訓練車」を導入しました。この車両は2006年式のいすゞエルガPJ-LV234L1大型ノンステップ路線バスをベースにしており、もともとは路線バスとして使用されていたものを改造して生まれました。まず、目をひくのが外観のカラーリングデザイン。車体上半分を薄いピンク色、下半分を紺色としており、境目(さかいめ)となる側窓下には赤い極細のラインと白いラインを配しています。白いラインは紺色部分の下方にも車体を一周するように配されています。このカラーリングデザインは、小田急バス創立当時の1950年代の路線バスに採用されていた塗装をイメージしており、現在の白をベースに赤いラインを配した路線バスのカラーリングデザインとは大きく異なります。社番は431。営業に使用されないことから登録ナンバーは自家用登録の「川崎200は・324」で、生田研修所に所属しています。

■ 小さな装備であるものの安全運転訓練には効果絶大!

つぎに「安全運転訓練車」としての装置を見ていくことにしましょう。一見、外観はカラーリングデザイン以外、大きな特徴はないように見えますが、改造により各種の装置が取り付けられています。扉側の左バックミラーのステー(取り付け金具)と、運転席側の引き違い窓の上方をよく見るとコードのある小さな黒い箱状の装置が見られますが、これらは小型カメラで、前方左右の死角を車内に備え付けられたモニターに映し出します。

フロントバンパー上面の左端と、左右の後輪ホイールアーチ(タイヤ部分のボディの切り欠き)直前にはLEDによるランプが備え付けられています。これらの装置は訓練を受ける乗務員が運転席に座ってバックミラーで確認するもので、指導員が車内の切り替えスイッチによりLEDライトを点灯や消灯したり、色を緑や青に切り替えたりすることによって、バックミラーでの死角認知度を確かめることができます。いずれも一見して目立たない装置ですが、安全運転訓練には絶大な効果を発揮するものです。

■ 安全運連訓練のために徹底的に改造された車内

それでは、「安全運転訓練車」の車内に入ってみることにしましょう。車内は路線バス運行時代の座席がほとんど残されていますが、扉側は大きく改造が行われている箇所があります。特に中扉直前は第1席を除いて座席が撤去されており、天井まで至る大きな装置が鎮座していることに目がうばわれます。中扉直後も座席が1脚撤去され、備え付けのデスクとパソコンなどの機器の電源が取れるコンセントを装備しています。対照的に運転席には訓練を受ける乗務員の手元などを映し出す小型カメラなどを除いて目立った装置はなく、営業運行に使われる路線バスとほぼ同様の仕様となっています。

ここで注目したいのは、車内事故防止の訓練に使用される黄色と赤色のゼブラ模様が描かれた可動式の板です。この板は中扉直後の仕切り部分と、段上げエリア最前部にある運転席側座席の脚部分に備え付けられた安全確認装置です。板が張り出した状態の時に車内の各ミラーで確認できているかどうかが訓練を受ける乗務員に問われます。

■ 安全運転に加え経済的な運転も訓練

最も目立つ中扉直前にある大きな装置は経済的な運転を意識させるための燃料目視シリンダーと燃料切り替えバルブです。燃料となる軽油を車内に引き込んで燃料目視シリンダーに通すことで、運転前後の燃料の減り具合を確認することができます。細い燃料目視シリンダーが100cc単位、太い燃料目視シリンダーが2,000cc単位となっており、細い方ではエンジンのアイドリングや空ぶかしの際の燃料の減り具合を確認することができ、太い方では運転時の減り具合を確認することができます。いずれも、燃料の減り具合を可視化することによって、よりいっそうの安全運転に加え、経済的な運転を心がけるよう、訓練を受ける乗務員に促すことができます。

一口に「安全運転の訓練のための装置」と言っても、訓練の目的に応じた様々な装置が改造によって取り付けられていることが分かります。改造はバスの整備や車体の二次架装を行うメーカーである東急テクノシステムが担当しました。小田急バスのよりいっそうの安全運行へのあくなき取り組みの姿勢を表している1台と言えるかもしれません。次回は、江ノ電バスの「教習車」を紹介します。

※ 協力:小田急バス株式会社
※ 文・写真 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 掲載の車両写真は記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。
※ 本記事は2014年12月26日発刊の『バスグラフィック』Vol.22の掲載内容を再編集したものです。

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