新潟・長岡駅前バスウォッチング[ 後編 ]

2020年からのいわゆるコロナ禍やそれにともなっての大きな情勢の変化により、2010年代までのように編集部のある東京から遠い地方の取材が行えなくなってしまっていましたが、今夏、『バスグラフィック』制作で以前より助言を下さっているK名誉教授からお声掛けをいただいたことをキッカケに、日帰りで新潟駅前と長岡駅前のバスウォッチングを敢行してきました。
同じように見えても実は人柄のように1台1台が違うバスの魅力をお伝えするべく、後編では長岡駅前にて見られたバスたちを紹介します。
■ 越後(えちご)交通の拠点、長岡駅へ

前編ではJR新潟駅バスターミナルの様子と新潟交通の路線バスを紹介しましたが、後編のバスウォッチングでは長岡駅前に転戦し、越後交通の路線バスを紹介します。
越後交通は新潟県長岡市を拠点として中越(ちゅうえつ)地方を中心に路線網を展開している事業者で、新潟県内外への高速バスも運行しています。
同じ新潟県内と言えども、JRの新潟駅と長岡駅の間は約60kmと結構距離があり、上越新幹線では約20分、信越本線では約1時間15分かかります。
今回は新潟駅から1kmちょっと先の距離にある万代(ばんだい)シティバスセンターまで路線バスで移動した後、そこから越後交通の高速バス「ときライナー」を使って長岡駅へ。
万代シティバスセンターから約1時間半で長岡市のほぼ中心に位置する長岡駅の大手口(おおてぐち)に到着しました。
長岡駅大手口のバスターミナルには13もの乗り場があり、越後交通のバスが発着し、長岡市西部や小千谷(おぢや)、柏崎(かしわざき)、十日町(とおかまち)、三条(さんじょう)方面などへの路線が運行されています。

長岡駅は東西を貫(つらぬ)くようにして東西自由通路が設けられており、線路をはさんで向かい側にあたる東口へ出ることができます。
東口にもバスターミナルが設けられており、8つの乗り場があります。
ここにも越後交通の路線バスが発着しており、長岡市東部や見附(みつけ)、栃尾(とちお)方面などへの路線が運行されています。
■ いすゞキュービックと邂逅(かいこう)

いすゞキュービックKC-LV380N(いすゞバス製造製ボディ架装)
1999年式 長岡200か・715
長岡駅東口近くにあるバス待機場で羽を休める大型路線バスいすゞキュービックに偶然出会うことができました。
2013年に西武バスから移籍してきた車両です。
いすゞキュービックは1984年から2000年まで製造・販売されたいすゞ自動車の大型路線バスで、下辺が緩(ゆる)いカーブを描いたフロントウィンドウと、その両脇に三角形をイメージする「OKウィンドウ」と呼ばれる縦長の視認窓を備えたフロントデザインが大きな特徴です。
登場当時は斬新(ざんしん)とも言えるスタイルが注目を集め、採用する事業者も多く、1980年代後半から2000年代までの間、まさに一世(いっせい)を風靡(ふうび)した大型路線バスでしたが、最近では各地方で最後の活躍をする車両がわずかに見られるだけとなってしまいました。
この車両は全長10.69mの標準尺ツーステップ車で、前扉が折戸、中扉が引戸となっており、側窓は通称「サッシ窓」と呼ばれる上下開閉できるタイプを備えています。
ノンステップバスの側窓には基本的にサッシ窓は採用されていないことから、最近ではあまり見かけなくなってしまったスタイルの側窓ですが、座った状態でも窓を開けて取り入れた外気に当たることができるなどの利点があります。

長岡駅東口近くにあるバス待機場では、いすゞキュービック大型路線バスと顔を合わせる他の大型路線バスの姿を見ることができました。
いすゞキュービック左隣の「長岡200か1061」は、2002年式の日野ブルーリボンシティKL-HU2PLEA大型ワンステップ路線バスで、近鉄バスから移籍してきた車両です。

次に、いすゞキュービック大型路線バスの右隣で顔を合わせた「長岡200か1222」は、2006年式のいすゞエルガPJ-LV234L1大型ノンステップ路線バスです。
相鉄バスから移籍してきた車両で、中扉下部に明かり窓を備えていることが特徴です。
■ 大型電気路線バスも活躍中!

アルファバスECITY L10 2023年式 長岡200か1172
越後交通には大型電気路線バス2台も活躍しています。
この電気バスは、中華人民共和国の江蘇(こうそ)省無錫(むしゃく)市にあるメーカー江蘇常隆客車が製造しており、同社の電気バスは「アルファバス」というブランド名が付けられ、日本法人のアルファバス・ジャパンが2020年より本格的に輸入・販売を行っています。
その中でも、ECITY L10(イーシティ・エル・テン)は日本市場を考慮して開発された前中扉間ノンステップの大型電気路線バスで、車体の作りは日本製大型ノンステップ路線バスを意識していることがポイントです。
前扉と中扉はともに包み込むように開くグライドスライドドアを採用しており、側窓は日本の車両と同様、上段引き違い・下段固定の通称「逆T窓」となっています。

カラーリングデザインは、ECITY L10の販促用にメーカーが準備したキャラバン車のものをそのまま流用しているような格好で、車体側面には電気プラグと植物の葉をイメージしたデザインが施されており、越後交通を意味する“E.K.K.”のロゴが描かれています。

後面にリアウィンドウはなく、電光式の後面行先表示器を装備しています。
よく見ると、テールライトやウィンカーなどの灯火類は全て丸型です。
非常扉も右側面最後部ではなく、それよりも後輪寄りに設けられており、日本製大型ノンステップ路線バスの作りに近い印象です。

