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神姫(しんき)バスの国産新型ハイブリッド連節バスと燃料電池バス(後編)

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兵庫県姫路市を拠点とし、路線バス、高速バス、空港リムジンバス、観光バスを運行している神姫バスでは、2021年4月1日から神戸市内での国産新型ハイブリッド連節バス運行と、姫路市内での燃料電池バス運行を始めました。
後編では西日本のバス事業者としては初導入となる燃料電池バスを紹介します。

■ 西日本のバス事業者初の「トヨタSORA(ソラ)」

神姫バスでは2021年2月12日登録で、燃料電池バス「トヨタSORA」を姫路東出張所に1台導入しました。
トヨタSORAは、水素をエネルギー源として発電する電力を利用し、モーターで走行する燃料電池バスで、2018年から市販されています。
2021年7月1日までの間に、東京都交通局(都営バス)をはじめ、横浜市交通局(横浜市営バス)、京浜急行バス、東急バス、日立自動車交通、大新東、東武バスウエスト、西武バス、ジェイアールバス関東(東日本旅客鉄道)、京王バス、新常磐交通、宮城交通、愛知県豊田市に導入されていますが、神姫バスへ導入された車両は西日本のバス事業者として初めて導入されたトヨタSORAとなりました。

神姫バスでは導入数年前に社内に次世代モビリティ推進室が発足し、電気バスや燃料電池バスの情報収集を開始、すでに電気バスや燃料電池バスを導入している各地のバス事業者を訪問し、意見交換を行いました。
そのうえで2019年、姫路市から2020年以降に市の水素社会実現に向け戦略を推進していく意向が示され、燃料となる水素を充填(じゅうてん)する水素ステーション建設も具体化したことから、トヨタSORAを導入するはこびとなりました。
神姫バスへ導入されたトヨタSORAの登録ナンバーは「姫路230あ1184」で、社番は11184ですが、社番アタマの “ 1 ” は特殊車両を意味し、それ以降の “ 1184 ” は「いいばす」の語呂合わせで付番されているとのことです。
型式はZBC-MUM1NAEとなります。

■ 新時代の大型路線バスとして大いに期待

神姫バスのトヨタSORAは2021年4月1日から営業運行を開始し、平日はおもに姫路駅南口を発着する路線、土日祝日はおもに姫路駅北口と書写山(しょしゃざん)ロープウェイを結ぶ路線に充当されています。
これらの路線を運行することによって神姫バスとしては、燃料電池バスが従来のディーゼルエンジン搭載の大型路線バスの代替となるかどうか見極めたいという思惑があります。

現状の電気バスのように走行距離に限りがあるうえ、充電のための回送や長い充電時間などが発生する可能性が高い車両は専用の運行系統を設定しなければならないため、なるべく汎用的な運行ができる車両を求めています。
燃料電池バスはそのような要請に応えられるポテンシャルを十分に持っているのではないかと期待されています。
水素の充填は、姫路市飾磨(しかま)区内に岩谷瓦斯(いわたにガス)が「イワタニ水素ステーション兵庫姫路」が開設したことから、乗務系統の中に充填時間を組み込み毎日行っています。

■ 受け継がれた神姫バスカラー

それでは車体を見ていくことにしましょう。
トヨタSORAは車体の大部分がブラックアウトされるデザインが特徴で、導入事業者のカラーリングデザインが施せる部分に限りがあります。
そのような中、導入に際して社内でカラーリングデザインについてのアンケートを取ったところ、本社部門では従来のカラーリングデザインを刷新し、近未来感を感じさせるべきとの案が多くありました。

一方、営業所などの現業部門では乗客から神姫バスであることが分かる、従来のカラーリングデザインの要素を組み込むべきとの案が多くありました。
このようなアンケートの結果をふまえ、従来のカラーリングデザインの要素を組み込んだ案が採用され、事業者側でラッピングを行いましたが、水素をイメージする青いラインがアクセントに入れられています。

カラーリングデザイン以外の外観仕様は基本的には各事業者とも同じで、前扉はグライドスライドドア、中扉はアウタースライドドアとなり、中扉には反転式スロープを装備しています。

後面リッド(ふた)内にはインバーターやコンバーターなどの電装品を装備しており、その上の小さなリッドの中には外部電源供給コネクターがあります。

今後、法整備が必要となるとのことですが、災害時に避難所などへ車両を派遣し、外部電源供給コネクターから9kWの電力を供給する機能も有しています。

全長10.52m、全幅2.49m、全高3.3m、最高出力112kW/152psのモーター2基を搭載しており、乗車定員は78人となります。

■ 特筆すべき車内仕様は初採用のエキゾースター

車内に目を転じると、前中扉間ノンステップで、運転席側の前輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)直後が「自動格納機能付き横向き座席」であるほかは前向き座席となります。

車内の座席レイアウト、座席の形状、モケットのデザインは、これまでトヨタSORAが導入されてきた各地の事業者の車両と基本的には同じですが、神姫バスに導入されたトヨタSORAは各座席の側窓下にスマートフォンやモバイル機器の充電を行うことのできる100V給電可能なコンセントが設けられています。

前方と中扉付近の天井には液晶ワイドモニターが設けられており、運賃や次停車停留所名などが表示されます。

特筆すべき点は、リアウィンドウ両脇にある縦長の黒いスリット状の装備。
大型観光・高速バス日野セレガでも備えている強制換気システム・エキゾースターで、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の装備として、トヨタSORAでは神姫バスの車両が初めて採用しました。

運転席は未来感あふれる意匠で、ステアリングホイール(ハンドル)左側には車内外に8基設置された高精細カメラ画像を映し出す、視界支援カメラシステムの縦長モニターを備えています。

ステアリングホイール右のスイッチ盤内と運転席直後の仕切りにはEDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)の非常ボタンがあり、安全対策も徹底しています。

神姫バスでは初めての燃料電池バスとなることから営業運転開始の約2カ月前に納車し、乗務員に対し日常点検の違い、アクセルやブレーキの特性を認識する訓練や習熟を行ったそうですが、営業運行にあたっている乗務員からは車両性能についてはかなりの高評価を得ているとのことです。

※ 協力:神姫バス株式会社
※ 文・写真 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 掲載の車両写真は記事掲載を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。掲載車両の営業所・車庫内での撮影要望や運行状況などのお問い合わせを事業者へ行わないようお願い申し上げます。

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