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伊東浩子の『私にも言わせてよ!』十. 新しい時代に望むこと

みなさまこんにちは。

いかがお過ごしでしょうか?

桜の便りが各地から届き春本番ですね。
みなさまは、もうお花見は楽しまれましたか?

花冷えのせいか、今年の桜は長持ちしている印象です。
この時季は、街のあちらこちらで足を止めて、花の美しさに見とれている方を見かけますね。

花をご覧になられている人の表情を見ると、とても穏やかでつくづく‘花の力’って素晴らしい!とあらためて思います。

ご承知のように、バスの運転席はとても視界が良いので、路線バスのハンドルを握っていた時、花の季節の乗務はとても楽しみでした。道路の両側に植えられた街路樹から伸びる枝は、花のトンネルのようで暗くなると街路灯等でライトアップされて本当に綺麗でした。

特にソメイヨシノは豪華絢爛、枝垂れ桜は可憐といった姿を長く見せてくれていて今でも私のお気に入りです。また、それがだんだんと若葉・青葉の光景に変わっていく街路樹の姿という季節の贈り物に、私は目も心も癒やされていました。

路線バス運転手の“ならでは”の醍醐味ですね。


さて、4月1日に新元号が【令和】と発表され、5月1日からはいよいよ令和元年となります。
4月は、平成最後の1ヶ月になりますね。

私は、30年前に昭和から平成に元号が変わった時を経験していますが、あの時は天皇陛下の崩御により元号が変わったので今回とは異なります。  
ただ、元号が変わっても時間は止まらないので、私にとっては大晦日~元旦と同じような感覚です(笑)

とはいえ、新時代の幕明け。私は新天皇陛下とほぼ同世代ですから何となく親しみがあり、平和な日々が続くといいなぁと心から祈るばかりです。

新しい時代を迎えるにあたって当時を振り返ると、私の時代では昭和47年7月に男女雇用機会均等法が施行されたことで、バスの運転手になることができましたし、労働基準法の改正にともない深夜勤務もできるようになって、定年まで勤めることができたことは、私にとって大きなことだったと思います。

私は、元バス車掌という先輩がいる営業所に配属されたので、先輩のおかげもあって施設面では恵まれていました。
ただ、勤務については労働基準法の女子保護規定のためにかなり制約があったため、労働者を守るための法律に就労意欲や機会を阻まれているという思いを持っていました。
それでも、できることにはいつでも挑戦!という姿勢で取り組んでいたので、いろいろと経験を積むことができました。

職場環境について、私はバス運転手の現場が男性職場であることを十分認識していましたし、特段女性であることを主張もせず意識もせず自然体でいましたから、不都合や不便を感じることはありませんでした。

当時はセクハラやパワハラといった言葉もなかったと思います。
男性・女性ともに不可侵な領域がありましたし、誰もが節度ある振る舞い(行動)を心掛けていて思いやりがありました。

今の言葉で表現するなら、人間力の高い人が多かったのだと思います。私は年齢的にも上の方でしたし専業主婦からの転職でしたから、近寄り難いところがあったかもしれませんね。

・・・女性で主婦で母でバス運転手??変な人って思われていたのでしょうね(笑)


そんな性格でしたから、男女雇用機会均等法もあって、職務についてはいつも同等であることを主張して、差別や区別にはとことん抵抗していました。

前例の無いことばかりでしたし、周囲の気遣いを素直に受け容れなかったようで、そんな私を説得するのに苦労したと後々になって聞いたことがあります(笑)

私はバスを運転することが好きで、仕事が好きで、もちろん家事も好きで、家族との時間も大事と、とても欲張りでした。
過ぎた日々はそんな懐かしい思い出でいっぱいです。

平成9年には男女雇用機会均等法の一部改正が行われ、今では女性の社会進出や職域の拡大が加速したことも記憶に新しい出来事です。

労働基準法の改正・規制緩和を経て職域だけではなく雇用形態も多様化。誰でも働きやすくなったことは事実ですし、様々な機会が与えられたと思います。

就労について平成時代は誰もが自由に職種を選び活躍を可能にできた時代だったと思います。

昨年6月29日に成立した「働き方改革法案」が4月1日から順次施行、適用されていくことになりましたね。

この法律がバスの職場、バス運転手という職種にどのような影響があって、どのように展開されるのか?私には全く見当がつきませんが、これから始まる令和時代を生きるみなさまの活躍を、応援・支援するものであってほしいと期待を込めて願っています。

高齢化と一億総活躍時代を迎えて路線バスや観光バス、大型・中型・小型バスなど、バスの利用や需要が増えていると聞きました。

しかし、それに反するかのように運転手は不足気味。退職後、路線バスを利用すことが多くなった私は、バスを利用する時はいつも心の中で『運転手さん、ご苦労様。ありがとう。』と昔の自分の姿を重ねながらつぶやいています。

新しい時代に、自動ブレーキ・自動運転等車両の技術開発が進み、将来的には無人の路線バスが誕生するかもしれませんが、車内で突発的なことが起きた時に誰が対応するのか?まだまだ課題はありますね。
もしからしたら、ロボットの開発も進んでいるので、自動運転のバスにロボットの車掌さん・・・なんてことがあるかもしれません。

ただ時代が変わっても私は、やっぱり人がハンドルを握るバスに乗りたいなあと思います。

執筆 伊東浩子 『バスギアスペシャルアドバイザー』

いとう ひろこ ― 神奈川県川崎市に生まれ、横浜で育つ。結婚を機に現在の東京都杉並区に移り住む。1992年7月、都交通局に入局。当時35歳で専業主婦から東京都交通局女性乗務員第一号となる。持ち前の元気と負けず嫌いな性格で、主婦業にもいっさい手を抜かず25年に渡って勤務後、2017年に定年を迎え退職。その後は、バス運転手の経験を活かし、講師として地域・社会に貢献。現在も学校運営協議会などを通じて地域の子供達に人との接し方を教えるなどの教育に携わる傍ら、当サイト『バスギアスペシャルアドバイザー』としても活躍の幅を広げている。
伊東浩子の『私にも言わせてよ!』 特集一覧はこちら 関連記事:都営バス初の女性運転手が編集部にやってきた!

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