日野ブルーリボンⅡ大型ノンステップ路線バスとともに長岡駅大手口バスターミナルで発車待ちをする大型電気路線バスのアルファバスECITY L10。
越後交通ではアルファバスECITY L10を2023年3月19日より運用しており、長岡駅を起終点にして信濃川の川東(かわひがし)と川西(かわにし)エリアを循環する中央環状線「くるりん」に充当しています。
■ よく見れば違う個性的な面々

三菱ふそうエアロスターKL-MP37JK(三菱自動車バス製造製ボディ架装)
2002年式 長岡200か・123
大型路線バス三菱ふそうエアロスターの中でも初期の前中扉間ノンステップ車で、現在のものより20cmほど全高が低いスタイルが特徴です。
前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸で、全長10.45mのショート車です。
三菱ふそうエアロスター2PG-MP38FM(三菱ふそうバス製造製ボディ架装)
2018年式 長岡200か・958
三菱ふそうエアロスター大型路線バスは、2014年にフロントデザインを中心にマイナーチェンジを行い現行型となりました。
この車両は上記と同じ前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ車ですが、全高が20cmほど高くなっています。
三菱ふそうエアロスターKC-MP317K(三菱自動車バス製造製ボディ架装)
1997年式 長岡200か・617
こちらは三菱ふそうエアロスター大型路線バスの先代モデルで、前扉が折戸、中扉が引戸の前中扉間ワンステップ車です。
川崎市交通局から移籍してきた車両で、側面行先表示器窓の位置やスタイルに元事業者の特徴が見出せます。
また、屋根上にはカマボコ型断面のファンのカバーが3つ見えることも特徴です。

いすゞエルガKL-LV280L1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2005年式 長岡200か・327
上記の車両とは異なり、こちらはいすゞ自動車の大型路線バス「エルガ」で、タテ型のヘッドライトが大きな特徴です。
全長10.43mのショート車で、前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ。
車体中ほどの屋根上には特徴的な形状のデンソー製冷房装置のカバーが目立ちます。

日野ブルーリボンⅡ PJ-KV234L1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2005年式 長岡200か1132
上記の車両と外観はそっくりですが、こちらは日野自動車の大型路線バス「ブルーリボンⅡ」で、いすゞ自動車との統合商品となっていることから構造、デザインはほぼ同じです。
この車両は横浜市交通局から移籍してきた全長10.42mのショート車で、前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉間ノンステップです。

日野ブルーリボンⅡ PJ-KV234L1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2005年式 長岡200か1147
この車両は上記の車両と同型・同年式の大型路線バスで、前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ車ですが、東京都交通局から移籍してきました。
よく見ると、側面行先表示器窓の位置の違いや、屋根上前方にあるファンのカバーの形状が異なるなど、それぞれ元事業者の仕様の違いが現れています。

日野ブルーリボンⅡ PKG-KV234L2(ジェイ・バス製ボディ架装)
2007年式 長岡200か1208
日野ブルーリボンⅡ大型路線バスは2007年の改良で、タテ型ヘッドライトからシンプルな角型2灯へと変更され、基本的にはいすゞエルガと外観上の区別がつくようになりました。
こちらも東京都交通局から移籍してきた車両で、前扉がグライドスライドドア、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ車です。

いすゞエルガKL-LV280L1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2003年式 長岡200か・760
いすゞエルガ大型路線バスで、前扉が折戸、中扉が引戸の前中扉間ワンステップ車です。
ワンステップ車であることから、同型のノンステップ車よりも20㎝ほど全高が高くなっています。
全長10.28mの短尺車で、箱根登山バスから移籍してきた車両です。

いすゞエルガPJ-LV234L1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2005年式 長岡200か1218
上記の車両と同じ、いすゞエルガ大型路線バスの前中扉間ワンステップ車ですが、この車両は前扉が折戸であるものの中扉が4枚折戸となっていることが外観上の大きな違いです。
元・相鉄バスの車両で、上記の車両とは屋根上にあるファンのカバーの有無、冷房装置のカバー形状の違い、側窓越しに見える座席の柄の違いなどが分かります。

いすゞエルガミオPA-LR234J1(ジェイ・バス製ボディ架装)
2006年式 長岡200か・382
いすゞエルガ大型路線バスを一回り小さくしたのが、いすゞエルガミオ中型路線バスです。
全高は両者であまり変わりませんが、全幅は大型のエルガが2.49mであることに対し、中型のエルガミオは2.3mとなっています。
この車両は全長8.99mで、前扉が折戸、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ車です。

いすゞエルガミオKK-LR233J1(いすゞバス製造製ボディ架装)
2001年式 長岡200か・762
いすゞエルガミオ中型路線バスで、前扉が折戸、中扉が4枚折戸の前中扉間ワンステップ車ですが、中型路線バスの中4枚折戸は比較的珍しい仕様と言えます。
全長8.98mで、缶コーヒーの全面広告ラッピングが施されていますが、大阪の北港(ほっこう)観光バスから移籍してきた車両です。

いすゞエルガミオ2KG-LR290J4(ジェイ・バス製ボディ架装)
2022年式 長岡200か1164
中型路線バスいすゞエルガミオは2016年にフルモデルチェンジして現行型となりました。
従来モデルとはヘッドライトケースや前面行先表示器廻りの形状などに違いが見出せます。
これは越後交通中型路線バスに近年新車で導入された車両の中の1台で、前扉が折戸、中扉が引戸の前中扉間ノンステップ車です。
※ 写真・文 : 宇佐美 健太郎(バスグラフィック編集部)
※ 記事中の車両についてのお問い合わせを事業者など関係各所へ行わないようお願い申し上げます。
この記事をシェアしよう!
フォローする
FaceBookのフォローは2018年2月で廃止となりました。
フォローの代わりにぜひ「いいね!」をご活用下さい。