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“Japan Mobility Show 2023”で見た「未来のバス」[前編]

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2023年10月26日から11月5日までの11日間、東京ビッグサイトにて国内最大の自動車ショー“Japan Mobility Show 2023”(ジャパンモビリティショー)が開催されました。
それまでは「東京モーターショー」の名称で開催してきており、『バスグラフィック』誌面でも開催に合わせての2年に1回レポート記事の掲載が恒例となっていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大などによって、実質的には前回の第46回「東京モーターショー2019」から約4年ぶりの開催となりました。
“Japan Mobility Show 2023”は、自動車だけにとどまらず、ロボットや「空飛ぶクルマ」、燃料電池鉄道車両などの新しいモビリティの出展が行われ、参加企業は第46回「東京モーターショー2019」の192社を大幅に超える500社近くとなり、会期中の来場者はのべ1,112,000人でした。
もちろん、未来を見すえたバスに関する出展もいくつかありましたので、今回は前編と後編に分けレポートします。前編では今回のバスの出展の中でも一番の目玉と言える、いすゞ自動車のBEV(Battery Electric Vehicle:電気自動車)フルフラット路線バス“ERGA EV”(エルガEV)を紹介します。

世界初出展! いすゞのBEVフルフラット路線バス“ERGA EV”

“Japan Mobility Show 2023”のバスの出展で度肝(どぎも)を抜いたのが、World
Premiere(世界初出展)となる、いすゞ自動車のBEVフルフラット路線バス“ERGA EV”です。
近年、全国各地のバス事業者で電気バス(EVバス)の導入が相次いでいますが、そのほとんどが中華人民共和国製のもので、ユーザー側の視点では国産電気バス開発の立ち遅れを感じ、国産電気バスへの期待が高まっているところでした。
いすゞ自動車は2022年2月28日発信のリリースで、日野自動車との合弁会社であるバスメーカー「ジェイ・バス」にて、2024年度よりBEVフルフラット路線バスの製造計画があることを発表しました。
そのリリースから約1年半近くの間、BEVフルフラット路線バスについて公式には特に具体的な情報がなかったことから、“Japan Mobility Show 2023”での突然のお披露目(ひろめ)は、大きな注目を集めることとなりました。

“ERGA EV” 外観の特徴は?

早速、いすゞのBEVフルフラット路線バス“ERGA EV”の外観を『バスグラフィック』イメージモデルと一緒に見ていくことにしましょう。

車体は白一色で、乗降扉と側窓廻りを大きく黒ツブシしてメリハリを持たせており、両側面と後面にはショーのためのグラフィックデザインと、“INNOVATION FOR YOU”「加速させよう、『運ぶ』の未来。」のキャッチコピーを配しています。

屋根上は各種機器を装備していて少々物々しい様相を呈(てい)しており、前方にはバッテリー、中ほどには冷房装置、後方にはエアタンクなどがあります。
バッテリーはリチウムイオンバッテリーで容量は220kWh、充電方式はCHAdeMO(チャデモ)規格による急速充電ですが、フル充電による走行距離や充電に要する時間などはまだ公表されていませんでした。
最高出力は125kW×2、最大トルクは480N・m×2。
なお、冷房装置はデンソー製で、国産大型路線バスでは初採用となる外気導入型とのことでした。

前面・後面デザインも刷新!

フロントデザインやリアデザインは、現行の大型路線バス「いすゞエルガ」や大型ハイブリッド路線バス「いすゞエルガ ハイブリッド」とも、ハイブリッド連節バス「いすゞエルガデュオ」とも異なる、全く新しいものが与えられました。
ヘッドライトは小型トラック「いすゞエルフ」や中型トラック「いすゞフォワード」と共通モチーフの縦長の三角形をイメージさせるものとなました。

そして、フロントパネルもリアパネルもプレス形成されたような丸みを帯びたデザインとなり、たおやかな印象をかもし出しています。

なお、従来の大型路線バスではディーゼルエンジンを搭載していた最後部については、“ERGA EV”ではバッテリーなどをズラリと収めており、リアウィンドウを設けていません。
ショー出展の“ERGA EV”の公表された諸元は、全長11.545m、全幅2.485m、全高3.33mで、ホイールベース(前後の軸距)5.99m、乗車定員は80人となっています。

ショーに出展された“ERGA EV”は「いすゞエルガ」や「いすゞエルガ ハイブリッド」のロング車に近い全長ですが、報道公開日に担当へ尋ねたところ、それらと比較すると、おおよそでリアオーバーハング(後輪中心から車体後端までの距離)が約30cm長くなっている分、ホイールベースは短くなっているとのことでした。
また、左側面に後扉を設けて3扉車にすることも技術的には可能とのことでした。

最後部まで続く真っ平らな通路!

