四国初の燃料電池バス［後編］

トヨタSORAは、事業者による仕様の違いがあまり見られない車種でもあるため、徳島バスが導入した車両も都営バスや横浜市営バス（横浜市交通局）、宮城交通、神姫（しんき）バスなどが導入した車両と車内の仕様にほとんど差がないと言っても過言ではありません。
出入口となる扉が車体左側面の前方と中ほどにある前中扉車で、車内は前中扉間がノンステップエリアとなっていて、乗降しやすくなっています。
中扉以降はメカニズムの関係で段上げ構造となっています。

座先は一部を除いて前向きの配置となっており、シートバックとグリップが一体成型された樹脂部品でできています。
また、運転席側の右前輪直後には着席していない時ははね上げられており、座る時に座面を引っ張り出して着席する「自動格納機能付き横向き座席」が3席装備されています。
これらはトヨタSORAならではの特徴です。

座席モケットはさわやなか青色をベースに白のドット柄が配されたデザインで、一部こだわり仕様を採用した事業者を除き、各事業者とも共通です。
最後部座席は1席ずつ独立した構造で5人掛けとなっています。

通路をはさんで中扉の前の運転席側はフリースペースとなっており、車イスなどの乗車スペースになります。
「自動格納機能付き横向き座席」も座席の利用がない場合ははね上げられていることから、その部分も車イスなどの乗車スペースになるため、2台の車イスが乗車できます。
中扉以降の段上げ立ち上がり部分には車イス固定装置が収められたカバーを備えています。

車内中ほどの天井部分とフロントウィンドウ直上には液晶ワイドモニターがあり、次の停留所名や運賃を車内のどこからでも確認することができます。

新型コロナウイルス感染症拡大を受け、2021年以降に導入されたトヨタSORAで採用が相次いでいるのが、換気システム「エキゾースター」です。
リアウィンドウの両サイドの黒い縦長のスリット状のものがそれです。徳島バス導入車にも採用されています。

「エキゾースター」は、大型観光・高速バス日野セレガにもすでに採用されている装備で信頼性があるほか、燃料電池バスは水素を燃料としており、安全上の観点などから屋根などに穴を開け、通風器を設けることができないことから、重要な装備とも言えます。

運転席は近未来感あふれるデザインで、メーター類の視認性もすぐれています。
ステアリングホイール（ハンドル）左側には車内外の死角に取り付けられた視覚支援カメラの画像を映し出す大きな縦型モニターを備え付けています。

同様に、ステアリングホイール左側に、ドライブ（前進）、リバース（後退）、ニュートラル（中立）を切り替えるレバーを装備していますが、電動バスであることから変速を行うシフトレバーではありません。

安全運行をサポートする装備としては、EDSS（Emergency Driving Stop System：ドライバー異常時対応システム）の非常ボタンを計器盤右端と運転席直後の仕切りに装備しています。
運転手に急病などの異常が発生した際、運転手本人もしくは、乗客がこのボタンを押すことで減速して停止します。
非常ボタンを押すと、減速中にハザードランプとストップランプ、ホーンによって車両周辺に異常を知らせるほか、車内の赤色フラッシャーが点滅し、自動音声アナウンスによって乗客にも異常を知らせます。
運転席の非常ボタンは誤って押された際の解除機能が付いています。

※協力：徳島バス株式会社
※写真：伊藤岳志
※文：バスグラフィック編集部（宇佐美健太郎）
※本項で公開している写真は記事制作を条件に事業者の特別な許可を得て撮影したものです。
記事中の車両の営業所・車庫内での撮影要望を事業者へ行わないようお願い申し上げます。
※ 燃料電池バスの運行状況につきましては、徳島バスホームページをご確認下さい。
　https://www.tokubus.co.jp/