それでは、気になる車内に入ってみましょう!
最大のポイントは、やはり車内前方から最後部座席まで通路がフルフラット構造になっていることで、床面には「ERGA EV フルフラット FULLY FLAT FOOR」のキャッチコピーを書いた矢羽根模様のデカールを貼り、来場者へアピールしていました。

ショーに出展された車両の座席は全て前向き座席で構成しており、前中扉間は1人掛けで、扉側ははね上げ式となり、車イス2台の乗車も可能ですが、これらは現行の「いすゞエルガ」や「いすゞエルガ ハイブリッド」と大差ない印象です。

逆に中扉以降は現行車種と異なり、“ERGA EV”ならではの大きな特徴があります。
まず、中扉以降が段上げとなっておらず、通路は車内前方からフラットな状態で最後部座席まで続いています。
また、通路に急な傾斜がないうえ、各座席の足元にも段差がなく、非常にスッキリとした見た目で、座席への出入りもスムーズに行えます。

報道公開日に担当へ尋ねたところ、後輪は従来のアクスル(車軸)とは異なる構造とのことで、ドイツ連邦共和国の自動車部品メーカー“ZF”が製造する電動ドライブアクスル“AxTrax AVE”を採用し、左右後輪別々にモーターを備え付けたメカニズムになっています。
そのことで、フルフラットが実現しています。

車内後部には向い合せ座席も!

つぎに、座席レイアウトです。
フルフラット構造であることから、後輪タイヤハウス(タイヤの収納部分)が車内に大きく張り出してしまうことは、フルフラットノンステップバスの宿命と言えますが、タイヤハウスを利用し、前後にうまく2人掛けの座席を設けています。

そして、タイヤハウスの後ろ側に位置する座席は限られたスペースを有効活用するため後向き座席で、最後部座席と向い合わせの格好となります。
報道公開日に担当へ、この後向き座席を前向き座席に仕様変更できるかを尋ねたところ、できないとの回答でした。

タイヤハウス上は物置き台となっていますが、高齢者や障がい者が伝え歩きしやすい位置に手スリを備え付けていることも目をひきます。

意外にも運転席は見慣れたスタイル?

最後に車内前方と運転席廻りを見てみることにします。
左右前輪タイヤハウス上も後輪タイヤハウス同様に座席を設けておらず、物置き台になっています。
運転席直後の仕切りは、連節バス「いすゞエルガ デュオ」と同じデザインのもので、運転席背後を包み込むような形で設けています。
そこにはEDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)の非常ボタンも備え付けています。
EDSSは運転者の体調の急変などで異常が見られた場合、非常ボタンを押すと軽微制動が始まり、車内外に音と光で異常を知らせながら停止制動がかかって停車するシステムで、国産大型バスの現行モデルには標準装備しています。

運転席に座ってみましょう。
意外にもメータークラスター(計器盤)、メーターパネル、ステアリングホイール(ハンドル)のデザインは、「いすゞエルガ」と基本的には同じで、見慣れた感じがします。
運転席用のEDSSボタンはステアリングホイール根元の左側にあります。
セレクトボタン廻りはシンプルで、明快なデザインの“R”(後退)、“N”(中立)、“D”(前進)の3つのボタンとパーキングブレーキのスイッチがあるのみ。
パーキングブレーキは、国産大型バスの現行モデルでも標準的に採用しているホイールパーク式です。

ホイールパーク式パーキングブレーキとは、原理的に言えば圧縮空気の力によってブレーキ部品につながったスプリングを伸縮させることで、作動と解除を行うパーキングブレーキのことですが、メカニズム的には目新しくありません。
運転席廻りはショー出展車で行先表示器を操作するための系統設定器などもないことから、総じてさっぱりとした印象です。

特に事前予告もなく、World Premiereとして会場でお披露目され、熱い視線を集めたいすゞ自動車の“ERGA EV”。
今後も詳細を取材予定でいますので、新しい情報が入りましたらまたお伝えしていく予定です。
後編記事では、“Japan Mobility Show 2023”の他のバス関連の出展を引き続きレポートします。

※ 写真(特記以外)・ 文 : バスグラフィック編集部(宇佐美健太郎)
※ 本記事内中に公開している写真は報道公開日に撮影したもので、情報も当日の取材時点のものです。
記事中の車両についてのお問い合わせなどをメーカーなど関係各所へ行わないようお願い申し上げます。

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